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博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話
著者 サイモン・ウィンチェスター , 鈴木 主税
41万語以上の収録語数を誇る世界最大・最高の辞書『オックスフォード英語大辞典』(OED)。この壮大な編纂事業の中心にいたのは、貧困の中、独学で言語学界の第一人者となったマレー博士。そして彼には、日々手紙で用例を送ってくる謎の協力者がいた。ある日彼を訪ねたマレーはそのあまりにも意外な正体を知る――言葉の奔流に挑み続けた二人の天才の数奇な人生とは? 全米で大反響を呼んだ、ノンフィクションの真髄。
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博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話
2006/04/11 23:34
世界最高の辞書に最も寄与したのは狂人だった
15人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Skywriter - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変な労力を費やしつつも、世人からなかなかその苦労を認識されないことはいくつもある。めったなことでは光が当てられない、そんな分野で大変な苦労をして、そして成果を挙げた人々は少なくない。
たとえばスポーツ選手はその苦労が容易に偲ばれるが、学者はそうではないのではなかろうか。そんななかなか苦労が見えてこないものに、本書でも取り上げられている辞書の編纂もあげられるだろう。
しかも、そんな辞書の中でも全ての言葉を網羅し、しかも語源から用法の変化まで用例を用いて説明することを目標としたオックスフォード英語大辞典(OED)ともなるとその仕事量は信じられないほど膨大なものになる。仕事量にとどまらず、多くの知識や情報を集め、それを纏め上げる優れた頭脳が必要だ。
ジェイムズ・マレー博士こそ、その頭脳であった。OEDの完成をみることはついになかったが、極め付けに優れた知性と教養が無謀ともいえる事業を成功へ導いた。そしてもう一人。多くの用例を辞書の編纂のタイミングに合わせて送りつづけたウィリアム・マイナー。彼はなんと殺人罪で精神病院に収監された狂人だった。
この一見して対照的な二人を軸にOEDが軌道に乗り、果てしない終着点を目指す流れを追う。最も知力を使うような、そんな作業が狂人によって成し遂げられたのだ。完成まで70年をかけたOEDは総ページ数16、570、収録語数414、825、用例1、827、306という、その数を見ただけで卒倒しそうなほどのものを作り上げた。辞書にはそんなくろうが眠っているのだ。
著者のサイモン・ウィンチェスターは世界を変えた地図でウィリアム・スミスというこれまた一般には知られていない人物を取り上げ、業績を明らかにしている。こういった、報われにくい天才たちに光を当てて存在をアピールする著者の存在は貴重であると思う。
博士と狂人 世界最高の辞書OEDの誕生秘話
2023/11/26 14:06
世界最高峰の英語辞典 その編纂に貢献した二人の大立役者の人情あふれる物語
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:大阪の北国ファン - この投稿者のレビュー一覧を見る
世界最高の英語辞典「オックスフォード英語辞典」の歴史を勉強しようと思って手に取った。
どこかで見たことがある著者名だと思ったが、何と先だって読んだ「クラカトアの大噴火」を書いたジャーナリストだった。それはインドネシアで噴火した火山の噴火音がアフリカ大陸の手前まで聞こえたという驚くべき大噴火のいきさつをドラマ仕立てかつ詳細な歴史絵巻仕立てにした本で、卓越したストーリー展開を楽しめたのだった。「これは期待できる」と思い本書のページを開いた。するといきなり英国紳士が登場し、郊外に向かう汽車に乗る。そして古城ばりの大邸宅で待ち受けていたもう一人の英国紳士と出会う。しかしその人物は目当ての面会相手ではない。・・・、イギリスの名探偵の小説さながらの幕開けである。
この本は「辞書編集」という、そこだけ聞くと何やら抑揚のない地味なストーリーが淡々と進んでいくような気がするが、映画にもなった如く劇中にはサスペンスあり、人情噺ありと英語最高峰の辞書の歴史を語る中に濃厚な人間ドラマが展開していく。
しかも本書はドキュメンタリー的描写のみならず、シェイクスピアの時代には存在しなかった英国における「辞書」について、その編纂の歴史を1721年のナサニエル・ベイリーにまで遡ってきちんと教えてくれる。辞書編集から英語の歴史、それを通してこの地にやってきた文明・文化の足跡が追えるのが楽しい。
そして書名にもなっている「狂人」とはどんな人物か、狂人がどういう形で辞書編集の大立役者となり得たのか、推理小説ばりのストーリー展開で”解明”してくれる。歴史書と推理小説を同時に読んだ充実感がある。
壮大な辞書編纂とともに繰り広げられたいくつもの人間ドラマが綾織のように展開していく読みどころ満載の本であった。
2021/01/22 14:35
映画の原作
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画の『博士と狂人』がすばらしかったので原作も手にとってみました。最初の南北戦争のあたりから、かなり映画にないキツイ描写が続いてつらかったです。でも読み応えある良書です。