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大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済
著者 高槻 泰郎
海外の研究者が「世界初の先物取引市場」と評価する江戸時代、大坂堂島の米市場。米を証券化した「米切手」が、現在の証券市場と同じように、「米切手」の先物取引という、まったくヴァーチャルな売り買いとして、まさに生き馬の目を抜くかのごとき大坂商人たちの手で行われていた。このしばしば暴走を繰り返すマーケットに江戸幕府はいかに対処したのか? 大坂堂島を舞台にした江戸時代の「資本主義」の実体を始めて本格的に活写
大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済
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大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済
2018/09/04 14:36
近代随一の証券市場
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:masaya - この投稿者のレビュー一覧を見る
本著は、江戸時代の証券市場がどのように成り立ってきたのかがわかる。
大坂から民間の力で洗練された金融市場が形成された。そして、当時の政府である江戸幕府は、これをうまく利用しようと大坂商人との駆け引きを始める。
大坂の堂島米市場で行われていた帳合米取引というのは、現代の指数先物取引とほとんど同じものである。米を原資産とする証券デリバティブ取引である。
政府による規制の圧力と民間の現場からくる自由な発想。これが、日本全国の大名を巻き込んだ近代証券市場を作り上げる元になったと思う。
自由闊達な証券市場を自力で作り上げた大坂は、明治以降の文明開化とともに持ち前の力を衰退させてしまった気がする。
2024/12/27 21:00
大坂の先物取引
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツーリスト - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代に成立していた先物取引の実態について、門外漢にもわかりやすい解説を挟みながら記した一冊。
経済史や金融に関心のある向きにお勧めできる。
大坂堂島米市場 江戸幕府vs市場経済
2022/12/17 16:06
大坂先物市場
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Koukun - この投稿者のレビュー一覧を見る
江戸時代の大坂にこれほど先進的な取引市場めいたものがあったということに強く感銘を受けた。特に中盤第五章の記述によればほぼ「先物市場」と言って差し支えないほどの現代的な取引を200年以上前に行っていたことになるので、大いに驚いた。寄り付き 大引けや手仕舞いなどの現代の株式市場で使われている用語も、起源はこの堂島にあるのだな と知った。しかし、近代的現代的な取引市場と比べて、この堂島米市場の欠陥は文字通り「米」にある。徳川将軍から庶民まで「国の富」=「米」と信じ切っていた時代なのでやむを得ないこととは思うが。
この様な時代において、大坂町奉行の経済問題処理能力には驚嘆した。テレビの時代劇でお役人は商売の何たるかを知らずに無理難題ばかり言うもの、という先入観があったが、大坂商人に負けない能力を持って「金融政策」と言ってもよいほどの施策をしていたこともあるようだ。それに引き換え江戸の方は、国の富は米 と思いこんでいることによる、米将軍徳川吉宗に代表される経済感覚の遅れが目につく。
本書の後書きの言葉「市場経済の原理なるものは、目的に適合する限りにおいて容認・保護されるべきものであり、それ自体として尊重されるべきものではない、というのが江戸幕府の立場であった。」に大変感銘を受けた。現在の日本国政府はアメリカ政府は江戸幕府よりどれほど進歩しているのであろうか?