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鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集
著者 著者:鳥山 石燕
かまいたち、火車、姑獲鳥(うぶめ)、ぬらりひょん――。あふれる想像力と類まれなる画力で、さまざまな妖怪の姿を伝えた江戸の絵師・鳥山石燕。その妖怪画集全点を、コンパクトに収録した必見の一冊!
鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集
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鳥山石燕画図百鬼夜行全画集
2010/05/18 22:28
人間のような妖怪と、妖怪のような人間と、はたして、どっちが怖いのだろう……
10人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぶにゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
とりたてて言うほど妖怪が好きというわけではない。むしろ、一生出喰わさずに済ませたい。妖怪を好きなのはやがて成人式を迎える我が家の一人娘のほうで、ぜひとも本物に会ってみたいと、石燕の画集に眼を輝かせている。ひょっとすると娘はすでに妖怪の境地に達しているのかも知れない。最近、娘の容貌が、……いや、いかん。これ以上は語るまい。
鳥山石燕という名前は、京極夏彦のシリーズ本によって知った。娘も同様であり、以前、画集を見てみたいと言うので、県立図書館に連れて行った。図書館ならば、しかも県立なのだから、ない書物はないであろうとたかをくくっていた。国会図書館ではないのだから、あらゆる出版物を置いているはずがないのは当然なのだけれど、書架にそれらしきものは見あたらず、館内のシステムで何度蔵書検索してみても「鳥山石燕」や「画図百鬼夜行全画集」がヒットしなかったのには、愕然するというより驚きであった。この図書館、極めてまともなのか、それとも偏向しているのか、いまだによく理解できない。
でも、文庫本を手に入れた。文庫になっているとは思いもよらなかったので、娘と二人で大喜び。しかも、千円出して釣り銭が来た。すごいことである。全頁妖怪だらけというのも、凄まじいことであるが。
たくさんのたくさんの妖怪がいる。まさに百鬼夜行である。少年ジャンプに『ぬらりひょんの孫』という連載漫画があるのをご存じだろうか。東西の妖怪たちの国盗り物語というか、縄張り争いというか、陰陽師も絡んでワクワクドキドキ大変面白い漫画なのだが、その総大将ぬらりひょんを筆頭に、有象無象の妖怪たちが、ことごとく石燕の画から抜け出して暴れている。もちろん漫画のほうは現代的であり、擬人化が進んでいるけれども。
石燕という絵師はどういう人物だったのか、調べてみれば、たぶんいろいろと面白い逸話が出てきそうな気がするが、それは、江戸の研究者あたりに任せておこう。僕は想像するだけなのだが、石燕は極めて真面目に、そして心の底から楽しんでこれら妖怪たちの姿を描き続けたのだと思う。彼は妖怪に取り憑かれたのではない。彼のほうが妖怪たちに取り憑いて、「ほら、そこ動かないで!」「顔、もっとあっちに向けて!」「笑っちゃ駄目だよ!」などと怒鳴ったりなだめたりしながらおのれ自身の妖怪と向き合って生き抜いたのだろう。彼は跋文に書く。「詩は人心の物に感じて声を発するところ、画はまた無声の詩とかや。形ありて声なし。――」
死後200年経た後の世で、自分の慈しんだ妖怪たちが小説本によみがえり、漫画本で大活躍する様を、石燕は想像し得ただろうか。
たぶん、彼は知っていたに違いない。
妖怪でさえ恐れおののく世の中が来るということも。
鳥山石燕画図百鬼夜行全画集
2006/09/04 14:41
「逢魔が時」の空にみる「無声の詩」
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本の妖怪の基本形を作った画家の一人といわれる鳥山石燕(とりやませきえん)の妖怪画集全点収録!という小さいけれどお得な画集である。でるわでるわ、怖いもの、可愛いもの、可笑しい物、ただただ不思議なもの、と二百以上の妖怪がひしめきあって、あちこちめくって楽しめる一冊。
「猫また」や「河童」など、確かに我々の思い描く「基本形」のようなものから、「わいら」「うわん」など、「すみません、説明がないんでなんだかわかんないんですが・・」といいたいようなもの。4番目の画集「百器徒然袋」あたりになると、画家のお遊びの色が濃くなったのか、琴や鞍、瀬戸物が化けたものなど、可愛い漫画にしかみえないものも出てくる。
「今昔画図続百鬼」の一枚目「逢魔が時」は、塔のそびえる街並みの上空を怪しいものが過ぎていく図であるが、一寸心に残った一枚である。この「怪しいもの」の姿は何故か「入道雲に夕陽が陰影を与えればこのようにみえるかも」とおもわせる姿をしている。夕ぐれの空に何を感じるのか、「怪しいもの」を生み出す心はこんなところにあることを教えてくれる。
最初の収録画集「画図百鬼夜行」の跋文に「詩は人心の物に感じて声を発するところ、画はまた無声の詩とかや。」とあるが、流石に狩野派に習った絵師、そう思って見直すとごちゃごちゃと書き込まれただけのような画にも、描き手の詩心がみえるような気がする。
「画はまた無声の詩」。この味わい深い一言で、一段とこの画集に深みを感じた。
文庫版なので当然縮小されており、その分国書刊行会の発行した画集よりは迫力は減ってしまうが(モノクロだし)、あの「大きさ」でこの「数」をみるくどさは薄められてかえってよいかしれない。価格からして、お買い得と思う。
鳥山石燕画図百鬼夜行全画集
2009/03/14 00:30
いるわいるわ、妖怪どもがわらわらと。
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東の風 - この投稿者のレビュー一覧を見る
国書刊行会の単行本は値が張るので手が出なかったのですが・・・。いつの間にか、文庫本が出ていたのだあ。大判の単行本のようにはいきませんが、その妖怪画の魅力の少しなりと味わえるのではないかと購入、早速眺めてみた次第。
いやあ、いるわいるわ、妖怪どもがわらわらと。浮き世の俗事をひととき忘れさせてくれる、雅趣に富んだ妖怪図画の数々。妖怪絵師・鳥山石燕の融通無碍、無我夢中の遊び心。いいですねぇ。
一枚、一枚、頁をめくっていきながら、なつかしい心持ちになりました。
京極夏彦の妖怪ミステリー小説に出てきた「姑獲鳥(うぶめ)」や「鉄鼠(てつそ)」「絡新婦(じよろうぐも)」はもとより、畠中 恵の若旦那シリーズのキャラ、「鳴屋(やなり)」や「屏風のぞき」「犬神」「白沢(はくたく)」もいるんですね。
【画図百鬼夜行】から「陰」「陽」「風」、【今昔画図続百鬼】から「雨」「晦」「明」、【今昔百鬼拾遺】から「雲」「霧」「雨」、【百器徒然袋】から「上」「中」「下」の各編、合わせて百九十三の妖怪図画が掲載されている一冊。なかでも気に入ったのは、次の三つの妖怪画です。
◎「蜃気楼」・・・・・・文字通り、はまぐりが気を吹いて楼閣を成すの図。神仙の気漂う雰囲気が素敵。
◎「ぬっぺっぽう」・・・・・・ぬり壁のようなものに目鼻がついてお辞儀している。垂れ目に、独特の旨味、おかしみを感じます。
◎「小袖の手」・・・・・・にゅるにゅるっと出た両手の線に、ぞくぞくしましたあ。