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2件
幻獣辞典
著者 ホルヘ・ルイス・ボルヘス , 柳瀬尚紀
セイレーン、八岐大蛇、一角獣、古今東西の竜といった想像上の生き物や、カフカ、C・S・ルイス、スウェーデンボリーらの著作に登場する不思議な存在をめぐる博覧強記のエッセイ一二〇篇。
幻獣辞典
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幻獣辞典
2015/10/10 16:55
使える辞典
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:匿名 - この投稿者のレビュー一覧を見る
幻獣はジャンルを問わずメタファーとして用いられることも多いですから、こうした創造的な著者による本はたすかります。『紋切型辞典』とあわせて読みたい。
幻獣辞典
2017/04/17 23:24
小粒でもピリリと辛い!!「幻獣辞典」
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:赤運太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1974に発行され、2013年まで再版・改版を重ねた「幻獣辞典」の
文庫版、全329ページです。
図版資料以外のイラストが無くなった分、一部改訂されています。
本書は幻獣、人のイメージの中にのみ生きる動物について様々な神話や伝説、
文献や小説などから著者が抽出した簡潔な説明と考察で構成されています。
幻獣の図鑑の多くは色々な情報を長ったらしく引用し、そこからその存在の
具象性を探るものが多いですが、著者はそういったアプローチではなく
その存在の抽象的な発想自体を楽しみ、羅列している様に感じられました。
その為、他の本では紹介されない形や概念が判然としない抽象的・哲学的な
存在も幾つか紹介されており、中にはカフカやC・S・ルイスの作品から
そのまま本文を引用しているものがあります。
ただ、残念ながらラブクラフトの「クトゥルフ神話」やトールキンの
「指輪物語」からの引用はありません。
特に興味深かったのは、竜の頭にある宝石についての「カーバンクル」、
金を食べる鳥アリカントなどについての「チリの動物誌」、
頭のついた尾についての「バジリスク」、アルラウネやヤドゥアなど
面白い情報が多い「マンドレイク」、古代ローマのレムリアという
豆まきに似た祭りについて語られた「レムレース」、他にも昔の紙幣に
素戔嗚尊が描かれている事を「八岐大蛇」で初めて知り、驚きました。
また、本書では様々な人名・名称が登場しますが、訳者が独自に加えた
それらについての簡単な注釈、スペル付きの索引は、とても有用です。
柳瀬尚紀氏の訳者としての素晴らしい仕事ぶりと心遣いに敬服します。
ただ、長いものでも6p程とあっさり軽妙な内容で読みやすい反面、
1pに満たない項目もちらほら、「バロメッツ」など詳しい特徴の説明や
描写が大雑把で、不十分に感じる個所も少なくありません。
また、一部名称がちょっと癖のある表記に訳されている点はやや気になり、
以前の版にあった味のあるイラストがなくなったのも、少し淋しいです。
「ア・バオ・ア・クゥー」「ウロボロス」「バハムート」「バルトアンデルス」
「ベヒーモス」などアニメやゲーム、ライトノベルによく登場する名前が目白押し、
それらがお好きな方は、驚きながら楽しめると思います。
小粒になってもピリリと辛い「幻獣辞典」、ちょっと暇な時や夜長に読むには
最高の一冊です!!
※幻獣についてもっと詳しく知りたい方には、澁澤龍彦氏の「幻想博物誌」、
ジョン・アシュトンの「奇怪動物百科」がおススメです。