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深追い
著者 横山秀夫 (著)
交通死亡事故の実況検分中に、被害者のポケットベルを拾った交通課警察官。死んだ男の妻は、昔の恋人だった。彼女は夫の死後も連日のように、ポケベルに晩の献立を送ってくる。「コンヤハ カレー デス」――。
ポケベルを返すに返せなくなった「制服警察官」が最後に気づく、真実とは?
地方都市の警察署を舞台に、組織に生きる人間の葛藤を描いた、比類なき警察小説。心に沁みる横山小説の真骨頂!!
深追い
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2016/09/27 06:21
横山節…
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投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『深追い』(2005.5)もやはり警察を舞台にする短編集ですが、全編に一貫して登場する人物がいない群像劇で、それぞれの作品の関連性もありません。ただ舞台が【三ツ鐘署】という署と官舎が同じ敷地内に立っている職住一体化が進み過ぎたきらいのあるところが唯一の共通点となります。【三ツ鐘村】と揶揄される程プライベートがあまりない閉鎖的な環境における独特の葛藤みたいなものも描かれています。
収録作品は7編:『深追い』、『引き継ぎ』、『又聞き』、『訳あり』、『締め出し』、『仕返し』、『人ごと』。
警察を舞台にしている小説ではありますが、刑事事件が起こるのは『引き継ぎ』(空き巣)と『締め出し』(強盗殺人)くらいで、他はどちらかというと日常的(?)な事件です。
警察組織そのものの問題や組織内人事に関する問題、また警察官という職業ならではの葛藤などが生き生きと描かれているのは、「横山節」とでも命名できるのではないかと、彼の作品を何冊か読んだ今思い出しています。
その中で、一番ほっこりできたストーリーが『人ごと』。主人公は草花博士という異名をとる三ツ鐘署会計課の一般職員西脇大二郎。交通事故現場に花を植えたり、行く先々の警察署に花壇を作ったりする特殊性で、警察内ではちょっとした有名人。署に回って来た落とし物の一つに小銭と彼の馴染のフラワーショップの会員証の入ったお財布を見つけ、本来は交番に戻すべき案件を自分で引き受けたことで、そのお財布の持ち主の、市役所公園緑地課勤務だったという老人に出会います。この二人の縁と、老人の確執のできてしまった3人の娘たちの思いが最後にほっこりと温かい感動をもたらします。