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4件
大往生
著者 永六輔(著)
人はみな必ず死ぬ.死なないわけにはいかない.それなら,人間らしい死を迎えるために,深刻ぶらずに,もっと気楽に「老い」「病い」,そして「死」を語りあおう.本書は,全国津々浦々を旅するなかで聞いた,心にしみる庶民のホンネや寸言をちりばめつつ,自在に書き綴られた人生の知恵.死への確かなまなざしが,生の尊さを照らし出す.
大往生
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大往生
2016/08/29 14:43
ほんとにあっちに行ってしまった永さんに
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:平良 進 - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前から購入して読んでいなかったが、ようやく読了することができた。人はどういう形にせよ、年齢を問わず死に関してもっと関心をもち、考えるべきだというのがこの書の主旨であると感じた。
コンサートにもずっと出てきていたが、どんどん痩せてもう永さんも長くはないのかなとか思っていた。マルチタレントとしての活躍がもう見られないのは残念である。平成でこういう人物に出会うことはあるまいとも思った。典型的な日本の芸人だった。またどこかでお会いできればいいなという印象を持っている。
大往生
2016/07/13 07:16
追悼・永六輔さん - 先に往っただけ
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
独特の語り口で多くの人に愛された永六輔さんが亡くなった。83歳だった。
永さんの肩書は放送作家、作詞家、ラジオのパーソナリティ、著述家など実に多彩だった。
私が永さんのラジオ番組をよく聴いていたのはちょうど永さんが尺貫法に異を唱えていた頃で、1970年代後半でしょうか。
テレビのない学生生活で、部屋の中の娯楽はラジオだった時代です。
永さんが岩波新書にこの『大往生』を書いたのは1994年。200万部を売る大ベストセラーになりました。
老いや病気、あるいは死を永さんは町の無名の人たちの言葉を拾い集めて、読者の視点で描いてくれました。
この本の中でも紹介されていますが、「子供叱るな/来た道だもの/年寄り笑うな/行く道だもの」は、永さんが犬山の寺の門前の掲示板から写したもので、永さんのラジオ番組でも聴いた記憶があります。
とても印象深い言葉です。
作詞家としては坂本九さんの名曲「上を向いて歩こう」や「見上げてごらん夜の星を」が知られています。「遠くへ行きたい」も永さんの作詞です。
作曲は盟友中村八大さんといずみたくさん。二人に作詞を提供する困難を感じて作詞家を断念したと、この本には書かれています。
「まえがき」で永さんはこの本を90歳で亡くなった父に捧げると記していますが、子や孫に見守られながら逝った父を「これ以上の死に方はない」と敬意を払っている。
永さんには先達の人から順番に死んでいくこと、その姿を残されて者たちにしっかり見せることという強い思いがあったのでしょう。
「大往生」というのは、死ぬことではない、と永さんは書いています。
「往生は往って生きること」だと。
永六輔さんは、先に往っただけのこと。
それが永六輔という人の心情だったのですから、まさに「大往生」です。
大往生
2002/07/16 10:32
死を自分の手に
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:HRKN - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じ永六輔氏の著書「職人」の書評でも書いたが、私は氏のキャラクターが好きになれない。どうしてそんな風に思うのか、考えても考えても理由はわからない。水が合わないとしか言いようがない。だが氏の著作が嫌いかというと、そうではないからまた複雑だ。「職人」では学ばされる部分が多かった。「職人とは生き方」、こういうキーワードを自然に提示する辺りには、氏の才能を認めずにはいられなかった。
そしてこの「大往生」でも、多くの示唆的な言葉が散りばめられている。その多くは永氏の口から発せられたものでは無いが、それを選び取った氏のセンスには脱帽である。「叱ってくれる人がいなくなったら、探してでも見つけなさい」、「人生ね、あてにしちゃいけません。あてになんぞするからガッカリしたり、悩んだりするんです」、「ただ死ぬのは簡単なんだ。死んでみせなきゃ意味がないよ」、など。
本書では扱うテーマが軽くないためか、永氏の語り口もどことなく遠慮がちである。仲間の死や父の死を語る部分などは、永氏のいつも饒舌さから考えると別人のような穏やかさだ。いわゆるあとがきに当たる部分の洒落っ気も、決して軽薄ではない。本書は最後まで反感を抱かずに、普通に読むことができた。
日常的には死について思いを巡らすことは少ない。私も避けている側面がある。だけど、いつかは死ぬのだ。本書のようなもので、その時のための練習をしておくのは悪くない。死を身近にして、今を過ごす。そうするだけで色々なことが新しい光を放つような気がして、新鮮に思えてくる。その点で、本書には感謝だ。