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東京どこに住む? 住所格差と人生格差
著者 速水 健朗
かつての自由が丘は、今の蔵前、北千住、人形町、清澄白河? 家賃が高くても都心に住む人々はどんなメリットを見出しているのか? かつての人気の街はなぜ衰退したのか? どこに住むかの重要性がかつてなく高まっている時代の都市暮らしの最新ルールを探る。
東京どこに住む? 住所格差と人生格差
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東京どこに住む? 住所格差と人生格差
2016/12/03 14:15
西高東低、都市のコンパクト化、一極集中
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投稿者:melon - この投稿者のレビュー一覧を見る
西高東低という東京のイメージを何とか崩したいという著者の思いはわかるが、ちょっと強引ではなかろうかと。個人店のようなカフェがあり、東側も文化的であるといいたいのであろうが、西側のイメージの良さを覆すには無理がある。生活するにはスーパーやドラッグストアのような日用品を扱うお店、病院などの医療機関、さらに街の発展度でいえば大型ショッピングモールなどがあるとありがたいであろうが、カフェは必要なのだろうか。おしゃれや品格という点であればスタバやドトールの方がその指標に適しているように感じるのだが。
そもそも東側の良さはコスパの高さだろう。すなわち西側はイメージが良いので地価や家賃相場が高い。同じ通勤時間なら東側の方が安く生活できる。このことに東側のメリットがある。このこと自体は本書でも少し触れられている。具体的な引越し事例において、自由が丘よりも錦糸町の方が条件面では良いのに、西側のイメージに囚われて移動できない人というのが紹介されている。しかしその点は薄くしか論じられていないため、この本を読んだ感想として東側の良さをあまり感じられなかった。まとめると実際には、イメージこそが東西の差であり、むしろイメージの悪さによる割安感が東側の長所なのだ。そうすると(あり得ないと思うが)東側のイメージが良くなった場合、東側の良さは失われる結果となるだろう。
一方でコンパクトな都市が素晴らしいという意見には賛同する。東京は他の都市に比べて長距離通勤が多く、職住近接が実現されない。しかし、基本的には長時間の通勤や通勤時の混雑は不快要素に間違いなく、外国の都市における事例でもコンパクトな都市を実現したことが住みやすい都市という評価を得るのに貢献したという考察は、その限りにおいては間違いなく正しいといえるだろう。
そしてその点を踏まえ、湾岸部のタワマンがニュータウンと同様に高齢化・過疎化の憂き目にあうのではという可能性を否定する筆者。すなわちニュータウンは郊外だから失敗したのであって、湾岸部のタワマンは都心に近いから同じことにならないのだと筆者は主張する。そしてタワマンのおかげで東京都心部の住居が増え、いきすぎた地価高騰を防ぎ、都心部の価値を上げているという主張はまさしくその通りであると考える。
最後に本書では都市の良さ、近接性の重要さが指摘されている。経済学では集積の経済とよばれているが、実は都市は最適規模を超えて発展してしまうという特徴があるのだ。これが今東京の人口増加の減少ではないか。それは本書の最後の章を読むと仕方ないことだと納得してもらえるのではないだろうか。
個人的には田舎よりも都市の方が圧倒的に住みやすく、都市がますます発展していくことは悪いことだと思わない。むしろそれが当然の流れであり、強引に地方の過疎化した田舎に金をばら撒くのは間違っている。そこは本書に書かれている通りである。しかし東京だけが発展するのではなく、大阪や名古屋、さらには札幌や仙台、福岡などの地方の中心都市も発展していき、東京だけに集積しないほうが望ましいと思っている。