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49件
まほろ駅前シリーズ
著者 三浦しをん
「ここも一応、東京なんだがな」と言われてしまう“まほろ市”は、東京のはずれの大きな町だ。まほろ駅前で、ひとり便利屋を営む多田啓介のもとに、高校の同級生・行天春彦が転がりこんだ。高校時代、教室でただ1回しか口を開かなかった、ひょろ長い変人だ。ペットあずかりに子どもの塾の送迎、納屋の整理…ありふれた依頼なのに、行天が来てからは、やたらきな臭い状況に追い込まれるハメに。さて、本日のご依頼は? 多田・行天の魅力が全開の、第135回直木賞受賞作。
まほろ駅前狂騒曲
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まほろ駅前多田便利軒
2018/11/10 23:29
ジョーク大好き。どなたにも安心してお薦めできます。
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
三浦しをんさんを初めて見たのは新聞記事だ。
読書感想文の記事への寄稿。走れメロスについて書いてあった。
「普通,走れメロスについて書くと,友情の事ばかり書いてしまう。
でも私は,なぜメロスが裸なのか,しょうもないことが気になって
しょうがない。感想文は率直な気持ちを書いたっていいんだ」
大体そんな主旨だった。大賛成。ノーパンメロス。
子供心ながら,そこは指摘してはイケナイことと思っていた。
禁断の扉を軽々と開く作家さん,いけるかもという直感が働いた。
文才がなくて申し訳ない。原文ははるかに面白かった。
最初に選んだのが本書。直木賞作品だから,
魅力の本質は入っているはずと考えた。
著者紹介を見たら,デビューしてまだ十年。
昇り調子という表現がぴったりの方。この作品もまさに絶好調だった。
タイトルは物語の舞台を示している。
まほろ駅前にある主人公の多田が営む便利屋。
ふとしたことから,仕事の出先のバス停で,高校時代の同級生の
行天(ぎょうてん,人名です)を「拾う」。
この出会いからして,とてつもない予感に満ちている。
この行天という人,マンガ的なほどデフォルメされている。
ねじの五・六本は間違いなくぶっ飛んでいる。
多田がまごついている間に,どんどん突っ込んでいってしまう。
その上,憎めない優しさを持った愛すべきキャラクターだ。
便利屋稼業には様々な依頼が持ち込まれる。
ペットの預かりや,ひねた小学生のお相手,
草むしりの依頼などのありふれたお仕事なんだけど,
この二人にかかると俄然魅力を放ちだす。
多田は割と常識的な部分があり,凸凹コンビ風。
ボケと突っ込みを軸として描かれている。
涙もろい作品や,刺激的な作品,ハラハラどきどきの作品は
多いけれど,気持ちよく笑える作品にはなかなか出会えない。
もちろん小説だから笑いは武器の一つ。
本筋は二人の優しい男たちの物語だ。
二人の悲しい過去も,笑いと優しさにくるまれて流されていく。
最後の巨大な門松がとてもちぐはぐでいい感じだ。
良い作品との出会いは,とても幸せな気持ちになれる。
笑える小説は高度と聞くけれど,作るのが難しいのかな。
誰にでもお薦めできる。
まほろ駅前多田便利軒
2010/10/17 22:01
凸凹コンビ、大忙し!
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ジーナフウガ - この投稿者のレビュー一覧を見る
凸凹コンビの活躍する作品は面白い!何故なら彼らの発する摩擦熱から人間の匂いがするからだ。
この作品もそうだった。神奈川県に間違われる東京の外れまほろ市が舞台。主役の多田はタイトル通り、
まほろの駅前で便利屋を営んでいる。舞い込んでくる依頼は様々で、正月に、
自宅前を走っているバスが運行表通りに、間引き運転をせず走っているかを延々見張らされたりもする。
そんな仕事を終わらせたある日の事、多田はバス停で不思議な男と再会を果たす。
男の名前は行天、高校時代は、とにかく言葉を発さないのを周囲に不気味がられてた奴。
もちろん多田と行天は友達なんかじゃなかったけれど、多田は行天が不慮の事故で
小指を切断する傷を負うハメになった時に初めて口にした『痛い』と言う言葉が忘れられないでいた。
幸い指は元通りに縫合されたのだけど…。久しぶりに会った行天は実に口数が多く、
厚かましさまでをも身に付けた、冴えない中年男となっていた。かくして訳在り
中年・凸凹コンビ便利屋稼業がスタートする、のだけれど。依頼主から塾からの迎えを仰せつかった
小学生の少年は、危険なバイトに手を染めてるわ、そのせいで便利屋なのに私立探偵並みに
ヤバい橋を渡らざるを得なくなるわ、のっけからピンチを迎える目に遭うのだ。
おまけに行天は意外にも腕力で物事を片付ける武闘派タイプだったもので、事態は中々穏便に進みはしない。
だが、この行天という男には不思議な愛嬌があり、どこか憎めないのだ。
多田も行天の行状に散々振り回され愚痴をこぼしながらも、彼が依頼主に好かれたり、
案外と役に立つ部分もある事を知るにつけ、内心では行天を必要としている自分が居る事に気付く。
2人の微妙な距離感、互いにベタつく事なく、それでもパートナー関係を保持している所が好きだ。
便利屋の仕事は嫌でも各家庭の様子を覗き見る事になる。
人間模様に対する2人の接し方の違いに面白さを感じた。
そして物語が進むにつれて明らかになる多田と行天の過去の傷。
傷というものは個人の考え方や行動に深い影を落とす。不器用な2人だけに、傷の深さ、
影の長さを隠し持つ意味の大きさが印象的だった。物語を単なる痛快ストーリーから、
グレードアップさせるのに成功している点だと思う。それにしても作者である三浦しをんさんは、
心理描写だけでなく、人間の真実の思いにスポットライトを当てて、
物語世界にリアリティーを持たせるのが上手い。今回も存分に堪能した。
自分の育った家庭に悩んでいる人、秘密に苦しみ続けている人にこそ、
読んで欲しい充実した内容の一冊です!!
まほろ駅前多田便利軒
2015/08/22 21:28
かっこイイ!
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふうちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公2人とも、暗い過去を持ち心に闇を抱いている。だからこそ、同じように闇を抱えている人々に偏見を持たず、そっとみせる優しさがとてもかっこよかったです。
人生は、再生できるんだというメッセージが心に響きます。