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36件
大人の流儀
著者 伊集院 静
苦難に立ち向かわなければならないとき。人に優しくありたいと思ったとき。どうしようもない力に押し潰されたとき。自分のふがいなさが嫌になったとき。大切な人を失ってしまったとき。とてつもない悲しみに包まれたとき。こんなとき、大人ならどう考え、どう振る舞うのだろう。二十歳で弟、三十五歳で妻・夏目雅子との死別を体験してきた作家が語る、強くやさしく生きる方法――。シリーズ累計140万部の大ベストセラー第一弾!
ひとりで生きる 大人の流儀9
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不運と思うな。大人の流儀6 a genuine way of life
2025/02/18 17:51
美しいものを信じて
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
伊集院静さんの、この『不運と思うな。』、「大人の流儀」シリーズの6冊め。
2016年に刊行されたものだから、伊集院さんが66歳の時の文章。
伊集院さんといえば、若い頃弟さんを亡くし、結婚してからは若く美しい妻をまた亡くした。
その際には二人のことを不運と思ったという。
それから歳月を経て、そうは思わなくなったと綴る。
「不運ではなく、そういう生だったのだ。(中略)不運と思うな。そう自分に言い聞かせて、今日まで来ている。」
73歳で亡くなった伊集院さんは、確かに今の時代では早逝だろう。
しかし、きっと伊集院さんはそんな己を不運とは思わなかったにちがいない。
いのちが尽きるまで、精一杯自身の日々を生きたのだから。
「決して不運などとは考えずに今日から美しいものを信じて、自分の足で歩き続けよう。」
巻頭の文のおしまいに書かれた、伊集院さんの言葉だ。
2024/11/22 07:13
昭和の父親のように、強く諭す
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昭和の頃は、漫画「巨人の星」に登場する星一徹のような
鬼みたいな父親がたくさんいた。
さすがに今ではあんな父親だと、家庭内暴力とか毒親といわれかねないが、
どこかでそんな父親、暴力をふるうということでなく、強い父親を
望んでいないだろうか。
伊集院静さんの人気エッセイ「大人の流儀」シリーズを読んでいて心地よいのは、
そこに書かれているのがそんな強くて暖かい父親に似ているからかもしれない。
親の背中を見て子供は育つといわれるが、
まさに伊集院さんのエッセイを読んで、子供(読者)は育てられている。
シリーズ第5集めである『大人の流儀5 追いかけるな』を読んでも、そう思う。
父との思い出、母とのやりとり、若くして亡くなった弟のこと、
そして美しい女優であった若き妻も亡くし、
そんなたくさんの涙のはてに、伊集院静さんのエッセイが生まれた。
「生きることに哀しみがともなわない人生はどこにもない」と綴り、
それでも、「それを追いかける行為は、人を切なくするばかり」と諭す。
「便利なものには毒がある。手間がかかるものには良薬が隠れている。」
まさに、昭和の父親のような一言である。
大人の流儀 3 別れる力
2024/06/06 16:03
大人は別れさえ力にする
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
2023年11月に73歳で亡くなった作家・伊集院静さんの人気エッセイ
「大人の流儀」の3巻め。
付けられたタイトルが『別れる力』。
初出となる雑誌の連載が2011年12月から2012年の11月で
単行本は2012年の12月に刊行された。
当時、阿川佐和子さんの『聞く力』がベストセラーになるなど
出版界では「〇〇力」とタイトルにつけるのが流行していたせいだと思うが、
伊集院さんはこの巻に収録された「生きることの隣に哀切がある」というエッセイに
こう綴っている。
「人間は別れることで何かを得る生きものなのかもしれない。
別れるということには、人間を独り立ちさせ、生きることのすぐ隣に平然と哀切、
慟哭が居座っていることを知らしめる力が存在しているのかもしれない。」
伊集院静さんといえば、若い頃に妻で女優だった夏目雅子さんを亡くしている。
そして、何よりも幼い静さんに男としての生き方を教えた父も亡くして。
そういう逝ってしまった人々への思いが
このエッセイ集にはたくさん詰まっている。
人は別れることで、その人との思い出を追体験することとなる。
つまり、その人と何度も生きることになる。
もし、別れることに力があるとしたら、
そういう繰り返される時間を体感できるということかもしれない。
大人とは、別れることの哀しみさえ、力とできうるもののことをいうのだろう。