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6件
パリでメシを食う。
著者 川内有緒
三つ星レストランの厨房で働く料理人、オペラ座に漫画喫茶を開いた若夫婦、パリコレで活躍するスタイリスト。その他アーティスト、カメラマン、花屋、国連職員…パリにいつのまにか住み着いた日本人10人の軌跡。時にセーヌ川のほとりで、時にワインを片手に、彼らが語る軽やかでマイペースなパリでの暮らしぶりに、思わず肩の力がふっと抜けるエッセイ。
パリでメシを食う。
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パリでメシを食う。
2011/02/04 21:23
グルメのガイドブックではありません。色々な人生のア・ラ・カルト。
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
生き方に、正解とかレシピというものは存在しないのだなぁと
改めて思う。
幸せとか成功とかいう言葉の意味も
個人によってそれぞれ違うものなのだろう。
この本は、パリで働きパリに生きる人々のレポート。
フローリスト、カメラマン、テーラー、スタイリスト、
鍼灸師、漫画喫茶のオーナーなど、10人の日本人のお話。
著者が各自にインタビューして綴ったものだが、
シーンの切り取り方や感情の掬い上げ方にぐっとくる。
著者は、取材した人と同じ位置に立ちながらも
着かず離れずの絶妙な緊張感をキープしている。
そこから伝わってくるのは、
話を聞かせてくれた人に対する誠実さだ。
はっきりいってこの10人の話を知ったからどうということはない。
ましてや参考になどならないし、著者はそれを望んでいない。
なんのお手本もなしに、自分自身の内面の声だけを頼りに
パリへ渡り、できることを見つけて生きている。
ただ、そのことに感動するのだ。
登場する10人は、みんなどこかゆったりとしている。
もちろん仕事は忙しいのだろうし、
外国で仕事をするところに行き着くまで紆余曲折。
「パリでメシを食う」ことは生半可なことじゃないだろう。
いろんなことに失望し、試され、迷い、自分しか頼れない。
それでも、ガツガツ、キュウキュウとしたところがないのだ。
大切なものがわかっていて、それを本当に大切にしているのだろう。
がむしゃらにではなく、パリという街でごく自然に呼吸ができる人たち。
彼らの物語はまた明日へと続いていく。
著者の、いい意味での気負いのなさが魅力だ。
淡々とした中にもぬくもりの感じられる文章に
惹き込まれ、ほろりとさせられる。
読み終わったあとのあの素敵な感じは、うまく表現できない。
2016/11/28 18:34
みんな違ってみんないい
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たいこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルから食べ物関連の話かと思いきや、パリで暮らす日本人達の現在と過去を綴ったドキュメンタリーでした。淡々としているけれど、何度もふと涙ぐみそうになったり、ぐっと励まされたり。それは、私自身が、生真面目で空気を読む実に日本人的な気質でありながらも、自由と一人が好きな性質も持ち合わせており、日本で生きる閉塞感を常に感じているせいかもしれません。日本人は、清潔で規律正しく我慢強く、そこが魅力でもありますが、基本的に本音を呑み込んで生きており、それ故に人を許すことも人から許されることも下手な面があると思います。そんな生活の中で疲れた時にこの本を読むと、日本を飛び出し、全く異なる環境で奮闘しながらも穏やかに生きる人々の姿に深い憧憬と安堵を覚えます。
何事も長所と短所は紙一重、必ずしもパリでの生活が日本での生活よりも優れているというわけではありません。逆に、彼らが日本での生活からの脱落者というわけでもありません。日本から飛び出し、パリを選んだ理由も、その土地への想いの深さも様々です。
それでも、人にはそれぞれ自分らしく生きられる土地がこの世界中のどこかにあり、それは必ずしも生まれ育った土地ではないのだということを実感しました。
今後も何度も繰り返し読みたい作品です。
パリでメシを食う。
2020/02/01 20:28
人は皆それぞれ
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kochimi - この投稿者のレビュー一覧を見る
紹介されている10人の方々には
面白いくらい共通点がなくて、
パリでメシを食っている理由も手段も目的も
皆それぞれで、
現代と現実をライトに切り取った
とても興味深いドキュメンタリーでした。