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編集者という病い
著者 見城徹
僕はこうやって生きてきた――出版界に大旋風を巻き起こす見城徹(幻冬舎社長)の仕事・人生の総決算の書。
「顰蹙は金を出してでも買え!」
「薄氷を薄くして踏み抜け」
など過激なスローガンを掲げて見城徹が創立した幻冬舎は、驚異的成長を続け、沈滞する文芸出版界に強烈な衝撃を与え続けている。
その総帥の著者が、半生の生き方と仕事の仕方を振り返り、
七転八倒と感動と苦悩の日々を惜しみなく書き綴った類希な人生の書。
勇気と感動、悲惨と栄光、この本には人間の情動のすべてが詰め込まれている。
尾崎豊との出会いー仕事ー別れに始まり、坂本龍一、石原慎太郎、村上龍、五木寛之、中上健次、松任谷由実、など綺羅星の如く並ぶ物書きたちとの深い交流とドラマチックな日々。
現役の編集者が作家たちの素顔をここまで踏み込んで書いたことはないだろう。
誰よりも深い劣等感を抱く著者が、誰にも負けない努力と情熱を傾けて戦い続けた日々を感動的に描き出す、人生記録の白眉がここに誕生した。
老若男女に関わらず、表現と文学と感動にこだわるすべての人々への無上の贈り物。
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編集者という病い
2008/05/06 08:24
黒子であるべき編集者が表に出てくるのだから、もっと自分をさらけ出す覚悟がいるのではないか
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
様々な出版物が著者の才能や努力だけでなく、それに関わる編集者の力によって世の中に出てくるものだということは、すでに知られていることだろう。無から小説なり、何らかの出版物、その他のメディアを生み出すのは実作者に違いないが、多くは混とんとした表現の塊にすぎない。それを世に問える形に直していくのが編集者ではないかと考えると、自分の仕事にも何か通じるものを感じて、何人かの編集者の伝記、評伝を読んでみた。それはいずれも過去の編集者であり、今この時代に編集者を語ろうとするならばどうしても避けて通れない人がいる。それがこの本の著者である見城徹だろう。
言わずと知れた幻冬舎の社長であり、角川書店時代からベストセラーを産み出してきた編集者である。彼が産み出した出版物と知らないままに何冊も読んできたはずだ。これは、押さえておくしかない。
三章立てに、序章とあとがきを加えた300ページにのぼる1冊だが、章立てされた本文はいくつかの雑誌に掲載された文章をまとめたもので、この本のための文章は序章とあとがきのみと言っていい。そのためか、いくつかの内容が何度も繰り返される。特に尾崎豊との交流(と言うより格闘とでも言いたくなるような話だが)や村上龍、石原慎太郎との関わりのあたりは著者の思い入れも強いのか、何度も何度も出てきて、途中から「またこの話かよ」と思わさせられてしまう。名編集者の本であるにも関わらず、このあたりは何も手を入れられていないようだ。何とかならなかったものだろうか。
現存する編集者の関わった仕事なので、出てくる作家らも最近の人が多い。ベストセラーの隠れたエピソードとして読むには興味深いものもある。しかし、そこに出てくるのが作家らだけでなく、見城自身の話が随所に出てくるようになると、また趣が違う。見城の手法が、作家らに肉薄して刺激して最後には書かせたいと思っているものを作り上げてしまうというものである以上、見城がいかに作家らに関わったのか、どう刺激したのかということを描かざるを得ないのだろうが、それを突き詰めていくと「こんな作品を作らせた俺ってすげえだろう」みたいな雰囲気になってしまう。もちろんこの本は見城徹の本なので見城が前面に出てくることになるのだろうが、あまり前面に出てこられるとかえって作品が遠ざかってしまうようにも思う。
やはり見城徹はすごい編集者だと思う。しかも今は単なる編集者を超えて、出版社社長として出版文化全体を手掛けてもいるわけだ。そんな彼の、ここまで事を起こそうとする内面をもっと知りたいと思った。尾崎豊の復活を手掛けた話や、村上龍とテニス三昧だった話や、石原慎太郎に裕次郎のことを書かせた話もいいけれど、「そんなことができるあなたってどんな人なの?」ということを教えてほしい。そこにはきっと作家ら以上に魅力的な人生があるのではないかと思っているのだが、どうだろう。時にはそんな姿を見せるのも、編集者の力量の一つだと思う。
そうか、この本の編集者は見城ではなかったのだ。見城が自身を俎上に載せて作り上げたものを見てみたい。