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アルセーヌ=ルパン全集
著者 著:モーリス=ルブラン , 訳:長島良三
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ルパンの生い立ちの謎を語る「女王の首飾り」ほか、「アンベール夫人の金庫」「黒真珠」など初期の短編9作品をおさめた傑作集。
アルセーヌ=ルパン全集24 カリオストロの復讐
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アルセーヌ=ルパン全集 1 怪盗紳士ルパン
2012/04/03 18:40
ちょっと先入観で避け過ぎていたきらいがあります。これならロングセラーも納得。ホームズものの再読とともに、全巻読破チャレンジもしてみたいけれど、案外、私好みはこの巻だけだったりして・・・
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
全25巻、別巻5、計30冊にも及ぶルパン全集の第一巻。作品誕生の経緯は、竹西英夫が巻末で丁寧に解説しています。ルブランが生まれたのは1864年、そして最初のルパンもの「ルパン逮捕される」が発表されたのが1905年、といいますから決して若くして書かれた作品ではありません。以来、作家の意思には関係なく28年間、ルパンものを書くことになります。
といっても、ルブランが雑誌の発行人である友人のピエール=ラフィットから最初一篇を依頼されたのが1903年で、そのとき書きあがった「ルパン逮捕される」を読んで感心したラフィットが言ったのは「作品が十ばかりたまったら、毎月連載で掲載しよう」ということですから、1905年の雑誌発表時にはすでに10篇の作品が書きあがっていたことになります。
で、この本は最初の短篇集〈 ARS`ENE LUPIN;GENTLEMAN‐CAMBRIOLEUR 〉の全訳だそうです。ところが収められているのは9話。となると、1905年から次々に発表されたはずの10篇とこの9編の関係はどうなっているのだろう、と思います。やはり解説するときは、収められている全話についての初出を書くべきですし、せっかく触れたのですから、最初に書き溜められていた作品名まで記載されるのが筋ではないか、と私などは思うのですがいかがでしょう。
もうお馴染みの装丁は、故辰巳四郎の手になるもので、田中槇子のさし絵ともども定番化しています。新装改版もいいのですが、改版はともかく新装が必ずしもうまくいっていない例をよく見ます。この全集のようにしっかりしたものは、文庫全集を別にすればこのままのスタイルであと十年は行ける気がしますし、なにより大人が手にしていても全く違和感のない作りであること。ロングセラーのちからでしょう、これで1500円を切っているのですからお買い得です。
で、ルパンもの、私にとっては初読と言っていい気がします。いままで一冊だけ読んだことがありますが、タイトルも忘れているくらい印象が薄いものでした。で、偕成社版全集。娘たちと図書館に行くたびに気になっていたものですが、彼女たちがそこに行くこともなくなったいま、初めて一冊を手にする気になりました。奥付をみると1981年9月1日に1刷がでて、手元のものは2005年7月22日22刷、ほぼ年一刷は児童書としては理想のペースでしょう。カバー折り返しには、
*
神出鬼没の怪盗アルセーヌ・ルパンが 最初に盗みを働いたのは
国宝級のネックレス《女王の首飾り》で、その時彼は6歳だった―
アルセーヌ・ルパンの生いたちを語る「女王の首飾り」のほか
泥棒稼業を開始したばかりのころの失敗談を描いた「アンベール夫人の金庫」
イギリスの名探偵ホームズとはじめて出会う「おそかりしシャーロック・ホームズ」
アルセーヌ・ルパンの青春記ともいえる 初期の短編9編を収めた傑作集
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とあります。目次にしたがって各話を簡単に紹介すれば
・ルパン逮捕される:大西洋を横断する定期客船プロヴァンス号が出航して二日目、船に飛び込んできたのは「貴船一等船客室にアルセ-ヌ=ルパンあり。」という電報だった。13人の一等船客の誰がルパンか、そんな議論の最中にジャーランド夫人の宝石が盗まれた・・・
・獄中のアルセーヌ=ルパン:マラキ城に貴重な蒐集品を飾るナタン=カオルン男爵の下に舞い込んだ書留、ラ・サンテ刑務所という所書きを記した手紙には、男爵の愛蔵する油絵を数点盗み出すというルパンからの宣言が。刑務所で厳しい監視下にあるルパンはどうやって望みをかなえるのか・・・
