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10件
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん
御園マユ。僕のクラスメイトで、聡明で、とても美人さんで、すごく大切なひと。彼女は今、僕の隣にちょこんと座り、無邪気に笑っている。リビングで、マユと一緒に見ているテレビでは、平穏な我が街で起こった誘拐事件の概要が流れていた。誘拐は、ある意味殺人より性悪な犯罪だ。殺人は本人が死んで終了だけど、誘拐は、解放されてから続いてしまう。ズレた人生を、続けなければいけない。修正不可能なのに。理解出来なくなった、人の普通ってやつに隷属しながら。──あ、そういえば。時間があれば、今度質問してみよう。まーちゃん、キミは何で、あの子達を誘拐したんですか。って。第13回 電撃小説大賞の最終選考会で物議を醸した問題作が登場!
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん11 ××の彼方は愛
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噓つきみーくんと壊れたまーちゃん i 記憶の形成は作為
2012/01/28 17:50
「ぼく」と彼女たち
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ト―チ - この投稿者のレビュー一覧を見る
春、夏、秋、冬――四つの季節とともに語られる、「ぼく」の思い出。
この物語は、あの事件から生還を果たしてから「みーくん」となるまでの、僕の××と感動と笑いと涙で構成されたウキウキ青春学園恋愛コメディーである。後半嘘だけど。あ、一応学校はあるかな。
春――、事件が解決してまだ間もない季節。「ぼく」がまだ、病院にいたころ。せんせーこと坂下恋日医師の治療を受けながら、世間から隔絶された生活を過ごす。そこでぼくが会ったのは、テレビの前に陣取る女性・ヤマナさんだった。
「しょーねんは、ここから出たら絶対に孤立する」
夏――、小学校を留年し、下の学年に編入した「ぼく」。そこで待っていたのは、これから一生ついて回る「誘拐犯の息子」というレッテル、そして風変わりないじめっ子、ト―エだった。
「じゃーわたしだけか。えせ君の友達は」
秋――、近所の山の遠足で1人迷子になった「ぼく」。ここは、懐かしくもにもうとがよく狩りに来ていた山だ。思い出されるにもうととの一日。「ぼく」が初めて「あにーちゃん」と呼ばれた日。
「変なのが動物を殺してた。あたしより先に」
冬――、久しぶりにみかけた、御園マユ。一番先に壊れて、「ぼく」をお人形として、「ぼく」を覚えていない女の子。だから「ぼく」は、またみーくんになるなんて思いもよらなかった。
「みーくんはこれから、まーちゃんとずっと一緒なんだもん」
監禁事件から帰って日が浅く、本編以上に異常性の目立つ主人公。後ろ指をさされながら、自分の狂気を知りながら、それでも生きていく「ぼく」。
他人から見れば不幸の塊かもしれないけれど、それでも、ぼくはあの時幸せでした。
とってももしもにもしかして、壊れていない正しさのある世界なら、
どうかぼくの世界が、壊されませんように。
噓つきみーくんと壊れたまーちゃん 1 幸せの背景は不幸
2009/03/01 09:45
ある単語がタブーになっている理由は
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
まずこの本を手にとって驚くのは、カバー裏のデザインだろう。黒字に朱色で様々な文中のセリフがデザインされており、異様な印象を醸し出す。赤ではなく朱にしたのは、少し躊躇があったのかもしれない。そして内容。これも一般的に言う普通ではない。
舞台となるのは普通から少しずれた街。なにせ現在、連続殺人事件と小学生兄妹の誘拐事件が継続中。そして普通の高校に通う女子高校生、御園マユ、まーちゃんも普通じゃない。彼女は小学生の時に、幼なじみのみーくんと共に誘拐監禁され、現在は小学生兄妹を自宅に監禁中。それを察して自宅に乗り込んできたみーくんと共に、不思議な共同生活が始まる。
幼少期の事件によるPTSD、連続殺人事件犯の動機、誘拐された兄妹がとどまる理由、そして幸せの形。様々な要素が、精神科医の恋日先生、刑事の上社奈月などを織り込みつつ、みーくんの視点で語られる。あえて一言で言うならば、子供の頃に犯罪に巻き込まれ心に深い傷を負い、その影響が今に現われてしまっている少年少女のおこした犯罪と、贖罪あるいは代償の物語。
(うがった見方をするならば、どこかのひな形を分かりやすく書き下した物語と言うこともできるかもしれない。)
噓つきみーくんと壊れたまーちゃん 3 死の礎は生
2009/03/04 22:14
もどれない、もどれる、もどれない
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
行方不明だったみーくんの妹が登場。いきなりミンチ殺人の容疑者扱いです。
みーくんの妹は、みーくんにとって過去の象徴のようなもの。シアワセとは言い切れなかったかもしれないけれど、監禁事件で壊れる前の関係を今に届けられる唯一の人物。一方で、まーちゃんは壊れた後の象徴。明らかにまーちゃん側に寄っているみーくんの選択が変わるか否かという点が一つの見所かもしれない。
今回は二人の学校での人間関係にも注目。