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9件
BLAME!
著者 弐瓶勉(著)
極限まで発達したインターネット世界。かつて、そこは『超構造体』に内蔵されたシステム(BIOS)上で起動する『統治局』(OS)が、正規アクセスする人間の要望を完璧に叶えていた理想世界だった。だが、破局が起こり人々はアクセス権を失い、『セーフガード』(ウイルスチェッカー)が容赦なく『駆除系』で不正規アクセス者を排除する、危険な世界へと変容してしまう。探索者・霧亥(キリイ)は『統治局』への再アクセスを可能にするために何千フロアも超構造体を放浪し、『感染前』の『ネット端末遺伝子』を求める。
BLAME!(10)
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BLAME! 9
2002/12/25 23:46
真っ黒な本
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近ますます凄味を増して目が離せない、SFコミックの傑作の最新
巻だ。
まずは前巻につづき、主人公霧亥が怖い! ますます怖い(^◇^;)。
そして霧亥の歩みと共にさまざまな顔を見せる都市構造体の姿は、
ますます磨きがかかってすばらしい。じっくり眺めてしまおう。
奇妙な相棒を得たものの、霧亥はふたたび1人に戻り(?)、物語は1
巻の雰囲気に戻った感じだ。そして出会う、さまざまな存在たち、
さまざまな思い……
また、暗闇の使い方や空間の描き方もすばらしいのだ。闇また闇、
そこをわずかに照らし出す光。闇の中にポツンと輝くディスプレイ。
暗闇の中に霧亥の顔だけがボウッと浮かぶ。あるいは、途方もなく
巨大な施設の中を孤独に歩む霧亥の小さな姿。息詰まるような狭い
空間から途轍もない大空洞へと息を呑むような大転換。SF的風景を、
これでもかと見せてくれる。
中でも、この巻の最終話「LOG.57 観測者」は、一種詩情さえ漂わ
せる凄味のある物語であり絵である。
次巻にますます期待がかかる、目が離せないシリーズだ。
BLAME! 1
2002/01/06 03:51
廃墟を独りさまよう
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
第1巻では、後にパートナーとなるシボはまだ登場しない。霧亥は空漠とした廃墟世界をひとりさまよう。
延々と連なる異様な廃墟の風景、動くもののない空疎な空間、そこここで互いに孤立して暮らす人々。そして突如として爆発する問答無用のバイオレンス。霧亥の銃、重力子放射線射出装置のほとんどナンセンスなまでの桁違いの破壊力。
霧亥の最小限の目的は示されるものの、なにがどうなっているのかほとんど不明。人間的なところがまるで感じられない主人公は極めて異様。外見こそ普通の人間のように見えるが、じつはかなり異質な存在であることが端々に描かれる。これらの謎が気になり出したら、それはもうこの作品に魅了されているということだ。
ちなみに、LOG2において、霧亥がどこからか見つけてきた本を開いて一節を読み上げるところがあるが、あれはジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短篇「雪はとけた、雪は消えた」の冒頭である。そしてその読み上げを聞いている両腕のない女性と妙に知的な犬(?)は、その当の「雪はとけた、雪は消えた」に登場するキャラクターに由来する。不思議なメタ構造である。ところどころにあるこういう遊びが楽しい。
BLAME! 7
2002/01/26 05:43
非公式階層
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る
新たな階層、新たな装備、新たな敵に新たな仲間。舞台装置を一新し、新たな物語が始まる。今度のパートは「非公式階層篇」とでも呼ぶべきか。
霧亥たちは、暴走した建設者が適当に増設したという、非公式階層に至る。そこでは、2人の臨時セーフガードが、すでに250年以上に渡って、侵入した珪素生物たちとのにらみ合いを続けていた……。
新キャラ、ドモチェフスキーとイコは、ほとんどこの作品の世界観を損なってしまうほどの今までにない個性の持ち主だ。ユニークなデコボココンビである。珪素生物たちも、今まで出てきた連中とは様子が違う。
弐瓶氏はこれまでにも絵柄を変えてきたが、この巻に入ったあたりから、また変わったように思う。最近は、何と云っても暗闇の描き方がすばらしい。闇に沈むエレベーター内部の様子や、非公式階層から放逐された霧亥がひたすら歩む場面など、暗闇と、その暗闇をわずかに照らし出す光の表現にはほれぼれしてしまう。ひと皮むけた感じだ。