- みんなの評価
3件
偽装請負
著者 朝日新聞特別報道チーム
1990年代から一気に産業界に広まった「偽装請負」という雇用形態。グローバル化で飽くなきコストカット、人員削減を迫られたキヤノン、松下電器産業など超一流企業までもが、率先して安い労働力を求めて、違法行為に手を染めていた! 2006年夏から告発キャンペーン報道を展開し、新聞労連ジャーナリスト大賞優秀賞を受賞した朝日新聞取材チームが、格差社会の「労働悲劇」を描き尽くす渾身のルポ。
偽装請負 格差社会の労働現場
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
偽装請負 格差社会の労働現場
2007/06/25 05:27
働いても希望のもてない社会であってはならない
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ワーキングプア」「ネットカェ難民」など働くものの生活難が具体的にクローズアップされ、「格差社会」なるものの本質が徐々に明らかになってきている。そんな中で、「勝ち組」企業の労働者使い捨ての実態がもっとも顕著に現れているのが偽装請負と派遣社員の使い分けかもしれない。
本書は、その偽装請負の実態、その違法性(犯罪)と罪悪を具体的に示し、今後のあり方を問う力強い書である。若者が「いくらがんばっても認められない。働いても希望がもてない」社会であっていいはずがない。本書のあとがきにある言葉にうなずく。
「労働者を供給し、そこから利益を搾取する『人夫出し稼業』は戦後、職業安定法で禁じられ、違反者は刑事罰に処せられることになった。労働者の供給を受ける側にも刑事罰はある」
だが、「勝ち組」といわれる企業にとって、「電話一本」で集められる請負労働者はたまらなく魅力的な存在だった」
本書に書かれた内容の一部だが、これだけとっても偽装請負の犯罪性は明らかだ。それだけではない。
偽装請負を頻繁に行い、何度も行政に注意・指導されている企業のひとつがキャノンである。そのキャノンの御手洗会長は、政府の「経済財政諮問会議」の一員である。そして、その会議で、違法状態を反省するどころか、違法にならないように法律を変えろと発言する厚顔無恥な人物である。それを安倍首相がかばい続けているのだから、政府と企業の癒着振りはあきらかだろう。
犯罪を繰り返して、ばれたら法律を変えろと圧力をかける、あまりのひどさに仰天するしかない。
事実、労働者派遣法制定、その「改定」による製造現場への派遣合法化、さらには期限の3年への延長へと、労基法が次々と改悪された。その改悪の狙いが何であったか、それをはっきりとわからせてくれる。
戦後、なぜ『人夫出し稼業』が禁止されたのか。労働者を使い捨て、人間の尊厳を奪う人権無視の搾取が認められない当然のことだったのだ。ところが、それを徐々に拡大し、それを悪用した企業を罰するどころか、その企業の違法を合法にしようとする政府の罪悪はいうまでもない。
本書あとがきの「いくらがんばっても認められない。働いても希望がもてない」社会であっていいはずがない。という主張はもっともである。
みなさん、ぜひ、このことの本質を知っていただきたい。本書はその一端を知ることのできる書である。一読をお薦めする。
2019/06/23 12:17
根深い社会問題
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
「偽装請負」という言葉のイメージから中小企業の問題のように感じていました。しかし、キャノンや松下といった名門企業まで関わっていたと、不明ながら本書で知り、その闇の広がりと深さに驚きました。
偽装請負 格差社会の労働現場
2019/06/23 11:49
衝撃的なプロローグ
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto Rosenthal - この投稿者のレビュー一覧を見る
決して無能でもなく怠惰でもない若者が、ちょっとしたボタンのかけ違いで、劣悪な就労環境に身を投じることになる理不尽さ。そして、むしろ有能で勤勉で決断力があるが故に命を落とすことになってしまった悲運に胸を衝かれました。