- みんなの評価
2件
新しい世界を生きるための14のSF
著者 伴名 練
衝突事故直前の車載AIが最後の審判を繰り広げる八島游舷「Final Anchors」、恋人の死体を盗んだ女が超常の存在へ愛を問う斜線堂有紀「回樹」、大正時代の屋敷で少女二人の運命を怪死事件が結ぶ芦沢央「九月某日の誓い」、徳川光圀の命を受けた学者たちが和歌コンピュータを発明する夜来風音「大江戸しんぐらりてい」など、新世代作家たちによる書籍化前の傑作14篇。伴名練によるSF入門14本を併録の超大型アンソロジー
新しい世界を生きるための14のSF
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
新しい世界を生きるための14のSF
2022/10/14 10:47
ハード系SFアンソロジーの最高峰
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
AI、宇宙、超能力、バイオテクノロジー等の14のテーマで伴名練さんがセレクトした若手作家のSFアンソロジー。800P超のボリュームに裏打ちされた、伴名練さんのSF業界全体に対する俯瞰力と審美眼(?)がずば抜けていると感じた。編集者としての能力が高すぎる。特にすごいのは収録作品のほとんどが書籍化されていないこと。文芸誌だけでなくnote等の掲載作品まで日々チェックした上で、近未来のSF業界を支えるであろう若手作家の傑作選としてジャンル別にピックアップしている(しかも自身の作品執筆もしているからとんでもない)。SF業界を照らす一冊だと思う。
印象的な作品をいくつかピックアップ。
八島游舷「Final Anchors」:AIによる自動運転が実装された自動車同士の衝突事故を題材にした作品。運転手の社会的地位や、現場周辺に及ぼす影響を考慮して繰り広げられるトロッコ問題をAI同士が1秒未満で議論する景色は近い将来あり得るなと考えさせられる。
夜来風音「大江戸しんぐらりてい」:和歌の規則性研究に端を発して、関孝和と渋川春海を巻き込んだ人力計算機"算術長屋"の開発過程の功罪を描き切った歴史改変SF。冲方丁の「天地明察」と劉慈欣の「円」を掛け合わせてリミックスしたような作品に仕上がっていて、着想はずば抜けて面白かった。
坂永雄一「無脊椎動物の想像力と創造性について」:バイオテクノロジーによって、糸の生産力と繁殖力を強化された蜘蛛が京都の街を呑み込んだ顛末を描いた作品。物語の合間に実在する蜘蛛の性質を挿入することで物語の世界観が現実と地続きであることを強く意識付けていて、読み手の想像力を掻き立てる。その上で、蜘蛛の巣に呑み込まれた街の描写が美しくて、有川浩「塩の街」にも通ずるある種の畏怖と表裏一体の美しさみたいなものがある。バイオテクノロジーを制御できなくて世界規模で問題を起こすって筋書自体はオーソドックスだけど、「現実との地続き感」「映像美」の2点でこの作品はずば抜けてる。個人的にはSFの魅力(SFだからこそできること)は、科学に対する読み手の想像力と興味を掻き立てることなんじゃないかと思うんだけど、その意味で坂永雄一さんのこの作品は見事。
2024/06/03 04:11
SF大好きな人向け
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
SFの世界にもAIが登場するお話も良かったですけど、個人的に好みなのは、大正時代の話、芦沢央さんの「九月某日の誓い」、それと徳川光圀の命により、和歌コンピュータを発明する夜来風音さんの「大江戸しんぐらりてい」ですね