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資本主義の宿命 経済学は格差とどう向き合ってきたか
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2024/07/10 23:36
格差についての歴史や論点が整理されています
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:とらとら - この投稿者のレビュー一覧を見る
格差についての歴史や論点が整理されていて、わかりやすかった。最終章では、日本は福祉国家を目指すべきだという意見も表明されていて、スタンスがはっきりしているのもよかった。最終章では、政治家への疑問・懸念なんかも率直に書かれていました。
資本主義の宿命 経済学は格差とどう向き合ってきたか
2024/10/20 11:12
資本主義に代わるものを実践として示せない、だけど福祉国家の道がある
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は経済学、特に労働経済学で有名な研究者であり、多くの著書があるので読まれた方は多いと思う。経済学では、経済効率性と平等性・格差が小さいことは対立するといわれている。トレードオフの関係になる。現在の日本で格差は拡大し、その差は大きいという点は合意に至っているが、その是非は対立しているだろう。小泉政権で格差拡大を推奨し、イデオロギーの転換があったことになる。貧困の研究は進んできたし、貧富の格差についても研究されてきたが、富裕層の実態を示す調査や統計が少なく、国税庁が基礎資料を統計処理に提供していないことを含めて、研究が進んでいないと指摘される。これらの点は資本主義の宿命といえるので、本書の表題になったようだ。本書の目次を見ると、
まえがき
第1章 格差の現実
第2章 資本主義社会へ
第3章 資本主義の矛盾に向き合う経済学
第4章 福祉国家と格差社会
第5章 ピケティの登場
第6章 ピケティ以降の格差論
第7章 経済成長か、公平性か
第8章 日本は格差を是正できるか
参考文献 となっている。
以上のように展開される。まず、格差の現実をおさらいする。経済学の歴史的な推移を解説する。第3章でケインズ経済学とマルクス経済学までに至る。福祉国家の格差社会を世界的に見たのが第4章となる。ドイツ、イギリス、北欧、非福祉国家のアメリカとなる。世界的な影響を与えたトマ・ピケティの「21世紀の資本」を中心に、政治(イデオロギー)が経済に与える影響を説く。日本が格差社会となり、格差があることは当然、例えば自己責任という言葉が独り歩きする時代が作り上げられた。格差社会は貧困者の増加(本人は貧困者と思っていない人が多いが)、富裕層の無駄遣い、あるいは退蔵、犯罪率が高くなりやすい、格差が固定化しやすく、社会分断が進む等の問題が多いというのがようやく理解されつつある。アベノミクスでトリクルダウンによって多くの人が豊かになるといわれたが、そんなことは起こらず、大企業は下請けに対し、実態無視のコストダウンを求め、大企業内部の技術力は低下という事態が一般化している。第8章で著者の提案が出てくる。政府がなかなかやってこなかった項目がならぶ。政府と国民の間の不信感は覆い難い。ここの解消を徐々に進める願いが感じられる。福祉国家をつくることが大切とわかる。一読されたい。