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月花美人
著者 滝沢志郎(著者)
江戸時代後期、下総のとある藩。郷士の望月鞘音は内職で、傷の治療に使う「サヤネ紙」という製品を作っていた。ある時、幼馴染の紙問屋・我孫子壮介から、その改良を依頼される。町の女医者・佐倉虎峰がサヤネ紙を買っていくのだが、使い勝手が悪いと言っているらしい。しかしそれは「月役(月経)」の処置に使うためであった。穢らわしい用途にサヤネ紙を使われ、武士の名を貶められたと激怒する鞘音だったが、育てている姪が初潮を迎えたことを機に、女性が置かれている苦境とサヤネ紙の有用性を知り、改良を決意する。「女のシモで口に糊する」と馬鹿にされながらも、世の女性を「穢れ」の呪いから解放するために試行錯誤を続ける鞘音。ついに完成した製品を「月花美人」と名付け、販売に乗り出そうというとき、江戸へ参勤していた領主・高山重久が帰国する――。
月花美人
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2024/07/26 14:15
江戸時代の月経事情
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「月経」が穢れと疎まれていた江戸後期、姪とつましく暮らす武士の鞘音が、幼馴染の紙問屋と女医からの依頼で、生理用品の開発に乗り出す。剣鬼と畏れられた侍が、恥も偏見も切り捨てて無知な時代と戦った、前衛的な医療時代小説。
自分の知らない領分に踏み入る恐怖と、その恐れを隠すための忌避。武士にとっての矜持とは何か。武士であろうがなんであろうが、というより剣術こそ、先を…相手の心を読む力を必要とするもの。自分にとって何を通す事が矜持を守る事になるのか、家族や仲間と繋いだ絆から学んでいく成長の物語。
鞘音の凝り性はまさに江戸の研究者で、いつの時代も人知れぬ苦労の上に生活が成り立っている事を、沁み沁みと痛感させられた。今ある当たり前に感じるものも、大切にしていきたい。
性別云々がナーバスな時代だけど、男性と10代の方に強くオススメしたい作品。