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ささやかで大きな嘘
著者 リアーン・モリアーティ,和爾桃子
最初は子供同士のトラブルだった……。海辺の公立幼稚園、その夜のパーティに子供たちの歌声はなく、聞こえるのは罵り言葉と保護者の乱闘の音。そして保護者の一人が死亡。事故か? 殺人か? ……事の起こりは六カ月前、シングルマザーのジェーンの息子ジギーにいじめの疑いがかかった。本人はきっぱり否定するが、保護者たちは騒然。ジギーをいじめっ子と決めつける者、ジギーの言葉を信じる者に分かれ、険悪な雰囲気に。ジェーンは園で知り合った二人の友人とともに事態に立ち向かう。31カ国で翻訳、英米で150万部突破の傑作ミステリ登場。
ささやかで大きな嘘 上
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紙の本ささやかで大きな噓 下
2021/03/31 21:43
ジェーンの今後に期待
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻から引き続き、運命の保護者懇親会がじわじわと近づいてくる構成、なかなかのものだ。偶然か、必然か、すべてがこの一点に凝縮されて、収斂してゆく感じが読者を鷲掴みにして離さない。
どんな家庭環境、経済環境にあろうと、女性というだけで男性から受けるいわれなき侮蔑と暴力がいかに深い傷を与えるか、結構重いテーマを扱っているのに、ドタバタマデリーンやその他周囲の園ママたちのおしゃべりが、ストーリー運びを軽やかにしていて、読後感を爽やかなものにしている手法も見事だ。
おまけに保護者懇親会のテーマが、プレスリーとオードリーということで、本筋以外のサービスもたっぷり盛り込まれているのがうれしい。大雨の中、車から飛び出していくシーンも『ティファニーで朝食を』をなぞっていて、映画ファンならニヤリとするところ。
そして、なんといっても、過去の劣等感に鬱々としていたジェーンを救ってくれるのが、カフェのバリスタであるトムだ。傲慢な園ママ夫婦を排除したときには、「トム、ナイス!」と思わず言ってしまうくらいステキだったな。ほんと、こういう人は滅多にいないから、物語にもジェーンの心にも風穴をあけるにうってつけの人物だと思う。ジェーンとセレスト、どちらもつらい過去を抱えていたけれど、今後の人生に幸多かれと切に願ってやまない。
紙の本ささやかで大きな噓 上
2021/03/13 00:24
ここでも、やっぱり女性は生きにくい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
たしかニコール・キッドマン主演でドラマ化もされてたようだが、読んでみると、なるほどドラマ化にうってつけの要素が満載だ。
所々に挿入される事件当夜の関係者たちの放言も、実際の事件とは対照的な軽いノリで、噂話の続きのよう。そして事件当夜に何があったのか、誰がどうなったのかが、うまくぼかされていて読み手を引き付けて離さない。
ブックツリーにも、被害者探しの趣向だとあったが、パット・マガーの『被害者を捜せ』とどうしても比較したくなる。個人的には、マガーのほうが切れがあったと思うが、こちらは様々なライフスタイルの女性たちの、世間には隠された悩みや生きにくさが描かれているところが今風だ。
個人的に共感できたのはジェーン。ジギーの父親との件を話すときの、圧倒的なエネルギーには胸を揺さぶられた。誇りを踏みにじられた絶望と怒りが、何年も不完全燃焼のようにくすぶり、自分を正当に評価できなくなることがどれほどの傷か、こういう言葉を吐く男性にぜひ理解させないと、と強く思った。お金やキャリア、持ち家、容姿・・・。
他人を評価するときによく参照する一見客観的な基準のようだが、これを万能だと思っていると、メビウスの輪のようにいつかは自身もその基準の枷をはめられ、かんじがらめになってしまう。ジェーンの心の平安と再生を下巻では、ぜひ期待したい。
あと、対立関係にあるレナータ派閥の描写がちょっと類型的すぎる。主人公3人にフォーカスしてるから、そうなのかもしれないが、もう少し工夫がほしいところだ。