電子書籍
特捜検事
著者 三好徹 著
一般市民からの告訴や告発を受け付ける東京地検特捜部の直告係から、今日も立花検事に事件が回ってくる。小さな傷害や名誉毀損・詐欺・贈収賄・強制わいせつ事件として処理されるはずの案件が、なぜ殺人事件にまで変貌してしまうのか。立花検事の調書が今、紐解かれる! 直木賞作家が見つめた人生の黒い果実とは!? 昭和末期の名推理〈特捜検事〉シリーズから7編を再編集! 人生の真実に時代は関係ない。今野敏さんお勧め「さすが三好さん、熟練の筆の冴えだ。捜査小説ブームの今こそ、実直な立花検事の活躍を味わってほしい」。
特捜検事 新編集版
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2021/08/17 23:18
平凡な日常が破れるとき
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
TVの推理ドラマの再放送とか、ついついダラダラ見ちゃうんで、警察関係とか妙に詳しくなったりする。刑事とか警部とかが主人公のものが多いけど、弁護士とか検事がメインになるものがあって、犯人を走って追いかけたりではなく、ちょっと官僚っぽい役どころに人間味を加味してみたりというパターンかと思う。特捜検事というのがまた、当時ロッキード事件で有名になったが、そういう華々しい活躍以外の仕事を扱った、東京地検の立花検事を主人公にしたシリーズ作品。
「毒ある花」日常的な揉め事がこじれて告訴という段取りになると出番らしい。ちょっとぶつかっただけの交通事故を巡って告訴合戦になってしまうのだが、その当事者が美人だと告訴相手も関係者も、検事他の官吏までも、バイアスのかかった見方をしてしまうものらしい。
「偽りの夢」有名な画家を名乗る偽者が現れる。果たしてそれが犯罪かといっているうちに、その偽者が殺害される。動機は怨恨か、利害か、色恋か、まあわからないよね。
「ガラスの階段」インチキ占い師が被害者という、これも関係者が多すぎて焦点が絞りにくいが、順々に糸をたぐっていくしかない。
「黄金の匂い」総会屋という存在も、昭和の後半ごろから存在を注目されるようになったように思う。その辺りをいち早く作品で取り上げたということだろうか。
「単色の虹」若い女性が上司に騙されたり脅されたりして関係を持たされてしまうといったことが、かつてはやはり多かったのだろう。むろん可能なら解消したいに決まっている。ただその背景には、やはり貧富の差、その他様々な格差の問題がある。
「道なき道」名誉毀損で女優から告訴されている週刊誌記者。これもあちこちから恨みを買っていそう。この女優の方の人間関係も複雑だ。
「偽造の愛」主人公の検事の学生時代の囲碁部の友人が、バーの女に結婚詐欺で告訴される。検事は、彼の棋風からしてそんなことをする男ではないと考えるが、その後彼は自殺する。その棋風というのは当てになるのかというと、実直な人柄の人が堅実な棋風だったりすることもあるし、普段は穏やかそのものの人がすごい攻め碁だったりして驚くこともあるしで、まあ直感というものだから当たることもあるかもしれない。
検事を主人公とする作品では、有馬頼義「四万人の目撃者」など思いつく。松本清張の執念で事実を突き止める刑事とは違った切り口という観もある。戦後の闇の蠢きからは離れて、高度成長期の新しい風俗をさらりと取り扱って、本質は外さない。検事自身がその風景の一部であって、鬼刑事や天才探偵とは違う、生活実感を大事にしているからこその推理が働いている。巨悪を暴く的な大事件や迷宮事件ばかりでなく、市井の片隅の小さなカタストロフを解決していく仕事も、社会を支えている。
紙の本特捜検事 新編集版
2020/08/11 08:54
三好徹氏の傑作推理小説の一つで、小さな事件がなぜか殺人事件にまで発展してしまうという興味深い作品です!
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『竜馬暗殺異聞』や『天使の葬列』をはじめ、『生けるものは銀』、『天使の裁き』、『虚傑伝』などの話題作を次々に発表されてきたジャーナリストであり、作家の三好徹氏の作品です。同氏は、特に推理小説、スパイ小説、歴史小説などを得意とされる人物です。同書の内容は、市民からの告訴や告発を受け付ける東京地検特捜部の直告係から、今日も立花検事に事件が回ってくるというところから話が始まります。小さな傷害や名誉毀損・詐欺・贈収賄・強制わいせつ事件等として処理されるはずの案件が、なぜ殺人事件に変貌してしまうのでしょうか?立花検事の調書が今、紐解かれていきます。昭和の傑作作家・三好氏の小説世界をこの機会に味わってみてください!
2020/08/10 10:12
表題作ほか、「毒ある花」、「偽りの夢」、「黄金の匂い」など三好徹氏の珠玉の7作品が収録された一冊です!
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、『別れに愛を』、『ナポレオンの遺髪』、『虹の廃墟』、『モノをいう実力』、『黎明の時』、『風に消えた男』など、推理小説、スパイ小説、歴史小説の分野で数々の話題作を発表されている三好徹氏の作品集です。同書の内容は、一般市民からの告訴や告発を受け付ける東京地検特捜部の直告係から、立花検事に持ち込まれる事件は、傷害や名誉毀損・詐欺・贈収賄・強制わいせつなど多種多様です。その中には裏に人生の暗部が広がっているものも数多くあり、殺人事件にまで変貌していくものもあります。昭和高度成長時代を舞台に、立花の冷徹な推理が冴え渡る《特捜検事》シリーズの第2弾で、読者にハラハラドキドキという興奮を与えてくれる一冊です。「毒ある花」、「偽りの夢」、「ガラスの階段」、「黄金の匂い」、「単色の虹」、「道なき道」、「偽造の愛」といった三好氏の珠玉の作品が収録されています。