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実力も運のうち 能力主義は正義か?
著者 マイケル サンデル(著) , 鬼澤 忍(訳)
成功を決めるのは努力か環境か? ハーバード随一の人気教授が「能力主義」の是非を問い日本中に議論を巻き起こしたベストセラー
実力も運のうち 能力主義は正義か?
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実力も運のうち 能力主義は正義か?
2023/12/07 20:56
機会の平等は平等といえるか、能力主義は人を律するものか
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、コミュニタリアニズム(共同体主義)の代表的な論者として知られている。封建社会より近代社会が進歩しているという当たり前の評価があるが、それで封建社会に比べて誰もが幸せだろうか。封建社会では生まれによってすべてが決まってしまうといわれる。それで諦めをつけることができるが、近代社会、とりわけ第二次世界大戦後は能力主義で評価され、頑張れば誰でも上に立つことができるというようにいわれる。駄目だったら本人の努力が足りないといわれる。このことに対し、著者は大いなる疑問を投げかける。目次を見ると、
プロローグ
序論―入学すること
第1章 勝者と敗者
第2章 「偉大なのは善だから」―能力の道徳の簡単な歴史
第3章 出世のレトリック
第4章 学歴偏重主義―容認されている最後の偏見
第5章 成功の倫理学
第6章 選別装置
第7章 労働を承認する
結論 能力と共通善
謝辞、解説/本田由紀、文庫版のための解説
注 となっている。
以上のように展開される。読み終わり、解説で本書の内容をまとめてくれ、概略までついている。機会の平等か、結果の平等かという議論があるが、それを積極的にとりあげるわけでない。封建社会と違い、先進資本主義国では、機会の平等は保障されおり、義務教育等の整備もされているので、近年、自己責任ということばが一人歩きしている。それにより連帯を蝕み、グローバリゼーションに取り残された多くの人の自信を失わせる。2点目に、大学卒、大学院卒が立派な仕事に就く主要ルートとすることで、社会の過半数を超える人たちを貶める。3点目に高度な教育を受けた人により、社会を牽引できるというテクノクラート的うぬぼれに陥っている。さらに多くの読むべきところがある。メリトクラシー(能力主義)とは。共通善とは。すべてに答えを出しているわけではない。多くのことを示唆し、考えさせる。メリトクラシーは能力主義というより、功績主義という方が適切という。じっくりと読んでほしい本である。