- みんなの評価
71件
チェーザレ
「私の母は娼婦――そして父は怪物だ」15世紀のイタリア、ルネッサンス時代。現代政治学の祖・マキァヴェッリに「理想の君主」とまで謳われながら、歴史の闇に葬られた英雄チェザーレ・ボルジア。争いに向かおうとする不穏な時代に、全ヨーロッパ統一という野望を抱いた男の戦いの物語。本邦未訳『サチェルドーテ版チェーザレ・ボルジア伝』(イタリア語原書)を精査し惣領冬実が描く、華麗なるルネッサンス絵巻!
チェーザレ 破壊の創造者(13)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
チェーザレ 1 破壊の創造者 (モーニングKCDX)
2007/08/12 00:15
私の母は娼婦―― そして父は怪物だ
22人中、22人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
惣領冬実さんの描くチェーザレ・ボルジアと聞いて、これは読まなきゃ!と思っていました。
チェーザレ・ボルジアと言えば、ルネッサンス期に小国に分裂していたイタリア半島を統一しようとし、志半ばにして斃れた青年。婚姻を許されない法王の息子、自身の野心のため妹ルクレツィアに度々の政略結婚を強いた冷徹さ、反面そのルクレツィアと近親相姦関係にあったという噂や、彼に影のようにつき従ったという暗殺者ドン・ミケロットの存在、政敵を次々に暗殺したというボルジア家の毒薬カンタレラ、レオナルド・ダ・ヴィンチとの親交、反抗を許さない冷酷さと、『君主論』の著者マキャベリに「かつてある人物の中に、神がイタリアの贖罪を命じた一筋の光が射したように見えた。だが残念ながら、彼は活動の絶頂で運命から見放されてしまった」と言わしめる魅力を兼ね備えた人物……などなど、様々な噂と謎に包まれた魅力的な人物です。
作者の惣領冬実さんは外国の文献などもかなり綿密にあたり、彼がどう育ち、何を思い、何を目指した人間なのかというところまで、できる限り忠実なチェーザレ伝を作ろうとしているように伝わってきます。
その分惣領冬実さんの代表作とも言える『3 THRREE』や『MARS』などのようなドラマチックさにやや欠ける面もありますし(まあこれらは少女漫画なので)、そこがちょっと物足りない気もしますが、そこが却ってクールに仕上がっていて引き込まれます。
うまいのはアンジェロという青年を置いたこと。メディチ家の恩恵でピサの大学に入学しながら、チェーザレの魅力に惹かれていく、世間知らずながらも天才肌の彼を視点に持ってきたことで、お話がかなり親しみやすくなってきています。
それにこの時代は、ルネッサンスだけあって他にも魅力的な人物が沢山いるのですよ。
まだ話としてしか出てこない(出てくるかどうかも不明ながら)メディチ家のロレンツォ・イル・マニフィコ、ミケランジェロ、ラファエロ、サヴォナローラ、マキャベリ、カテリーナ・スフォルツァ…
今後歴史上の重要人物たちが、どのような描かれ方で登場するのか。それを考えるのも楽しいです。
チェーザレ 6 破壊の創造者 (モーニングKCDX)
2009/11/09 03:37
お前は死なない。死なせはしない。
16人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:マタタビ - この投稿者のレビュー一覧を見る
2009年11月現在、「チェーザレ 破壊の創造者」は7巻まで刊行されている。
その7巻の中で、この6巻が一番好きだ。
中世のイタリアが舞台と言いたいところだが、まだ「イタリア」という国家は存在してなかった。イタリア半島統一前の、ブーツの形の土地の話だ。
主人公はかのチェーザレ、ではあるが、アンジェロという真面目がとりえの平凡な少年から見たチェーザレ・ボルジア、と言った方が良いかもしれない。
天才と凡才の友情(らしきもの)が不器用に育っていくさまは、何とも微笑ましい。
その天才が平凡な少年に「お前は死なない。死なせはしない。」なんて言っちゃうのだ。
天才の方の少年だってまだ十代のくせに、カッコいいだけでなく、中々のおませさんでもある。
より良い暮らしを手に入れる為の仲間の裏切り、
仲間だと思っていたら敵だった・・・と思ったら仲間だったと思ったらやっぱり敵だった、みたいな相手、
敵か味方か区別が付かないというか、まだどっちになろうか迷ってる立場の人、
この状況を切り抜けるために避けて通れない局面、
新しい出会いと永遠の別れ、
少年が大人になる階段を一歩一歩登って行く、というのはきっとこうゆうことを言うのだろうと思った。
8巻がいつ出るのか、楽しみで仕方がない。
日本の本には新刊ならば大体オビが付いているが、そのオビもまたこの本の楽しみの一つです。
チェーザレ 11 破壊の創造者 (モーニングKCDX)
2015/01/27 05:07
ルクレツィアが可愛かった
11人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アランチャチョコラータ - この投稿者のレビュー一覧を見る
久しぶりの新刊。物語が前進し始める。
小さい頃から、惣領冬実という少女漫画家を知っていた。
絵柄が嫌いなわけでは決してなかったのに、一度も読んだことがなかった。
少女漫画にしては絵が重い。
少女漫画にしては絵が何だか説教臭い。
そんなイメージしかなかったので、本を入手するということ自体が無いまま大人になった。
大人になる少し前に、塩野七生という作家の本と出会い、チェーザレ・ボルジアという人を知った。
そして正真正銘の大人になってから、惣領冬実の「チェーザレ」と出会った。
あんなに重いと感じていた絵は、重厚なものに感じられ、
あんなに説教臭いと思っていた絵は、説得力を持ってこちらに訴えかけてきた。
私が変わった為ではない。
惣領冬実の書く対象が少女漫画から別の何かに変わった為だ。
これ。これですよ。待ってたんですよ。
チェーザレは31歳で没する。
1巻の時点で既に人生の半分を生きてしまっている。
これから結婚をし、娘をもうけ、でも何故かそんなことそっちのけで、人生の目的に向かってひたすら突き進んでいく。
アンジェロという少年の目線を通して語られていることが多いので、たまに「主人公どっちだっけ」とか思ってしまうが、
タイトルが「チェーザレ」である以上、きっとチェーザレが主人公だろう。
チェーザレの人生が最後まできちんと描かれるのか、それとも道半ばで最終回を迎えるのか、どっちだろうか。
コミックス派の私には長いインターバルだが、12巻が楽しみだ。