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青年は荒野をめざす
著者 五木寛之
未知の荒野を目指して歩く男を描いた五木寛之の代表作。
ジャズ・ミュージシャンをめざす二十歳のジュンは、新宿のジャズ・スポットで
「お前さんには、何か欠けたものがあるんだよ」「あんたは苦労がたりない」と
言われ、外国へ飛び出した。
横浜港からシベリアへ渡り、そこからモスクワ、ヘルシンキ、ストックホルム、
コペンハーゲン、パリ、マドリッド、リスボン・・・。ジャズとセックス、ドラッグ、
酒、そして暴力にいろどられた放浪の旅は続く。
世界とは? 人間とは? 青春とは? そして音楽とは?
走り続ける60年代の若者たちを描き、圧倒的な共感をよんだ名作。
解説は植草甚一
青年は荒野をめざす
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青年は荒野をめざす 新装版
2020/02/16 09:26
これが新世代エンターテインメント
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
ジャズミュージシャンを目指す青年が、真のジャズを見つけるために世界放浪の旅に出るというのだが、その初っぱながバイカル号に乗ってナホトカに向かうという、当時の若者にとって憧れそうで、手の届きそうな、音楽よりは人生修行という旅である。モスクワから北欧、パリ、南欧へと転々とするが、観光案内、名所紹介的な旅行記風なところはない。彼の行くところといえば、その土地のジャズバー、ダンスホール、とにかく若者がたむろしている場所であり、皿洗いや遊園地の鼓笛隊のアルバイトが日常生活であり、むしろ放浪記なのだが、うす汚くも、みじめでもなく、ポップでスマートだ。なんの権威ばることもないのがジャズであろうし、現代風ということだろう。
それはいいのだが、行く先々でどういうわけか現地の女性に好かれ、大物ミュージシャンに認められるという、漫画のような展開の道中であったりもする。読んでいるうちはその先の展開にひかれるけれど、あとでその意味が説明されたりはしない。それは主人公のジャズについての疑問「アーチストはどれだけエンターテイナーより偉いのだろうか」を、小説というものに置き換えてみれば、作者の言いたいことは理解できるわけだ。当時大衆小説と言う代わりにエンターテインメントという言葉を持ち込んだのには、様々なメディア間での一貫性があったのだろう。そしてその主張を徹底した作品がこれなのだろう。
主人公がリスボンからジャズの聖地アメリカへと向かうところでストーリーは終わる。そらアメリカでそれまでのような幸運が続くというのは無理があるだろうが、そうしてみるとヨーロッパでのジャズ体験は、アメリカにコンプレックスを持った人々が、ヨーロッパという繭の中で主人公を刺客として育成していたのだとも言えそうだ。
とにかく若者は夢を見なくてはいけない。ジャズ小説であり、エンターテインメントであり、そして路地裏から見た「世界」であるこの小説が、その格好の道案内として今でも通用するだろう。

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