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34件
スカイ・クロラ
著者 森博嗣 (著)
人の顔は簡単に殴れるのに、自分の顔は殴れない。 自分のものになった瞬間に、手が出せなくなる。 自分のものは、何も壊せなくなる。 僕は、自分を壊せない。 人を壊すことはできても、 自分は、壊せない。(本文より)
クレィドゥ・ザ・スカイ - Cradle the Sky
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スカイ・イクリプス
2010/09/02 08:31
綺麗な物語だった。とにかく綺麗だ。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みす・れもん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「スカイ・クロラ」から始めて、「ナ・バ・テア」「ダウン・ツ・ヘヴン」「フラッタ・リンツ・ライフ」「クレィドゥ・ザ・スカイ」を2度ずつ読んできた。そして今、「スカイ・イクリプス」を初めて読了。
終わったな・・・。そんな気持ち。
本書の帯には「すべての謎を解く鍵がここに!」とある。
2度目の「クレィドゥ・ザ・スカイ」を読み終えたあと、この物語の謎には答えがない、それが答えだと思った。それでいいじゃないか、と。でも、やはり期待もあった。この本で謎が解けるのかもしれない。答えが見つかるのかもしれない。
これまではキルドレからの視点で描いてきた物語。この短編集は、そのそばで見ていた人たちの物語が綴られている。もちろん、キルドレの物語もあるけれど。他のシリーズ作が全て一人称「僕」で語られていたのに対して、全ての短編が三人称。少し新鮮。ササクラ、カイ、ティーチャ(恐らく)、クサナギ・ミズキ(恐らく)の物語は人間くさくていい。「僕」が語っていた物語は、やはり不安定だった。子供と大人が混ざり合って、どうしたらいいのかわからなくなって、自分を納得させるために思考が歪んでいったような(逆にピュアになっていったとも思える)、そんなイメージ。それに比べると、ササクラたちの物語は落ち着いている。自分たちに近いから、そう思うのかもしれない。
さて、このシリーズには本当にいろんな謎が残ったまま。この短編集を読んでも、ヒントは得られたけれど、謎が解けるわけじゃない。もう一度、シリーズを丹念に読み返してみようか。そんな気持ちがなくもない。でもね・・・。
最後の1話を読んだとき、「The End」の文字が見えた気がした。綺麗に幕が降りたなぁ。そんな感じがした。
いつかまた謎を解きたくなるんだろうなとは思うけれど、しばらくは綺麗に「The End」のままにしておきたいな。それくらい最後の物語は綺麗だったんだもの。
さようなら、クサナギ・スイト。いつかまたページをめくる日まで。
スカイ・クロラ
2009/07/02 08:26
スカイ・クロラ
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あがさ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の舞台は、戦場?
主人公は戦闘機のパイロット。
時には人を殺し、冷静に上司に報告したあと、その手で食事をし、ボウリングもする。
本書の裏にはこんな文句が。
「戦争がショーとして成立する世界に生み出された大人にならない子供」
そう、大人にならない子供のパイロットの話だ。
「スカイ・クロラシリーズ」が参加しているSNSで話題になっているということと、著者のS&Mシリーズがちょい好みに合うということで、読み始めたものの、どんな世界なのかサッパリわからないというのが正直な感想。
でも、なぜか画像は頭に浮かんでくる。
近未来的な世界。恐らく舞台は日本。
prologue
episode 1:cowling
episode 2:canopy
サッパリわからない世界。謎だらけの世界。
いつになったら謎は解ける?
スカイ・クロラを読み終えれば解ける?
謎が多すぎるけれど、謎は謎のままでもいいんじゃないかとも思う。
スカイ・クロラから読むのは、順番としてはOKなのかな?
時系列ではスカイ・クロラが最後らしいけれど...?
でも、読み続けてみよう。
何かを掴むまで。
episode 3:fillet
さて、ここまでで約半分超ってとこかな。何となく話は見えてきた。
少しずつ少しずつ。薄皮をはぐように、実が見えてくる。
なかなかこういうのも悪くない。
この本だけでは完結しないと思っているせいか、心は2冊目に向かっている。
さて、まずはこれを読み終えねば。
episode 4:spinner
ちょっとずつ、ちょっとずつ、ホントにちょっとずつ緊張感が高まってくる。
触れてはいけないところに触れつつあるのかな?
残すはepisode 5 と epilogue だけ。
この話はどこで着地するのだろう。
興味がどんどん沸いてくる。
登場人物の背景もほとんどわからないまま最終章を向かおうとしている。
ちゃんと着地するんだろうか。
episode 5:spoiler、epilogue
終わった...という気持ち。
全編を通して、何とも言えない張り詰めた空気が漂う。誰かがプチッと穴を開けたら爆発しそうな緊張感。
いつかは爆発してしまうのだろうか。
彼らはなんのために飛んでいるのだろう。
彼らは自分の心に沸いてくる疑問を、矛盾を、どのように消化していくのだろう。
本書はシリーズ5冊のうちの1冊。
そして、時系列に並べると最後の物語になるらしい。
では踏みだそう。本来の始まりの世界「ナ・バ・テア」へ。
スカイ・クロラ
2006/03/25 21:10
戦争を知らない私たちは
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
二回の大戦のあとも世界から戦争は消えない。 戦闘機パイロット・カンナミは前線の基地に新たに配属される。そこでチームを組まされたトキノ、上司である女性・クサナギ、整備士のササクラ…
僕らは空を飛び、敵を撃墜する。 そこに理由はない。
音もなく、望みもなく、光もなく、目的もなく、僕たちはただ生きて、戦っている。
一面に広がる、吸い込まれそうに深い青い空と雲。ハードカバー版はそんな美しい装丁ですが、文庫版は青一色で仕上げられています。
舞台はおそらく現代、もしくはほんのちょっと先の近未来。ただしこの世界では2回の大戦後も世界中が戦争で満たされており、日本も例外ではありません。ここでは戦争は国家がするものではなく、戦争行為を売りものにする会社が複数あり、その会社に属する社員が兵隊として前線で戦い、一般の人々はその戦争をテレビや新聞でしか知ることはありません。
そしてここに、キルドレという言葉が登場します。
遺伝子操作の研究途上、偶然生まれた、ある一定年齢以上は年をとらない子ども達。何年も何十年も若い姿のまま生き続けるため、次第に記憶があいまいに、現実感は希薄に、感情は平板になり、自分が何者かすら明確ではなくなっていきます。そしてそのキルドレとして生まれた人間の多くは、前線で戦う兵士になるか、宗教法人(普通に言う宗教とはまたちょっと違うのですが)に属するかどちらかです。
そして前線で戦う戦闘機パイロットとして配属されたキルドレ・カンナミを中心に物語りは進んで行くわけです。
彼らが何故そんなふうなのかを説明するかもしれない“理由”は後半に出てきますが、それもどこまで真実なのか曖昧としている。けれどそんな理由がsあるにせよないにせよ、ここにあるような世界や彼らのような子どもたちをつくりあげるのは、私たちのような人間なのではないか、本来私たちが背負ってしかるべきものを彼らに背負わせてしまっているのではないか、というようなことを考えました。
そういう意味では、これは私たちへの警告なのかもしれません。
“戦争を知らない大人たちに捧げよう” という冒頭文が、読んでいる間中胸に響いていました。
でもそんなことを考えることすら、この作品には余計なことのような気もします。