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12件
リアル鬼ごっこ
著者 山田悠介 (著)
(佐藤〉姓を皆殺しにせよ!西暦3000年、国王は7日間にわたる大量虐殺を決行。佐藤翼は妹を救うため、死の競走路を疾走する。若い世代を熱狂させた大ベストセラーの〈改訂版〉。
リアル鬼ごっこ
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2018/11/05 08:56
斬新な設定
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:akb49484800 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のデビュー作。デビュー作なので、やや荒い所もあるが、斬新な設定に惹き付けられた。この著者の作品は読んだことが無かったが、今後は他の作品も読んでみようと思った。
リアル鬼ごっこ
2007/09/19 06:10
賛否の裏から、「山田システム」の原点がわかる一冊
7人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:いえぽん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この作品は、発売以来、驚異的な売り上げでベストセラーとなり、一躍、世間の注目を浴びることになりました。高い売り上げを記録する一方で、批評家たちの多くから、文章力の弱さや設定の奇想天外さを指摘されたいわく付きの作品であり、その評価は、ネット等の場においても、激しい賛否にさらされているのがわかります。逆に言えば、この「リアル鬼ごっこ」が、いかに衝撃的な作品だったかという証明だと言いかえることができるかも知れません。
遥か未来の日本なのに地名や交通機関がそのままで、王室の苗字が「佐藤」だったりというような設定面のまずさは、既に多くの人々から指摘されていることであり、動かぬ事実ではありますが、だとすれば何故、多くの人々の心を掴んだのでしょうか? 文章力や構成力だけで売り上げが決まってくるわけではありませんが、それらの要素が小説において極めて重要なことは分かり切ったことで、しかも著者の山田氏は、当時全く無名の存在でした。ベストセラー化されるには、あらゆる面において不利な条件が並んでいたと言えます。
しかし、本書は大ヒットしました。そして、何故人の心を惹きつけたのかという部分に、山田氏の作家として、演出家としての才を見出すことができます。山田氏は、「鬼ごっこ」というごくありふれた遊びを、主題としてセレクトし、その上で、普通ならば考えられない「命がけ」の概念を付け加えました。つまり、この時点で「誰もが理解できている」のに「誰も見たことのない世界」を作り上げてしまったのです。読者の価値共有感覚と興味を惹きつける高等なシステムだと言えるでしょう。
バラエティ番組における「良くあるゲーム」から「きつい罰ゲーム」の流れで、視聴者の興味を集めるのと同種の技術ですが、この「リアル鬼ごっこ」の「共有性」は、抜群のものがあります。しかも、どんなテレビ番組も真似することができない「命がけ」のサバイバルを見せることによって、同種のコンテンツに対しての、絶対的な優越性を確保してもいます。小説として、様々な部分の未熟性が指摘されたにも関わらず、この作品が人気を博し続け、映画化の噂もされたのは、「演出力」によるところが大でしょう。作家としてキャリアを積んだ山田氏が、以後の作品でも、理では考えられないような設定を持ち出すことがあるのも、恐らくは、「何を見せるのか」の部分に特化した結果でしょう。
本来重要視されるべき設定上の理屈、理論を時には脇に追いやってでも、「見せる」ことを追求する「山田システム」は、氏独自のものと言えますが、この作品は、作品の主題がぼけてしまい「何を見せたいか」で悩んでいる創作者の方々にとって、思わぬ助けになるかも知れません。いかに見せるかという視点から、この本を読んで見ると、思わぬ発見があったりします。小説において、文章や構成は極めて大事な要素ですが、本書の場合、それらを「表層」と仮定して読み進めていくのも、面白いかも知れません。