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6件
シリウスの道(下)
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シリウスの道 上
2016/03/01 09:27
歯を食いしばる「生きざま」にしびれろ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:むささび同心 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ストーリーの山場は随所にあるが、決してメイン・ストリームとはいえない下巻第27章(P256~)に藤原ハード・ボイルドの精髄がある。
大切なひとを守り切れなかった幼き日の悔恨。そのひとの想いに今も応えることができない無力。同じく、そのひとを守るために罪を犯す友に手を差し伸べられなかった痛恨・・・押し寄せるさまざまな想いに羽交い絞めにされながら、それでもなお歩き続けるとき、不意にあふれ出す哀情をどうすることもできない瞬間が訪れたとしても、誰がそれを責められるのか? 歯を食いしばって歩き続ける男の無言の哀咽を、どうして嘲笑うことができるだろうか?
静穏な描写のなかに作者の熱い「脈動」をハッキリ聴いたとき、その圧倒的な寂寥に打ちのめされて、ただ立ち尽くす自分に気づくだろう。
作者の逝去が惜しまれてならないが、藤原ハード・ボイルド待望論はいささかも衰えてはいない。紙媒体での一日も早い復刊を切望してやまない。
2017/06/21 22:14
参りました!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まも - この投稿者のレビュー一覧を見る
流石です!それ以外の言葉が見つかりません。
シリウスの道 下
2007/02/11 19:54
藤原伊織の妙薬。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ひろし - この投稿者のレビュー一覧を見る
藤原伊織は、決して多作な作家ではない。今までに発表した作品は、両手の指で足りてしまうくらいではなかろうか。しかしてその代表作は、と言うと・・・言葉に詰まる。どれを取っても、傑作揃いなのだ。「テロリストのパラソル」が乱歩賞と直木賞を同時に受賞するという離れ業をやってのけたが、他の作品もテロリストのパラソルに勝るとも劣らない、魅力的な作品ばかりなのである。
藤原作品をカテゴライズするならば、当然ハードボイルドになるだろう。だがそこんじょそこらのハードボイルドとは、どこか違う。確かに物語りは重厚でコクも深く、主人公は渋い。が、どこかうっすらと、ユーモアがあったりするのだ。それは本当にエッセンス、隠し味程度に感じさせる。それが妙薬のように読み手に伝わり、いつの間にやらその作品の虜にされてしまうのではなかろうか。
本作品は、広告業界を舞台に物語が展開する。大手代理店の副部長辰村は、弱電大手の大東電機が来年度からスタートさせる、ネット証券業務の広告コンペに参加する事になる。総額18億という巨額のコンペにチーム一丸となって立ち向かっていくその様を、広告業界を緻密に調べ上げ書き上げている。のだが、もちろんそれだけではない。辰村には中学生の頃、友人と共に殺人を決意した事があった。それが25年経った今、強請事件となって蘇ってくる。そしてそれはあまりに意外な事に、今回の巨大コンペにも深く関わっていた・・・。いくつかの物語が複雑に絡み合い、一つの方向に動いていく。その時人々は一体何を考え、一体何が起きるのか・・・。
非常に良く広告業界を調べ上げ、あらゆる角度から切り込んで書き上げた感。ミステリからヒューマニズム的要素も踏まえ、極上のエンタテイメントに仕上がっていた。そういえば「テロリストのパラソル」に登場した、浅井が再登場しているのもファンに取っては鳥肌物。こんな所にも妙薬が効いているようなぁと、感心させられたのであった。