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流れよわが涙、と警官は言った
著者 フィリップ・K・ディック (著) , 友枝康子 (訳)
〔ジョン・W・キャンベル記念賞受賞〕三千万の視聴者から愛されるマルチタレントのタヴァナーは、ある朝安ホテルで目覚めた。やがて恐るべき事実が判明した。世界中の誰も自分のことを覚えていないのだ!
流れよわが涙、と警官は言った
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評価内訳
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流れよわが涙、と警官は言った
2003/09/29 22:34
がディック作品に涙など必要ない、とわたしは言った
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:脇博道 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アイデンティティ喪失と、それを奪還するための主人公が不条理な戦い
を生き抜くディック屈指の名作である本書は、ディック作品お約束の
クールでハードな展開にもかかわらず不思議な詩情感あるいは無常感
がただよう異色の作品でもある。
誰でも15分間はスーパースターになれる、とウォーホルは言った。
このことばとあたかもクラインのつぼあるいはペンローズの絵のような
表裏一体あるいは知覚の逆転現象のごときストーリーが展開する。
あるいはシンデレラストーリーの裏返し的物語と称しても異論はでない
かもしれない。
ところが、ディック作品の新骨頂はそのような比較的単純とも思える
構造的アイデアを出発点としながら、じわじわと押し寄せる人間の存在
そのものへの問いかけへと常にエスカレートしていくことである。
本書もその例外ではないし、むしろそのテーマを深く潜行させながら
ラストまで奇妙な余韻(読んでいる内から余韻を感じ始めるというディ
ック作品ならではの優れた倒錯的展開!)を感じつつ読みとおすほかない。
かつて作家H・M氏は、ディック作品は気持ちがドロップしているとき
に読む、といった主旨の発言をしておられたがまさしく本書はそのような
ときに適すると思える。が誤解なきよう書いておかねばならないがその
ような気分のときの単純な癒しなどというものでは断じてない。
H・M氏の発言も勿論そのようなセンチメンタルな救いを期待するという
主旨ではない。
それではどういうことなのか。ここではシンプルにいいきってしまおう。
たとえつかのまの時間であるにせよ、本書を読んでいるとき人間とは?
そして社会とは? が直観できることである。
前言撤回。やはりひとすじの涙は流れる…かもしれない。
流れよわが涙、と警官は言った
2003/06/24 15:37
内容紹介
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る
〔ジョン・W・キャンベル記念賞受賞〕三千万の視聴者から愛されるマルチタレントのタヴァナーは、ある朝安ホテルで目覚めた。やがて恐るべき事実が判明する。世界中の誰も自分のことを覚えていないのだ! “存在しない男”の烙印を押されたタヴァナーは警察に追われながらも必死で真相を探る……会心の傑作!
流れよわが涙、と警官は言った
2023/04/22 08:27
作者の悲観的な未来像か
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マーブル - この投稿者のレビュー一覧を見る
有名な歌手として、多くの視聴者を抱えた自分のテレビ番組を持ち成功しているジェイスン・タヴァナーは、遺伝子的に優性な操作を受けて生まれた存在。肉体的にも優れ、強い精神力を持ち、性的魅力にあふれている。が、泣くことができない。同情心が理解できない。解説で書かれているようにレプリカントのネクサスとの相似性を考えるなら、優れていはいるが欠陥があり、その行く末は決してバラ色とは思えない。これは作者の悲観的な未来像か。あるいは何者かへの皮肉なのか。