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55件
ジパング
著者 かわぐちかいじ(著)
200X年のイージス艦が、1942年にタイムスリップしたならば――。“来(きた)る”太平洋戦争が、その先の“みらい”が激震する!! ――海上自衛隊所属、最新鋭イージス艦「みらい」、謎の暴風雨に遭遇(そうぐう)。そしてすべての僚艦(りょうかん)、失踪(ロスト)……。やがて、1942年・ミッドウェー海戦域のド真ん中に“出現”した「みらい」は、撃墜(げきつい)された海軍将校を救助。そして、「歴史」は塗り替えられる――!! 講談社漫画賞受賞。圧倒的なイマジネーションで描き出される、歴史横断超大作!
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ジパング(43)
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ジパング 1 (モーニングKC)
2005/06/17 23:38
もしも最高級のイージス艦が60年前にあったら
17人中、17人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐伯洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
海自の持つイージスシステム搭載艦「こんごう」と、現在でも世界最大の大戦艦「大和」が戦ったらどちらが勝つか。あっという間に大和は沈む。超長距離戦を得意とするイージス艦ならば、大和が戦う前にピンポイントのトマホークで(現在の海自にはない)沈むことになる。
そもそも、イージス艦の「イージス」とは神の盾のことである。日本も盾のつもりでアメリカからイージスシステムを買った。しかし、イージス艦の力は尋常ではない。リーサルウェポンとでもいうべき極上の剣でもある。海自の持つイージス艦3隻と中国海軍が戦えば、あっという間に海自が勝つ。現在も日本海軍は、アメリカについで世界2番目の精強を誇る。
そんなイージス艦が太平洋戦争の最中にワープしたのが、この「ジパング」である。一見、話が単純な思いつきで、「戦国自衛隊みたいじゃないか」と思うかもしれない。たしかに、着想はそうかもしれない。しかし、その後の話は、さすが元海自だけあって、武器や歴史の話は精緻である。
中には、山本五十六司令長官や石原莞爾、米内光正など実在の人物が実際の顔に近い形で登場している。完全に、史実どおりの人物と歴史事件のなかにこのイージス艦「みらい」は飛び込んだ。
最初の頃は、あまりに平和主義過ぎる乗組員のせいで話がつまらないと思っていたのだが、最近いよいよ面白くなってきた。
私は、いつも迷う。私は、同じ日本人が10万も原爆で死んだことが我慢ならないし、なんとしても原爆を投下したかったトルーマンやルーズベルトが許せない。
サイパンで玉砕した5万にも及ぶ将兵と民間日本人、ガダルガナルで餓死した2万人・・命を落とした父なる将校たちに感謝しても仕切れない。これまで何度にもわたり、合掌し心で泣いてきた。
太平洋戦争でアメリカを粉砕していたら何とも報われるだろうと思う。しかし、本当に大日本帝国は勝って良かったのかとも思う。これは、日本なんか負けちまえばよいという反日的考え方とは180度異なる。
負けなければ、昭和天皇を押しのけ国政を歪曲していたアホ軍人を退場させることが出来なかった結果、やがて日本はソ連に占領されていたかもしれない。そして、北日本と南日本というドイツのような分断統治になっていたかもしれない。負けた方が、良かったのか・・答えはでない。
本書の主人公のひとり草加は、もっと有利な条件での早期講和を実現すべく、イージス艦「みらい」をもその構想に組み込み、世界を動き回る。それが、最も妥当な結論だろう。勝ちすぎず、負けすぎず、有利に講和する。トルーマンがそれを許すかは別として、発想として、おそらく私も同じに動くだろう。勝ちすぎる必要はない。
実に、バランスがいいのがこの「ジパング」だ。イージス艦「みらい」が沈めば、この話は終わりだ。なんだか、この一隻が沈んだら地球は滅亡だと手に汗握った(放映当時生まれていなかったが)「宇宙戦艦ヤマト」を思い出す。期待できる読み応えのあるシリーズであり、お勧めです。
ジパング 19 (モーニングKC)
2010/01/10 11:43
歴史を変えることの重み
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
半村良の『戦国自衛隊』など、現代の軍隊が過去にタイムスリップし、その圧倒的なテクノロジーの優越性によって活躍するという話は多い。
また高木彬光『連合艦隊ついに勝つ』など、太平洋戦争を素材とした架空戦記(もし日本軍があの時、このように動いていたら、戦局はどうなったか?)も枚挙に暇がない。
ただ、これらの作品の多くが「歴史変革の可能性」という好奇心に基づく軍事シミュレーション、有り体に言えば知的ゲームとしての性格を持つのに対し、『ジパング』では未来を知る(知った)者たち個々人の苦悩と煩悶、そして覚悟が物語の核心となっている点が画期的である。神ならぬ人間が、偶然手にした超越的立場に基づき、歴史を弄くり、多くの人々の運命を変えてしまうことは、果たして許されるのか。『沈黙の艦隊』もそうだが、かわぐちかいじは軍事テクノロジーを素材としつつも、常に人間を描いている。
イージス艦「みらい」で得た未来のテクノロジーと知識を利用して、太平洋戦争を日本側に有利に導く草加拓海少佐の行動は、タイムスリップもの・架空戦記ものの常道であるが、草加を救った角松洋介二等海佐は草加の「後出しジャンケン」に怒り、日米両軍の人命救助という形で歴史に関与しつつも、草加による大胆な歴史改変の動きを阻もうとする。菊地雅行三佐が草加に同調し「みらい」クーデターを起こすことで、いよいよ物語は急展開する。本巻では原爆製造をめぐる駆け引きが繰り広げられる。
草加・角松・菊地・石原完爾・米内光政らがそれぞれの信念に基づいて動き、彼らの思惑が複雑に絡み合う。既存のif歴史ものにありがちな「日本側が一致団結して連合国軍に当たり、連戦連勝する」という単純なストーリーに陥ることなく、実にスリリングだ。
2018/05/13 19:47
ジパング 1
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:どいさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かわぐちかいじの代表作。始まりこそ、イージス艦が過去にタイムスリップするという突拍子もない展開ですが、第2次世界大戦の海軍を中心に描き、太平洋戦争、戦後日本の意味を問う大作。今だからこそ読んで欲しいシリーズ。