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8件
川の深さは
著者 福井晴敏 (著)
命をかけて守るべき人が君にはいるだろうか。「彼女を守る。それがおれの任務だ」傷だらけで、追手から逃げ延びてきた少年。彼の中に忘れていた熱いたぎりを見た元警官は、少年を匿(かくま)い、底なしの川に引き込まれてゆく。やがて浮かび上がる敵の正体。風化しかけた地下鉄テロ事件の真相が教える、この国の暗部とは。出版界の話題を独占した必涙の処女作。(講談社文庫)
川の深さは
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川の深さは
2003/09/13 19:05
深い…
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なにげなく手にして、軽い気持ちでよみはじめたのですが、ずるずると深い川に引き込まれて行きました。
現実にありそうであり得ない、あり得なさそうであり得る?… とにかく凄い迫力で、何が起こるか解らないドキドキ感が味わえます。自分の生活とはかけ離れた世界ですが、ストーリーの芯は深い愛で、主人公と彼の周囲の人たちの、頑なで不器用な愛と生き方に胸を熱くさせられ、涙すら浮びます。
抜け殻人生が、いつどんなきっかけで有意義人生に変化するのか解らない、主人公がそう教えてくれます。
抜け殻人生を送っている人は是非読んでみてください。
2017/05/14 14:38
意外な展開
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:あんひろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ガンダムUCで初めて福井晴敏にふれ、電子化を待ちきれず、ターンエーガンダムの小説版「月に繭、地には果実」を紙の書籍で読んで、なかなか登場人物を丁寧に描いていたり、ち密な設定に魅せられ他の作品にも挑戦してみようと思い、この作品が入門にどうもよさそうだったのでこれにしてみました。
最初は警備員の日常がしばらくつづき、「このまま最後までいくのかなあ、こんな小説も書くのかなあ」と思い込みはじめていました。
ところが総ページ数のある程度を超えたところから急展開、わたしがUCやターンエーで知った福井作品に一気に変貌。警備員一個人の日常から、国家間の問題、信じるもののための戦いに突入しました。UCやターンエーのように謎が徐々に解明されながらのストーリーも、私が知っていた福井ものでした。
この本に出てきたものが、他の小説にも設定が引き継がれていくとネット上で評判なので、この次の作品を今読んでいます。福井晴敏にはまっている今日このごろです。
ちなみにネットの情報では、この方、わたしが尊敬するガンダムの原作者、富野由悠季氏とプライベートでつながっているとか。
しばらくは福井病になりそうです。
川の深さは
2005/01/25 16:31
川の深さを抱いて眠れ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:KOMSA - この投稿者のレビュー一覧を見る
地味な装丁と題名に惑わされてはいけない。
この小説は福井晴敏のテーマが凝縮された、
血沸き肉踊るエンターティンメントなのだ。
主人公・桃山は刑事を退官して、
今は手を抜いたルーチンの警備業務をこなすだけの日々を送っている。
題名の「川の深さは」は桃山の棲むアパート裏に流れる荒川に呼応する。
台風で川幅が増しごうごうと流れる暗い水。
それが桃山の心象風景であることに疑いはない。
穏やかな川の流れに身を置くより、
桃山は“生きている実感”を欲しくて
濁流に再び自分を没入させることになる。
在日CIA、北朝鮮、ヤクザ、防衛庁の秘密機関。
止む事のないバトルロワイヤルは、
東京を市街戦に巻き込みながら主人公の居場所を探し続ける。
なんだ、いつもの福井テイストじゃないか。
まったくその通りなのだ。だがそうでなくてはいけない。
読者を裏切らない展開が福井晴敏の持ち味なのだから。
ここで描かれた東京の市街戦は、本年度刊行予定の
「Op.ローズダスト」で更なる進化を遂げるだろう。
日常の中で描かれる殲滅戦は、
登場人物のアイデンティティであり、
危機管理から疎外された国家の行く末でもあるのだ。