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ハイ・アラート
著者 福田和代
宵闇の新宿。雑踏に色とりどりの風船が浮かび、大音響と共に爆発した!「十二神将」を名乗る爆弾テロリストの、それが東京への宣戦布告だった。さらに浅草寺、六本木ヒルズ、新丸ビルを襲った後、突如、犯人は企業へと標的を変えた。「怒れる神々」と称するテロリストの怒りとは何なのか? 首都が騒然とする中、一人のペルー国家警察テロ対策本部警察官が新神戸駅に降り立った……。
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2016/05/24 16:25
テロ事件?としては小規模ながら、巧みな構成で楽しませてくれます。
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
テロ事件?としては小規模ながら、巧みな構成で楽しませてくれます。当初は、憂さ晴らしと世間の注目を受けたいといった程度の愉快犯だった筈が、ちょっとした手違いから小悪党と繋がり、その小悪党を大悪党が弱みを握ることで大きな事件へと発展してしまう。テロ実行犯達は、冷遇される外国人労働者達、社会に馴染めない日本人若者達、中心人物は先行きのない大学院生・柚木馨など、多種多様ながら社会に対して不平・不満を抱えている点で何となく寄り集まっているのだから、そんな大それた事件を意図しているわけではない。しかし、大悪党は彼らの知らないところで、その爆弾テロ事件を「株の信用取引」に利用して大きな儲けを企んでいる。途中までは上手くいくのだが、6回目辺りの爆弾で子供を殺してしまったことで実行犯達のなかに疑惑が生じてくる。この実行犯を追うのが、日本に出稼ぎに来て消息不明となった知人を探しにペルーから来たミゲル・ヤマグチ(国家警察テロ対策本部捜査官)とその友人・田代慎吾(昔は密出国稼業だったが足を洗ってスポーツジムを経営している)である。事件はあくまでも実際にありそうな地味なものであるが、展開が巧みで事件の全貌を徐々に解き明かしながら、外国人労働者問題や日本の若者たちが置かれた状況などを織り込んでいき全く飽きさせない。また、「株の信用取引」を利用することで、爆弾テロの目的を分からなくし、更には単なる愉快犯としての実行犯と、その裏に潜む大悪党との関連を見えなくするカラクリも流石である。本作は、著者のデビュー6作目だというが緻密な構成力に魅せられました。デビュー作の『ヴィズ・ゼロ』が未だに文庫本化されないのが残念。