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黄昏の彼女たち
1922年、ロンドン近郊。戦争で男手を喪い、母とふたりで暮らすフランシスは、生計のため広すぎる屋敷に下宿人を置くことにする。広告に応じたのは若い夫婦、レナードとリリアンのバーバー夫妻だった。家の中に他人がいる生活に慣れないフランシスだが、ふとしたきっかけからリリアンと交流を深めていく。公園でのピクニック、『アンナ・カレーニナ』の読書、そして互いの過去を知りあうことで……。いつしかふたりの女性に芽生えた感情は、この物語をどこへ運んでいくのか? 心理の綾を丹念に描いて読む者を陶酔させる、〈このミス〉〈週刊文春〉第1位作家・ウォーターズの傑作!
黄昏の彼女たち 上
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紙の本黄昏の彼女たち 下
2016/02/28 22:15
不倫ダメ絶対小説
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くま - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻の途中でラブストーリーになってからはちょっとだけ熱が冷めたけど、下巻の不倫ダメ絶対の見本のような展開になってからは超面白くなりました。
ヒロインの恋人への思いがあっちこっち錯綜するのがリアルで好きでした。
破綻した夫婦関係であっても、相手の裏切りには平静でいられないというところも。
これがミステリかと言うと微妙な感じもしますが、謎は確かに大いに存在し、ラストにおいて解けます。
紙の本黄昏の彼女たち 下
2019/11/23 20:56
性的マイノリティーにとっての妊娠とは
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
下巻に入り、張り詰めた糸のようなフランシスとリリアンとの関係はついに破調に至る。
とにかく非常に心理的圧迫を与える描写で、こちら側の体調や精神の安定度もこの作品を読むには大いに必要とされそうだ。
下巻ではやはりリリアンの妊娠中絶のシーンが凄まじい。たしか『夜愁』でもあるカップルの中絶シーンがあったが、すぐさまあれを思い出しその迫力と生々しさには甲乙つけがたく正直総毛立った。『夜愁』では不倫カップル、今回は同性カップル間のことだが、ウォーターズはなぜここまで中絶にこだわるのかが知りたい。現代では、養子縁組やカップルどちらかの精子・卵子をつかった体外受精、代理母など選択肢は豊富だが、この時代正式な結婚カップル以外の妊娠・出産は当然のごとくハードルが高く、自分たち自身の社会生活すら危うくさせるものだったはずだ。
おそらく世間の目よりも何よりも、妊娠・出産こそがこうしたカップルたちにとって乗り越えなければならない大きな壁であるからこそ、ウォーターズはその突破口として中絶を選んだ二人を繰り返し描くのだろう。妊娠・出産の先にあるはずの当たり前な幸せを自らの手で引き裂きながら進むことが二人の愛のこの上ない証となると信じるしかない追い込まれた関係性が鬼気迫る。
しかし『夜愁』のカップルもその後、何か微妙な関係となりそれ以前の激しさは鳴りを潜めている。するとこの作品でもラストの微妙でどっちつかずな二人の心理状態が、その後の彼女たちの関係の行きつく先を暗示しているように思われる。それがこうした関係のカカップルたちに対する罰なのか、さらなる試練の始まりなのか興味がつきない。
紙の本黄昏の彼女たち 上
2019/11/22 22:50
大戦間小説
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
あとがきに書かれていたように、二つの世界大戦間という時代を濃厚に感じる作品だと思う。第一次大戦は主にヨーロッパが戦場となり、19世紀の階級社会が一気に崩れ去る原動力となった。労働者階級も働き盛りの男手を失い困窮したが、貴族・ブルジョワ階級では次代を引き継ぐはずの若手男性たちが下士官として最前線に赴き戦死する。そのことでこの階級は持続不能に陥り、その結果各国で王政打倒の革命が起こり社会主義運動が活発化して、労働者の存在が政治的に無視できない状況となる。彼らの時代は完全に終わったのだ。(このあたりは『風と共に去りぬ』と比較してみても面白い)
だが依然として解放されないのが、女性たちだった。労働者階級の女性たちはタイピストやファッション関係などある程度は時代の波に乗ることができたが、それが一番困難だったのは上流階級であるフランシスのような女性たちだったのだ。経済的には男性親族がいなくなり逼迫しているのに、仕事にはつけないしメイドのいなくなった家の中で家事をするにもそれを他人の目から隠そうとする。レイ夫人の矛盾した言動がまさにその状況を浮き彫りにしている。
さらにフランシスは性的マイノリティーという側面もかかえ、にっちもさっちもいかなくなっているところがこの物語のスタートラインなのである。
閉塞感漂う現在の日本からこの時代を透かしてみながら、どこか既視感を感じざるを得ないのは私だけだろうか?
紙の本黄昏の彼女たち 下
2016/06/17 21:46
下巻は
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
息づまり、逃げたくなるシーンの連続です。
検死審問、裁判の開始、そして……
主人公のある意味利己的でひどい、そして不安定な心の動きが大変真に迫っています。
紙の本黄昏の彼女たち 上
2016/06/15 20:54
原題は
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:igashy - この投稿者のレビュー一覧を見る
The paying guests
1922年、財産と男家族を失った上流階級の母娘が若い夫婦の下宿人を置きます。
この作者の作品なので当然のごとく……
彼女は、『半身』でも感じましたが、主人公の感情を美化しないところが好きです。
下巻が楽しみです。
紙の本黄昏の彼女たち 上
2016/02/28 22:08
お屋敷に囚われた女性の物語って興味深い
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くま - この投稿者のレビュー一覧を見る
父の死後、財産のほとんどが失われていたことが判明。
上流階級の奥さま気分が捨てられない母を抱えて、一人奮闘するヒロインが魅力的。
家に囚われた女性の物語って興味深い。
屋敷を維持するために下宿人を置いて、メイドもいないから自分で家事とか、ドレスをリメイクとか、心ときめく要素てんこ盛りですが、個人的にラブストーリーに興味が薄いので、評価点数は低め。
でも、恋愛でもないとなかなか家からは逃れられないものだから、ラブストーリー苦手とか言ってる場合じゃないのかも。