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剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む
著者 高橋 大輔
岩場が険しく明治まで未踏峰と思われていた剱岳。その山頂で見つかった古代の仏具を置いたのは誰か。登山道具もない時代にどのルートから登れたのか。そしてその目的は? 探検家の高橋大輔が、その答えにたどりつくまでの冒険ミステリー。
剱岳 線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む
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剱岳−線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む
2021/07/30 21:14
ファースト・クライマーは誰か
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:第一楽章 - この投稿者のレビュー一覧を見る
明治時代、まだ未踏峰と考えられていた剱岳に、日本地図の空白域を埋めるため、日本陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎率いる測量隊が命がけの登頂に臨み山頂にたどり着きます。ですが、そこで彼らは錫杖頭と鉄剣という古代の仏具を発見します。
「剱岳に最初に登ったのは誰なの」。新田次郎の『剱岳ー点の記』のテーマでもあったミステリーに探検家の高橋大輔が挑んだ一冊です。
山岳信仰を手がかりに、乏しい史料を一つ一つ積み重ね考察していくとともに、実際に高橋自身が剱岳に登ってみることで、どのルートから山頂にたどり着いたのかを考察していきます。
高橋は5W1Hの仮説をまず立てて、それを史料や地元の人たちの記憶、実際に剱岳を歩いての体験に照らして検証していくのですが、初めに立てた仮説にこだわるのではなく、整合しない点があれば仮説を更新していきます。その柔軟性が素晴らしいなと思いました。
剱岳−線の記 平安時代の初登頂ミステリーに挑む
2021/04/01 08:52
冒険家という職業
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の高橋大輔は冒険家で、本格的な登山家ではない。新田次郎の小説『剱岳 点の記』に触発され、測量官、柴崎の前に剱岳を征服したのは誰か、どんな人たちなのかを知りたいと考えた。登山家ではない点を生かして、それを知るすべを専門家に聞きながら調査する。
それにしても全く剱岳登山の経験がないという状態では、その本質に迫ることはできないと考えて、現在通常のルートと考えられている前剱、一服剱などから頂上に登ってみた。現在は難所といわれるカニの横バイ、縦バイなどには登山者を助ける仕掛けがされていることに気づく。たとえば、鎖がその典型であるが、奈良時代と考えられる当時には当然そんなものはない。
その結果、様々な検討を加えた。柴崎隊は剱沢から尾根を登って登頂に成功したわけであるが、それほどの難ルートを通る必然性はない。それではどこからか? 実際に登ってみた結果、これに間違いないと確信する。
それではどんな人々が登頂したのかと考え、残された錫杖等から判断すると、宗教上の理由であろうということで、修験者を候補に挙げる。もちろん、遠い過去の事例であるし、記録などを探そうにも残されていないと考える。
もちろん、これは高橋が自分流に考えた第一登山者に関することで、確たる根拠があるわけではない。とはいえ全く根拠のない絵空事とも言えない。全くもって凄まじいエネルギーである。冒険家という職業は、他の人々が実現できないことを成し遂げ、世間の注目を浴びるものと考えていたが、その根拠を自ら調べて世間に突きつけることまでやるとは思っていなかった。恐れ入りました。
現在、剱岳は山岳愛好家の間ではこれの登頂に成功したといえば、ある程度感心されて、登山者として認められる風潮がある。しかし、補助をする仕掛けがある現在のルートでさえ、その高度や環境に危険性が付きまとう。剱岳は難関峰という評価だけでなく、山岳界に多様な話題を提供してくれる山である。