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ビリー・ミリガンと23の棺
ビリー・ミリガンは起訴されたのち、精神異常を理由に無罪となった。しかしその後、彼が送られたオハイオ州立ライマ病院は、体罰に電気ショック療法を用い薬物で患者を廃人にする恐るべき場所だった……『24人のビリー・ミリガン』では書けなかった、精神病棟内でのビリーの孤独な闘いを明らかにする驚異の続篇。
ビリー・ミリガンと23の棺 下
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ビリー・ミリガンと23の棺 上
2001/03/11 01:51
戦うビリー。がんばれ〜!
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読ん太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『24人のビリー・ミリガン』の続編。
連続レイプ犯として逮捕されたが、精神異常の判定で無罪となったビリー・ミリガンの、その後送られたライマ病院という精神病院での様子を中心に綴られている。
本書を読まれる方は、是非『24人のビリー・ミリガン』を先に読まれることをお薦めします。
ライマ病院は病院とは名ばかり。治療と呼ばれるようなものはほとんど行なわれず、ビリーもそこで薬物を多量に飲まされたり、ついには電気ショックを受けるなどして廃人寸前となる。逃走場面あり、コンピューターハッカーとしてビリー登場など、ノンフィクションではあるのだがストーリーにぐいぐい引き込まれてしまう。また、『24人のビリー・ミリガン』は最後まで闇に閉ざされたまま終結してしまったような感じだが、本書では希望の光が見えてきて終結する。これがほっとした。
この希望の光が見えてきたのには、ビリー自身の努力もあるのだが、著者のダニエル・キイス他たくさんの人々がビリーのために命を削ってでも助けようと疾走した結果の賜物とも言える。正しい判断と、その自分の判断に責任を持って行動を起こす人々を見ていて勇気を与えられた。
だが、つくづく悔しく思われるのは、ビリーが多重人格性障害でなかったならば、このような人々の努力も元々必要なものではなかったし、彼自身、連続レイプという罪を犯すこともなかっただろうということだ。
ビリーが多重人格性障害に陥った原因は、幼少期の継父による性的虐待であった。子供が親に守られて育つのは当たり前のことだが、この当たり前のことが成されず、その上虐待まで伴うとどんな結果が待ち受けているかを本書は教えてくれた。
「幼い頃にひどい目に会った」と過去形で締めくくれない。過去に虐待を受けた子供の、大人になっても地獄を見続ける苦しさを知って、自分の考えの甘さにショックを受けた。
この本を元にビリー・ミリガンの物語が映画化される(された?)らしい。アメリカでは「The crowded room」というタイトルだが、是非見てみたいものだと思った。だれが演じるのかは知らないが大変なことだろうな。だって、ビリーには24の人格があるので、一人24役をこなさなければならないから。その上、この24人はすべてアメリカ人とは限らない。イギリス人のアーサーはイギリス英語を話すし、オーストラリア人のウォルターはオーストラリア訛りがある。ユーゴスラヴィア人のレイゲンはスラヴ訛りのきつい英語を話す。年令もまちまちで一番小さい子は3歳だ。
ミセス・ダウトに主演したロビン・ウィリアムズなんて適役ではないかな?
ビリー・ミリガンと23の棺 上
2001/02/23 17:02
復讐の輪、許しの輪
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つる - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビリーミリガンは殺人者である。しかも多重人格者である。
最近多重人格はクローズアップされ症例も増加傾向にあるようだが、まだまだ理解されていない。
多重人格は幼児期の虐待が原因で引き起こされることが多いという。親にひどい扱いをされ、子供はショックのあまり「これは本当の自分ではない、他の誰かに起こっていることだ」と思い始める。そして人格が分裂してしまう。そうすることで本来の自我を守るのだ。
ビリーの場合も同じであった。そしてビリーを虐待した父もまたその父親から虐待されていたということが分かる。されたことをしかえす、復讐の輪がそこにある。
この本はビリーが父を許そうとするところでおわる。被害者である彼がみずからその復讐の輪を断ち切ろうとするのだ。
許しの輪がひろがることを願う。