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新解さんの謎
著者 赤瀬川原平 (著)
辞書の中から立ち現れた謎の男は、魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない――。「新解さん」とは、はたして何者か? 三省堂「新明解国語辞典」のページをめくると、あなたは濃厚な言葉の森に踏み込んでしまう。【恋愛】【合体】【火炎瓶】【浮世】【動物園】……数々の、あまりに親切な定義に抱腹絶倒しながらも、「新解魂」に魅せられていく、言葉のジャングル探検記。“紙”をめぐる高邁深遠かつ不要不急、非パソコン的世界からの考察「紙がみの消息」を併録。
新解さんの謎
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新解さんの謎
2012/06/12 08:20
だんだん普通になっていく
14人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
何十年も前から、この辞書がおもしろいことは有名だった。辞書にはめずらしく、作者の思想・信条・感情が盛り込まれているからだ。
しかし、こうしてあらためて並べられると、確かに度が過ぎておもしろい。昔の版ほどおもしろい。版を重ねるたびに、だんだんと普通の辞書に近づいてきてしまっている。そろそろ古い版にプレミアがつき始めているのではないだろうか。
昨年、第6版が出て、この本が辞書コーナーに並べてあったりする。新明解が小型国語辞典でシェア1位なのには、この本も貢献しているのだろう。個人的には、辞書・辞典、特に国語辞典は出版社の違うものを3種類くらい、持つべきだと思うが、そのなかに新明解ははずせない。
三省堂は、この辞書を『新解』とは呼ばず、『新明国』と呼んでいるようだ。三省堂の公式ページでは、シャープな語釈の例として「どくしょ(読書)」の例が出ている。どうしても、マンガと週刊誌は読書と言いたくないようです。私も賛成です。
「無人島に1冊本を持っていくとしたら」の問いに、よく辞書と答える人がいます。その点でも、『新明解国語辞典』特にお薦めだ。食べ物、特に魚類に食べられるか、美味しいかが書かれているからである。
なにか、辞書の書評になってしまったような感があるが、『新解さんの謎』を読んで、この辞書でさえ版を重ねるにつれ、普通になっていくのがよく分かった。世の中で、静かに言葉狩りが進行している。赤瀬川は、この本でそれを伝えたかったではないだろうか。
新解さんの謎
2009/01/26 16:40
読みながら笑い泣き… 新明解国語辞典は凄い辞書だ! 赤瀬川さんは凄いお人だ!
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
10年前に出された文庫である。
当時の大ブレイクをご存知の方にとっては、なにをいまさら…を思われる方もおありだろう。
10年前の私といえば、やんちゃざかりの二歳児を抱えて…。なので、私にとって新解さんブームは、まさに満を持して到来したのだ!と言うか、なんと言うか、まぁ早い話、ここのところ新解さんに夢中なのである。
いや~ほんとうに、面白いのなんの!
読みながら笑い、そしてあまりの面白さに涙が出ました。
それから自分の笑い声にまた笑える。
この本を教えてくれた友達の忠告どおり、公衆の面前で読まなくて良かったた。
昼間一人のリビングルームで、私の笑い声がこだましつづけました。
新解さんとは、三省堂から出ている「新明解国語辞典」のことで、この国語辞典にまつわるお話なのです。
「ぼくはまだ新解さんという人物に会ったことはないのだけれど」と
あとがきで赤瀬川さんは語り始めます。
「世の中には新解さんわかる人と、新解さんが分からない人に分かれるんじゃないかと、(略)
新解さんのわかる人というより、新解さんの見える人か。新解さんを感じる人。新解さんのその気配と応対のできる人。新解さんが見えるからといって世の中的には何もトクすることはないのだけれど…」
私は、遅ればせながら、赤瀬川さんに「ここにも一人、新解さんがわかる45歳がおります」と宣言したいくらい、この本に首っ丈で、そのことが本当に嬉しいのです。
それぐらい、面白い本、そして面白い国語辞書なのです。
「私は変な気がした。
読書のような気持ちになった。辞書なのに。」
赤瀬川さんの心の動き、そうです、これ!
辞書へのこれまでの思いをくつがえすほどの、それはそれは凄い例文の雨嵐なのです。
「ぼくもね、最初はヘンな辞書、ちょっとおかしな辞書、と思っていたけど、読んでいくうちに変わったね」
「凄い。攻めの辞書!」
「いや、凄いことだよこれは。あえて”明解としている意味がわかるね」
私自身、これまでの国語辞典への思いが覆されるというか、それはそれは凄い用例にぐいぐいと引き込まれました。
例えば、用例に固有名詞があれこれ登場なのです。
ぞっこん→「私は、雪子の美貌と気性に--引きつけられていたが」
たら→「田中さん--案外親切なのね」
むっと→「『何も、そんな意味で訊いているじゃない』久保木は、いささか--した」
雪子さん、田中さん、久保木さん、あなた方は一体誰なのでしょう?
むろん新解さんのお友達であることは疑いのない事実でしょうが…。
こんなのもありました。
ぼさっと→「駅から花屋に出る四つ角には交番があるのだが、管内の出来事には鈍感な警官が--立っているだけであった」
ぼさっとから浮かび上がるある風景、物語…。
ただただ感嘆、です。
赤瀬川さんはこの本の中で「新明解国語辞典」の映画化、はたまたテーマパーク計画をも打ち出していらっしゃる。
凄いなぁ~、どちらも見てみたいなぁ~。
そうだこの国語辞書も凄いけど、でも赤瀬川さんのほうがもっとスケールが大きいというか、凄いのだなぁ~と思うことしきり。
いやはや凄い人と出会ってしまいました。
ただ残念なのは、私が手元に持っている「新明解国語辞典は」第六版だということ。
凄い用例が続出するのは第四版なので、ぼちぼちと探してみようと思っているところです。むろん赤瀬川さんの本も追っていきます。こちらも楽しみで楽しみでクラクラきそうです。
新解さんの謎
2001/12/06 01:59
オシャレな本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:はな - この投稿者のレビュー一覧を見る
私がこの著者の作品を初めて読んだのが、この本でしたが、面白くて笑いながら、内容がとてもお洒落なことに感動しました。本で人を笑わせるのは、泣かせるよりずっと力のいることだと思いますが、この本は読者を笑わせてくれます。本当に、非常にお洒落な本です。ぜひ、一度読んでみるべき作品の一つでしょう。