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くじら組
著者 山本一力
巨大クジラとの死闘に挑む!
土佐国室戸岬で威勢を誇った鯨組。深い智恵と高度な技を駆使して鯨を仕留める漁師集団である。嘉永六年、沖をはしる黒船を発見した鯨組に、幕府から召し出しの話が舞い込む。その栄誉の前に、仲間の命を奪った巨大マッコウクジラとの死闘が待っていた――。海の男たちの心意気、命がけの連係プレーに酔う、迫力に満ちた長篇時代小説。
くじら組
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くじら組
2012/12/06 09:28
漁師たち男たちの、心意気
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
今回の山本作品は、土佐の鯨漁師たちが主役。ただ物語の筋が概ね2本あって、公儀(江戸幕府)と土佐藩、そして鯨漁師たちとマッコウクジラの「黒船」の戦いだ。土佐藩の鯨漁師「鯨組」。いつものように山見師がクジラを探すために海を眺めていると、とんでもない船を見つけてしまう事から物語は始まる。アメリカから遣わされたその船は、もうもうと黒い煙を吐き帆も無いのに尋常ではないスピードで海を渡って行った。驚いた漁師たちはすぐに藩へと上申し、事を重大と判じた藩は公儀へと伝えようとするが。元々公儀は参勤交代や色々な資金提供等やらで、有力な藩をいじめていた時代。また魑魅魍魎が跋扈し、何とか自分の社会的地位を持ち上げようと画策する。各々が抱えるスパイが情報戦を繰り広げたりと、息をも着かせぬ展開が繰り広げられる。
また同時に、土佐の鯨組では、1人の仲間がマッコウクジラにかみ殺されるという事件が勃発する。黒船の情報を藩に伝えに行く途中に起こった事から、藩からマッコウクジラ討伐に報奨金も出る事になる。そのマッコウクジラには「黒船」という名前が付けられ、漁師たちのみならず藩全体の敵として狙われる事になるのだが。ところがある日、方向を誤って浜に身を打ち上げてしまったマッコウクジラの「黒船」を、漁師たちは家族も含めてみなで救うのだ。簡単にかたき討ちが出来るその状態、ほっておいても死んでしまうような状態の「黒船」を、全力で助けようとする。それは、ナゼなのか。そして江戸湾に現れたアメリカの船「黒船」に対抗する為、公儀から1000キロの旅をして浦賀までやってくるように命が出た鯨組の面々。満を持して旅立ったもののあと一歩という所で大嵐に会い、絶対絶命の危機にさらされる。しかしその時、漁師たちの船の側に大きな影が現れた・・・。
毎度山本作品は外さない。大当たり当たりはあるけど、ハズレはない。今の世に辟易としてしまった心に、じんわりと浸み込むような物語。ぜひにオススメの一冊。