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中国のマンガ〈連環画〉の世界
著者 武田雅哉 著
中国の多彩な図像学の系譜を受け継いで生まれた中国のマンガ〈連環画〉。ときにコミカルで愉快、ときに苛酷で恐ろしい、20世紀の中国社会をリアルに映す中国マンガ学を紹介。
〔目 次〕
はじめに
1 絵とともに語られるはなしの系譜
2 連環図画の誕生――中華民国(一九一二~四九)
3 混乱から改良、そして隆盛――中華人民共和国建国初期(一九五〇~六〇年代前半)
4 闘争する〈小人〉たち――文化大革命時期(一九六六~七六)
5 いまひとたびのご奉公――文革終熄後(一九七〇年代末~一九八五)
6 大河からせせらぎへ――連環画の衰退(一九八六~二一世紀)
7 連環画のさまざまな〈顔〉――そして饒舌な〈口〉
8 日本の読者のための一章
あとがき
注/参考文献/図版出典
中国のマンガ〈連環画〉の世界
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2017/09/13 20:27
本の判型も特徴的な中国マンガとは
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:M77 - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し前の中国では絵物語を横長小冊子にしたものを街角で売っていたそうで、その小人書とか連環画とかいうものの歴史を紹介した本。
中華民国初期に京劇の絵物語化から始まり、最初は律儀に付け髭の紐まで描き込んでいたらしい。
映画などは試写会に作家を送り込み、公開日には小人書が店に並ぶスピード製作で、作家の働かせ方の非道さから『ほう馬書(ホウの部分は足偏に包で、走らせるの意)』などと言われ質も低かったが著作権意識の低さが結果的にマルチメディア化を実現させていたというのは面白い。
最盛期には毎日毎日数冊の小人書が出版され、発売3日後には安く借りられたというので、連載ではないが週刊より速い日刊誌のスピードだ。
連環画に影響され山に籠って仙人になろうとして連れ戻される子供達も定期的に新聞記事になっていたそうだ。
文革期には娯楽作は規制され、プロパガンダ作品ばかりになる。文革が終わってからは過去の名作の復刻や、芸術的な志の高い作品も産まれるが後が続かなかった。結局80年代末には日本の漫画等に押され、コレクター向けのものだけとなってしまう。
この本でも絵だけ抜き出しての紹介が多く、頁や冊子全体のイメージは掴みにくい。これは貸本時代に表紙を剥がして見本として店先に吊るしていた習慣と、現存する物のコレクター価格高騰のせいがあるようだ。
今後計画しているという連環画作品紹介の本に期待したい。
2017/03/19 00:18
清末から現代に至る絵物語
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「よいこの文化大革命」には否定される人物として日本人も取り上げられていて、日本人の人名に対する洞察もあったが、この本は日本軍が悪役として出て来る作品を除いて、悪役として観察される対象は中国人だけだ。中には蒋介石をモデルにしたと思えない絵もある(212頁の一番下の絵の軍装の人物と213頁の図4-21の下の絵)が、特に取り上げられていない。210頁の八路軍兵士の被っている帽章は青天白日だが、見えないように描かれているようだ。悪役が被っている国府軍の軍帽は抗戦後のものなのは、抗日戦当時のスキー帽型の軍帽では八路軍・新四軍兵士が被っているのでまずいのもあるだろう。だから「よいこの文化大革命」より見劣りする点がある。
禿頭の林彪や眼鏡をかけた江青も権力から転げ落ちると、そこを強調して戯画化されるわけだ。しかし、禿頭なら蒋介石もそうだが、無帽の写真は結構目にする。例えば昨今のレイシストが綺麗に忘れている(何しろ日本を戦争に引きずり込んだ「悪」は「支那」だという事になっているらしいから、「都合が悪い」のだろう)「以徳報恩」のラジオ放送をした時の写真がいい例だ。一方、林彪が軍帽を被っていない写真や映像は、あまり見ない。同じ時代なのに国民党と中共では文化の違いがあるのだろうか?
日本軍占領下や台湾などで連環画はなかったのだろうか?日本軍と対日協力諸政権は中国の庶民の文化に根ざした小道具を使って、「日支親善」や「日支友好」といった事を宣伝していたし、民国期の国民党政権側の考察は、この本に書かれているから、それを知りたくなる。
毛沢東が自分の為に人民大衆から奪った京劇を演じさせたり、映画を撮っていたりした事は初めて知った。スターリンが自分の為だけにトロツキーの論文や彼を批判した本をロシア語に翻訳させたのを連想させる。
朝鮮戦争当時の朝鮮女性を題材にした作品では北朝鮮の国旗を背にして、人民軍の軍装ではなく朝鮮服姿だ。人民軍の軍装でも分かると思うが、やはり朝鮮服の方が朝鮮人だと分かりやすくしているのだろう。「革命京劇」には韓国国軍が悪役になった作品があるが、韓国軍人や韓国側の人々は、どう表現されたのだろうか、と知りたくなる。
この本で一番の見ものは文革が終わってからの「傷痕文学」の作品を題材にした連環画で江青と林彪をリアルに描いた絵だ。もっとも林彪の絵は壁に貼られたポスターだが、実際は彼が単独で描かれたものはないはずだ。グロテスクに戯画化しない「悪役」の2人の絵に対して賛否両論があったようだが、この2枚の絵を実際に見てみたくなった。6・4と違って、毛沢東の時代の失政をそれなりに書けるのは毛沢東を取り巻く林彪と彼の子分達や四人組、それに陳伯達や康生といった「悪い幹部達」となっている人々がいるので、彼ら彼女らに責任を押しつけられるからだろう。