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6件
日本語練習帳
著者 大野晋 (著)
どうすればよりよく読めて書けるようになるか.何に気をつけどんな姿勢で文章に向かえばよいのか.練習問題に答えながら,単語に敏感になる習練から始めて,文の組み立て,文章の展開,敬語の基本など,日本語の骨格を理解し技能をみがく.学生・社会人のために著者が60年の研究を傾けて語る日本語トレーニングの手順.
日本語練習帳
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日本語練習帳
2004/04/09 02:36
コミュニケーションの本質とは?
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:LISApapa - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本がなにより優れているのは、ここに収められている知識の量ではなくて著者の日本語に対するスタンスの明快さです。最もそれが理解しやすいのは本文の最後の文章です。
「自分の思うところをaと表現したとき、相手がa’と取ったとしたら、分からない表現をした自分が悪い。相手がaと取れるように、aとしか取れないような形式を選び出して表現することを心がけなくてはならない。
言葉とは天然自然に通じるものではなくて、相手に分かってもらえるように努力して表現し、相手をよく理解できるようにと努力して読み、あるいは聞く。そういう行為が言語なのだと私は考えています」
コミュニケーションにとっていちばん大切なのは「謙虚さ」、そして「努力」。なんと深い言葉でしょうか。
同じく岩波新書の古典的名著『日本の思想』(丸山真男)において述べられているように「多元的なイメージを合成する思考法の必要」(P150)というのも根本は同じ事だといえます。
例えば恋をして(いきなりな例ですが)相手のことを好きになったします。
「あの人は、どういう人だろう?」「きっと、こんな人に違いない…」「ああ、こんな人だったんだ!」そういったイメージの積み重ねを繰り返して、人間関係を築いていくのです。(しかも厳密に言うと、そのイメージと実体が一致することは、決してない)
「わかる」「わかりあう」というのは、このようにとても曖昧で不確実なものなのです。ですが、それを人は「信じて」「信じあい」ますよね。そういった人間同士の関わりあいが“コミュニケーション”だとしたら、そこに「謙虚さ」と「努力」がなければ、過去から未来へとつづく人の営みが存在しうるはずがないではあーりませんか。
日本語練習帳
2010/01/21 10:14
日本語は伝統文化だ。
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本語練習帳というタイトルに、何をいまさら、と思ってしまう。
しかしながら、小手試しに問題にチャレンジしていくが、ページを進めるに従って思考能力がふらふらになってくる。
それでいて、途中で「お茶を一杯」という短いエッセイが絡んで頭を休めることができる。
そうこうしてくるうちに気付いたのは、日本語は伝統文化ということ。
さまざまな言語の影響を受けながらも地域性を大事にし、それにもまして日本語が立体的で具体的な表現方法であることに気づかされていく。
端々にあらわれているが、本書は日本語について書かれたものでありながら、日本の歴史や文化、ときには政治についての日本人の思考方法までをも示している。
親子ほども年齢の離れた大学の先輩から勧められたのだが、マーカーや書き込みのされたその一冊はボロボロだった。手になじむ、とはこのことを意味するのかというほど。
良き一冊を伝えてもらったと感謝しています。
日本語練習帳
2002/07/28 09:25
何度でも戻ってきたい本
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本人ってつくづく言葉を大事にする民族だと思う。そうでなかったら、本屋さんにあれほどたくさんの日本語に関する本が並ばない。他の国の人もそうなのだろうか。ひょっとして、僕たちは人とコミュニケートするのがとても下手な民族で、それをなんとかしないといけないという真面目な性格と相俟って、日本語の本を読み漁るのだろうか。
そんな日本語ブームの先駆けとなったこの本は、とにかくいい本だ。目から鱗がいくつも落ちた。こんな本はたびたび目を通して、常に言葉に対して新鮮でありたい。
日本語を大切に使うことは、理屈ではなく、習慣として身につけるしかない。そして、忘れそうになった時、いつでもこの本に戻ってきたらいい。