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11件
孟嘗君
著者 宮城谷昌光 (著)
斉の君主の子・田嬰(でんえい)の美妾・青欄(せいらん)は、健やかな男児・田文(でんぶん)を出産した。しかし、5月5日生まれは不吉、殺すようにと田嬰は命じる。必死の母・青欄が秘かに逃がした赤子は、奇しき縁で好漢風洪(ふうこう)に育てられる。血風吹きすさぶ戦国時代、人として見事に生きた田文こと孟嘗君とその養父の、颯爽たる人生の幕開け。全5巻。(講談社文庫)
孟嘗君(5)
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孟嘗君 1
2003/08/14 19:15
才徳両面で立派な人物形成の示唆を与える名著
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:さいとう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大きく驚いたことが2つあった。
それは徳性・才能両面で並外れた人物孟嘗君を形成した原因である。
1つが彼の成人までの生い立ちである。
彼は田嬰という、のちに宰相にもなる相当な貴族の家系に生まれている。これは知っておられる方も多いことだろう。
しかし、その生い立ちは、そういう環境で得られるであろう裕福なくらしとは全くかけ離れていた。
波乱万丈である。独特である。見方によればこのような大不幸はないし大幸福もない。
そしてもう1つが、彼を取り囲み影響を与えた人物である。
時代を超えて大いに敬すべき人物、当代の一流、当代の主要な人物とたくさんの多士済々が彼を取り囲む(この繋がりだけでも読者は大いに驚くかと…)。
以上から、なるほど孟嘗君は宿命の人物であり、必然の結果であったのかと思えてくる。
しかしそれは単純に、運よく、縁よく、人物に恵まれたからというものではないし、特別奇異な運命を与えられたためということでもない。
ここには誰もが徳性・才能両面で立派な人物を意識的に形成し、また形成させてゆくヒントが溢れている。
特に一例をあげると、彼の育ての父親・白圭(風洪)である。彼の人間的魅力・人格・器量・勇敢さはいつの時代でも永遠に尊敬の対象である。言葉よりもはるかに雄弁な、彼の行動と背中に孟嘗君はどれほど羨望のまなざしを向けたことか。人格・器量にどれほど模範となったことか。
余談だが、人物の形成・成長の上で最も重要な要素は「敬」であると言われている。ペットのように愛のみでの育成は不足であるという。また役割分担の云々はここではさて置き、「父の敬、母の愛」が理想であり、必要であるという。
またその敬のうち、人物・徳性が第一義であり、才能・能力は二義的であると言われている。
しかし残念なことに昨今の日本国全体を眺めると、その二義的要素においては尊敬の対象は健在であり多方面に渡っていると思われるが、肝心の一義的要素においてはそれは非常に乏しく感じられる。とくに父親にそのことを感じさせる。さらに悪いことに、一義的要素がしっかりしていないために誤った方向に二義的要素を注いでしまい、その結果とんでもない事態を起こしてしまったり、全く理想の成果が現れないという弊害も起きている。
明治維新のように世界史上類い稀な奇跡をやってのけ、才徳兼備の人物を数多く輩出してきた日本も、現在では、大は政治、経済、文化ともに退廃・堕落し、小は犯罪を中心に、子供による問題がエスカレートの一方をたどっている。
一体、この本質的理由とは何なのか? そして、その明治維新をはじめとした大いなる偉業をやってのけた人物たちの根本となった素養とは何であったか?
今一度日本人全体がこの書を片手に大いに反省し、人物を再構築・再形成すべきときにさしかかっているのかも知れない。
孟嘗君 1
2002/03/13 16:41
宮城谷氏三大傑作のひとつ
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マックスジーン - この投稿者のレビュー一覧を見る
一巻から三巻は白圭(風洪)という中国で実在した、商売の神様のお話です。「人と生まれたからにはこうありたい。」そう言える人物です。中国一の大商人でありながら財を残さなかった人物。黄河の治水工事を行うことで、戦国時代の多くの孤児や老人に仕事を与え、さらに、その仕事である治水工事は多くの国民を救う。国家さえ滅ぼす大事業を他人の手によらず、すべて私財で行った泥臭い大聖人のお話。そして斉の国の陰謀と白圭の子、孟嘗君の宰相としての人生(四巻〜五巻)。まさに名作です。
孟嘗君 1
2023/06/24 10:16
古代中国の戦国時代の四君の一人
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト - この投稿者のレビュー一覧を見る
(全5巻)
孟嘗君以外にも魅力的な人々がたくさん出てきて、その人たちの行動・言動がまた気になります。孟嘗君と言えば、函谷関で足止めを食らい「鶏鳴狗盗」が有名ですが、異能な人々が彼の周りに集まる。大河ドラマのようです。