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16件
終わった人
著者 内館 牧子
大手銀行の出世コースから子会社に出向、転籍させられそのまま定年を迎えた田代壮介。仕事一筋だった彼は途方に暮れた。生き甲斐を求め、居場所を探して、惑い、あがき続ける男に再生の時は訪れるのか?シニア世代の今日的問題であり、現役世代にとっても将来避けられない普遍的テーマを描いた、大反響ベストセラー「定年」小説。
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終わった人
2018/07/23 22:28
リアルな定年退職後の出来事
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書はすでに映画化もされているが、脚本家の内館牧子が著した定年退職後の家庭を描いた小説である。小説にしてはいやにリアルなので驚かされた。また、活字が文庫にしてはかなり大きく、行数も少ない。そろそろ眼が疲れてきた定年退職者を対象にした小説なのかと思えるほどである。
舞台はどこにでもある普通の勤め人の家庭である。亭主が定年退職を迎えたが、自由に使える時間を持て余し、悶々とする日々を送る。図書館にも行くし、ジムにも通う。カルチャーセンターにも通ってみる。その目的はさんざん彷徨った挙句、論文をまとめて大学院の入試に挑むということである。
しかし、この主人公はまだ成仏していなかった。つまり、勤め人生活に未練を残し、まだ自分はそこそこの能力を持ち、社会のお役に立てるという自負がある。一方で東大法学部卒という学歴とメガバンクでの出世が釣り合わず、卒業後40年以上も経過しているのに、世間が学歴に価値を認めている点に戸惑う。
運よく丁度都合の良い勤め先(顧問)が見つかり、やれやれと思っていると、とんでもない事態が出来する。この辺りも如何にもありそうなシナリオであるが、むしろ小説的かもしれない。この時期には夫人はアルバイトで手伝っていた美容関係の仕事から、ついには独立して店を持つまでに至る。
普通はこれほどうまくはいかない。大概の人は数年たてば、働きたくとも働くことを断念せざるを得なくなる。つまり、成仏するのである。しかし、この主人公はとんでもない道に踏み込んでしまった。
最終局面では夫婦の危機を迎え、さてどうするかでクライマックスへと読者を導く。東大卒やメガバンクに勤務していなくとも、定年退職を迎えた元勤め人たちは会社から放り出され、自由になる。会社での評価や待遇などに不満を持つ人がほとんどであろう。
しかし、同窓会で愚痴をこぼすところが精々で、本書のように偶然依頼を受けるなどというのは、資格を持っている人以外はほぼあり得ない。
しかし、本書ではきわめ付きの幸運を主人公に与え、さらに本業の仕事で苦汁を飲ませている。主人公としてはこれで成仏したので、所期の目的は達成できた。実に幸運な人である。
定年退職後の生活をどうするかは飽くまで個々人が考えなければならないことである。決まったコースなどはないし、用意もされていない。定年まではまだ間がある人は、今から自分自身を見つめ直し、自分に適した余生を送れるように考えるべきである。実に面白く、真に迫る小説であった。
2018/04/20 09:01
定年の悲喜こもごもをコミカルに描いた佳作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:坂の下の落人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
脚本家の内舘牧子さんの新聞小説。設定が少し典型的すぎて、テレビ的かなという印象もありましたが、さすが売れっ子脚本家の筆致は軽く読みやすく、エンターテイメントとして昇華しています。
それでいて、印象に残る名台詞も散りばめられ、いろいろ考えさせられることも多い内容でした。男性作家が書く、企業小説とは違った味わいが魅力です。
相当取材されているんだろうなと思っていたら、巻末に謝辞として取材先をすべて披瀝されているのは、脚本家が本業だからですかね?
定年に近い中高年、とその家族は読んでおいて損はないですし、それ以上に単純に読んで楽しめる一冊でした。
終わった人
2020/01/10 06:06
私を救ってくれた本
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:matsu - この投稿者のレビュー一覧を見る
何気なく手に取りました。
会社で色々あってきついとき、会社員て定年があるんだなとぼんやり
考えさせられました。
一気に読めるパワーのある本でした。

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