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さくらのまち
著者 三秋縋
二度と戻らないつもりでいた桜の町に彼を引き戻したのは、一本の電話だった。
「高砂澄香が自殺しました」
澄香――それは彼の青春を彩る少女の名で、彼の心を欺いた少女の名で、彼の故郷を桜の町に変えてしまった少女の名だ。
澄香の死を確かめるべく桜の町に舞い戻った彼は、かつての澄香と瓜二つの分身と出会う。
あの頃と同じことが繰り返されようとしている、と彼は思う。
ただしあの頃と異なるのは、彼が欺く側で、彼女が欺かれる側だということだ。
人の「本当」が見えなくなった現代の、痛く、悲しい罪を描く、圧巻の青春ミステリー!
さくらのまち
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2024/09/26 12:16
さくら
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
フィジカルだけでなくメンタルの健康管理をも図ろうとする「手錠」に繋がれた偽りの世界。人間関係すべてを「サクラ」と疑い孤独を選びながら、それでも人の温もりを探してしまう、切なくも美しい心の深淵に迫ったミステリ。
嘘であってほしくないが、嘘でないという言葉を信じられる心理状態ではない。いっそ嘘だと受け入れて楽になりたい。そんな危うい思春期を襲う、想像力という名の妄想が生んだ残酷な独り善がりを切実に描いた作品。
自分を、そして他人を、どうにかして理解しようとする烏滸がましさと、知りたいという特別な感情が人を動かす貴重な原動力になっているという事実を、どう受け止めるのか。
人間関係、延いては人間であり続ける事に悩んでいるすべての人に読んでもらいたい一冊。絶望も、希望も、どちらも感じ取れ、どちらに自分の心が惹かれるかで、今の自分の危うさを図るバロメーターにも。発想がとても面白かった。