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日本の財政―破綻回避への5つの提言
著者 佐藤主光 著
コロナ禍、ウクライナ危機を経てインフレ転換した世界経済。有事対応で財政出動を繰り返した日本は、債務残高対GDP比で先進国最悪である。デフレ下でこそ持ちこたえられた財政には新たな破綻シナリオもよぎる。日本の危機的状況を再確認するとともに、立て直しの方策として、税制と財政ルールの改革、成長戦略、セーフティネット構築、ワイズスペンディングなど5つを提言。未来につなぐ財政民主主義のあり方を問う。
日本の財政―破綻回避への5つの提言
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日本の財政 破綻回避への5つの提言
2024/09/20 19:48
財政ファイナンスで財政赤字を拡大させ、戦争に負け、破綻した日本がある
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は政府税制調査会委員・特別委員等の経歴を持つ経済学者が、日本財政の現状と対策を提起した新書である。まず、経済学者と一般国民は財政赤字を問題として共に捉えているが、自分事として見ているかについてギャップがあると説く。財政立て直しについて、財政出動を規模で見るのでなく、効果的かどうかの判断、企業・産業の新陳代謝及び雇用の流動化、税制改革、セーフティネットの構築、規律回復など財政ルールの設定の5点で提言する。失われた30年が未だに続き、働き方が多様化していると表現される裏側で、非正規雇用は4割近くに達し、フリーランス、ギグワーカーといった自営業のような労働者が増えている。こうした状況下で、再分配機能は社会の支え手を支えると明確に指摘する。財政のミクロな役割である。マクロでは経済安定化機能である。バブル崩壊後、税収が低迷するが、財政は拡大する一方。社会保障費は毎年増加する、財源も不明確なまま防衛費はアメリカの要求に沿って大幅増等である。赤字の拡大はいずれ破綻する。具体的にどこで破綻するか明示できないから、どうしても気楽になる。本書の目次を見ると、
はじめに
序 章 財政の機能と国民意識
第1章 日本の現状と課題
第2章 財政政策の可能性と幻想
第3章 財政赤字の政治経済学
第4章 経済再生に向けた新陳代謝
第5章 21世紀の税制
第6章 多様な時代のセーフティネット
第7章 どうやって財政再建するか
あとがき 主要参考文献 となっている。
以上のように展開される。財政赤字の原因について、一般国民は政治の無駄遣い、次いで公務員の人件費となっているが、経済学者は社会保障費、政治の無駄遣いとなっていることを指摘する。政治の無駄遣いは共通しているが、社会保障費は現金給付と人件費のカタマリであり、見方の違いであろうか。消費税への評価も違う。消費税導入後、法人税減税や所得税の累進緩和での減税の穴埋めになっている現状の指摘は必要だと思うが、それはなかった。増加する社会保障に必要な経費に消費税と言われてきたので、法人税や所得税の高額納税者の減税となれば、財政赤字は必然と思われる。未来への責任があり、財政民主主義を強調されていることは共感できる。財政は難しいと思われるが、新書でコンパクトに解説してあり、読む価値のある本である。