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リラと戦禍の風
著者 上田早夕里(著者)
第一次世界大戦下、両親を亡くしたポーランド人の少女リラは、不死の魔物である「伯爵」と館で暮らしていた。護衛のドイツ人兵士イェルクと共に、ヨーロッパ中で起こる悲劇を目の当たりにした彼女は、伯爵の力を借りて祖国を助ける計画を立てる。一方、イェルクもまた人類を救うため、大きな決断をする――。なぜ人は争いを繰り返し、生きるのか。愚かで愛おしい人類の歴史と業を描き切る、重量級エンターテインメント長編。
リラと戦禍の風
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リラと戦禍の風
2022/07/05 01:11
重かったけど、最後まで読んで良かった
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投稿者:S910 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第一次世界大戦時のドイツ軍兵士イェルクは、不死の魔物に魂を2つに分けられて戦争の最前線から遠ざかる代わりにポーランド人のリラという少女の護衛を任される。
無学な一兵士にすぎなかった青年が祖国に恨みを持つ敵国や、それぞれの信念を持って戦う人々を知り世界情勢を学び、戦争で次代をになう子供達が飢えて死んでいくのを憂えて自ら魔物になる道を選ぶ。
歴史の裏で、戦争の影で暗躍し、銃後の人々を見つめた青年と少女の物語。
話が重厚すぎる上にページ数も通常の文庫の倍くらいで読むのに時間がかかったけど、気持ちの良い主人公だった。
イェルクを魔物にした「伯爵」という不死の魔物も、ドラキュラ伯爵をモチーフにしながらも、正体はヴラド公ではなく公の忠臣だった男というのは新しい発想だった。
たまたまヒトラーについて学び直したところだったので、その前日譚に当たる第一次世界大戦のドイツが舞台だったのは興味深く、知識を補完する形で読めたのも良かった。
人のために人をやめて魔物になった主人公が、一切後悔せず歴史の裏側で細々と人の支援を続けていくという結末も戦争が題材の歴史ものにしては晴れやかな終わりで好きだなぁ。