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3件
耳に棲むもの
著者 小川 洋子
耳の中に棲む私の最初の友だちは
涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。
補聴器のセールスマンだった父の骨壺から出てきた四つの耳の骨(カルテット)。
あたたかく、ときに禍々しく、
静かに光を放つようにつづられた珠玉の最新作品集。
オタワ映画祭VR部門最優秀賞・アヌシー映画祭公式出品
世界を席巻したVRアニメから生まれた「もう一つの物語」
「骨壺のカルテット」
補聴器のセールスマンだった父は、いつも古びたクッキー缶を持ち歩いていた。亡くなった父の骨壺と共に、私は親しかった耳鼻科の院長先生のもとを訪ねる。
「耳たぶに触れる」
収穫祭の“早泣き競争”に出場した男は、思わず写真に撮りたくなる特別な耳をもっていた。補聴器が納まったトランクに、男は掘り出したダンゴムシの死骸を収める。
「今日は小鳥の日」
小鳥ブローチのサイズは、実物の三分の一でなければなりません。嘴と爪は本物を用います。
残念ながら、もう一つも残っておりませんが。
「踊りましょうよ」
補聴器のメンテナンスと顧客とのお喋りを終えると、セールスマンさんはこっそり人工池に向かう。そこには“世界で最も釣り合いのとれた耳”をもつ彼女がいた。
「選鉱場とラッパ」
少年は、輪投げの景品のラッパが欲しかった。「どうか僕のラッパを誰かが持って帰ったりしませんように……」。お祭りの最終日、問題が発生する。
耳に棲むもの
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2025/01/18 20:26
小川洋子さんの不思議ワールド満載
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:タカミー - この投稿者のレビュー一覧を見る
耳に関係するお話?! どんな話?とページをめくると・・・・
そうそう、これが小川さんの不思議ワールド! 頭の中で想像してみて 静かに物語の世界に浸る・・・音楽が流れてきたり 缶がカラカラと鳴る音 小鳥のブローチが欲しいなぁと思ったり ちょっとヘンテコなシーンもあるけどそれが小川さんの作品。この作品をもとに山村監督がVR映画化したらしい、是非観てみたい。
2024/10/11 18:24
傑作
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
原作:小川洋子、監督:山村浩二のタッグによるVRアニメのために編まれた、美しく静謐な命を刻んだ5つの物語。
やはり小川洋子。どんなに慎重に一つ一つ言葉を手繰っていっても、気付くと想定外の道を歩かせられている。平坦な空間をも異世界へと変える、とんでもない世界観の持ち主。
「補聴器」という小さなものから、大きな世界の音を拾ったり、逆に塞いでみたり―――聴覚がすべてを凌駕していくような不思議な魅力と危うさを孕んだ作品。
「曲線」一つとっても、その溢れる感性で幻想的にしてしまう。いつまでもずっと良い意味での裏切りを与え続けてくれる小川洋子の新たな傑作。
2024/11/11 23:07
小川さんの世界
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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
耳に関するお話ですが、やや、ファンタジーっぽいお話もありました。それと、暗い物語も。骨壺のカルテットは、補聴器のセールスマンだった父が持ち歩いていた箱には……、という……。鳥の話とか、耳の中の話。どれも一癖アリ。