・ルパンの脱獄:ラ・サンテ刑務所を抜け出しては、わざと街中で自分の正体を明かしては刑務所に舞い戻るアルセ-ヌ=ルパン。どうやって監視の目をかいくぐるのか、そして自ら刑務所に帰ってくる意図はどこにあるのか。裁判に連れてこられた男は、逮捕されたルパンではなかった・・・
・ふしぎな旅行者:汽車でルーアン駅に行き、そこから自動車で友人たちの家を訪問しようとしていたルパンは、混雑した車室を避けて女性と二人の車室での移動を選んだ。発車間際に飛び乗ってきた男は、ルパンたちの車室に踏み込んでくると・・・
・女王の首飾り:ドルー-スピーズ伯爵夫人の部屋から盗まれたのは、夫人が公の場で必ず身につける謎と伝説につつまれた有名なネックレス《女王の首飾り》だった。浅い眠りの夫人がいる、ドアにはかんぬきまでおろされた寝室から、どうやって誰が。アルセーヌ・ルパン誕生秘話・・・
・ハートの7:この手紙を読んだら、絶対に身動きをしてはならない。一晩中、指示に従った僕の耳に聞こえてきたのは家中をゆさぶり金づちであちこち叩く音。そして一夜が明けて、我慢が出来なくなったぼくが広間で見たのは、予想外の光景と一枚のトランプ、ハートの7・・・
・アンベール夫人の金庫:仕掛けた芝居で、まんまとリュドビック=アンベール氏のもとで働くことに成功したルパンだが、狙う金庫を見る機会はなかなか訪れない。資産家の夫妻は、いつも気持ちよくルパンに接するが・・・泥棒稼業を開始したばかりのころの失敗談
・黒真珠:真夜中に医者に往診を頼みに来た、といって建物に入り込んだルパンが向かったのは、医者の部屋ではなく、伯爵夫人の暮す六階。そして、一旦外の出たルパンは再び伯爵夫人の部屋に入り込み、黒真珠を探そうとしたが・・・
・おそかりしシャーロック=ホームズ:銀行家ジョルジュ=ドゥバンヌとその母に招かれてティベルメニル城に集まった人々が聞かされたのは、あすの午後四時にイギリスの名探偵ホームズがドゥバンヌの依頼でやってくるというものだった。城への秘密の通路を見つけるのは近辺に出没するルパンか、名探偵か・・・
解説 竹西英夫
となっています。ホームズ譚=推理小説、ルパン=冒険小説、と決めつけていたのですが、すくなくともこの巻についていえば、ホームズものくらいのミステリ度ではないでしょうか。楽しく読みました。残り24巻もこのレベルなら十分、読む価値はあるのですが果たしてどんなことやら。いつかゆっくり挑戦したいと思いますが、優先順位からいえば今のところクリスティ、クイーン、フランシス、レンデル、ロスマクといった連中の、かなりあとかなあ・・・
2024/08/20 00:01
謎解きだけでは終わらない事件の連続
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キュアリズム - この投稿者のレビュー一覧を見る
一部ネタバレ。
本巻冒頭でまずびっくりさせられる。
前巻で提示された暗号は
本巻の途中で解読されはするものの、
それだけで物語は終わらない。
話は思いがけない方向に展開してゆく。
全てを知った上で『813』を読み直すと
改めて作品を楽しめそうだ。
それにしても、
本作に限らないが、
初期のルパンものは
物語に連続性があるだけでなく、
けっこう悲惨な目に遭う話があるものだ。
思えば『奇岩城』もハッピーエンドではなかった。
第一次世界大戦中に発表された作品だけに
フランスとドイツをまたぐ
スケールの大きな話だが、
単なる推理ものを超えて
人間ドラマとして見ても
ルパンの辛さや苦しさが伝わってくる。
後半から結末にかけては
本当に驚きの連続だ。
2024/08/19 00:04
歴史もかかわる壮大なストーリー
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キュアリズム - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネタバレ含みます。
いろんな役者が登場しますが
なんといっても
イジドール・ボートルレの活躍に目が止まります。
彼の活躍が作品のほとんどなので
その他の役者は
そんなにたくさん登場させなくても
よかったのではないかと思うほど。
ルパンの作品は
1話1話完全に独立しているとはいえず、
以前の作品での事件や登場人物にも
時折触れられています。
本作も次に続く『813』と無関係ではないので
できればルパンは順番に読んでいくほうがいいですね。
本作の最後はなかなかの見もの。