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52件
残酷な神が支配する
著者 萩尾 望都
友達に恵まれ、ボランティアと勉強に励む幸せな生活を送っていたジェルミの日常は、ある男との出会いで一変する。母・サンドラの婚約者で大金持ちの英国紳士・グレッグ。ジェルミの苦痛に満ちた地獄の日々が始まった
残酷な神が支配する 10
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残酷な神が支配する 1
2007/09/23 21:45
魂の対話
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトウジョン - この投稿者のレビュー一覧を見る
二日かけて一気読みしたところ、すっかり頭が『残酷』モードに陥ってしまった。長編作品を読んだ後にはよくあることだが、これだけトリップしてしまったのは単に話の長さだけではなく、強力な磁場を持っているからだと思う。物語、それ自体が。
「義父からの性的暴力に身も心も破壊された主人公と、彼を立ち直らせようとする義兄との破壊と再生の物語」というストーリーは、複雑なようで簡潔でもある。間違ってはいないと思うが、こんな文章ではこの作品の何百分の一も表現できた気がしない。萩尾望都は希代のストーリーテラーと言われるけれども、この作品の最たるところは、ストーリーよりもむしろキャラクターの内面表現だろう。
ショッキングな内容の通り暴力表現も痛々しい限りだけれど、でもそれよりも際立った描写だったのは、主人公(と義兄)の心理表現だ。
時空を超え、空間を超え、人体の構造もバラバラのピースに分解されて、歪められ、引き伸ばされて、そしてまた再構築される。
何が現実で何が夢なのか、その境すらも曖昧な内面表現。すでにあらゆる表現が試されたと思っていた「漫画」というジャンルで、全く見たことのない表現方法を見た!と思わされてしまった。
しつこい程に繰り返される主人公と義兄の対話。
読んでいる側としては「もう充分分かり合いすぎるくらい分かり合ってるんじゃないか?何故それ以上を求める?」とも思う程だけれど、二人は決して妥協の結果の穏やかさを求めようとはしない。
言葉で、体で、精神で対話をし続ける。どれほど傷ついても、後悔しても。むしろ後悔を積み重ねるほどに、新たな理解を得ようとしていく。その姿は痛々しいほどに脆く、真摯に映る。
嘘や偽り、気遣いすらもかなぐり捨ててぶつかりあえる関係というのは、きっととても強くて怖い関係だろう。馴れ合いや妥協に浸りきった自分にはとても出来はしない。でもだからこそ憧れる。
むき出しの魂同士の衝突というのは、まるで見てはならないものを見てしまったような畏怖を感じ、だからこそ見ずにはいられないものなのだ。
残酷な神が支配する 1
2005/04/16 10:11
これ、すごいです
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
これ、すごいです。
マンガでここまで描けるなんて。
マンガってどうしても低俗なもの、小説なんかと比べると一段低いものに見られがち。マンガを読まない人、あまり読んだことのない人に限ってそういう見方をする人が多い。そんな人にこの『残酷な神が支配する』を見せて声を大にして言いたい。マンガはここまできたんだぞ、ここまで描けるんだぞ、と。
この愛と憎悪と絶望、そして再生の物語に多言は無用。読んで驚き震えるべし。
残酷な神が支配する 10
2006/05/03 09:23
ジェルミもイアンも無視してあえてナディアさーんと叫ぶ
5人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ISH - この投稿者のレビュー一覧を見る
深遠な話は他の人に任せておいて、だ。
「萩尾望都キャラクターの中で誰が好き」と問われ困った。
話は面白いが別にキャラ萌えしない。
強いてあげればマージョリー。イアンが子猫ちゃんと言うのも分かる。バルバラ異界のライカも。
世間知らず怖い物知らずなお嬢様の可愛いワガママさ。古き良き時代のオンナノコさ。アバズレのそれとは天と地の差だ。
もし男だったらあの「私の言うことなんでもきいてくれるのv(ウィンク)」にうっとりすると思う。
しかしあえて「ナディアさんが好きだ」と言おう。何故なら…ヒサンだからだ。
妹マージョリーとも甲乙つけがたい美人。穏やかで優しく気品もありちゃんとモテてる。
それなのに「ボランティア恋愛」。いつも「癒されたよありがとうポイ!」だったらしい。
そして今度の恋敵は魔性のあれ!もう泣くしかありません。
私はキレイな男が嫌いです。女の敵だからです。つきあったところで…自分よりキレイな男など隣にいて欲しくない。
ちなみにイアンの方は「何?その男はハンサムで金持ちでモテモテで頭が良くてボクシングが強いのか?チクショー!」と男に嫌われまくってます。
…それだけ彼らは魅力的ということなので怒らないで下さい。好きになっても敵に回しても凄いことになります、と。
ナディアさんもうイアンがどうこうじゃなく女としてボロボロです。
(何故いつもいつもこうなの…ああ!きっと性格が暗いからよ!)
…突然キャラを変えて周囲に呆れられるナディアさん(ToT)
ジェルミは「みんなの痛みは少しづつ自分の物に似ている」と気づいていくが…周りの人もやっぱり同じことを呟いていたのかも知れない。
「いい子にしてて何も与えないくせに罠をはって人が来るのを待っている!」と彼女はジェルミに言うが…そこまで判るのは同類だから?
あの人は…いい子にしてひたすら与え『どっか行って構いませんよ』とまで言って…?何をしたかったの?
「なんにもいらないの!」と言うことで「まあいい子たくさんあげましょう!」という戦法を使う人だったのか?
でも…
ナディア「ヨルクと付き合える人なんてボランティアくらいだわ!」
マージョリー「あらナディアボランティア好きじゃない」
らしくもないしやりたくもないことをして笑われる良い子の図(ToT)
母親のこと知って「これからはうまく行きそう!」とロマンに浸っても結局ただ「相性が悪い」でダメだったし。いびつでもらしくないよりいいんじゃない?ということですか?
萩尾先生「ヨルクは実はイアンより美形だったというエピソードをつけようかなと思った」らしい…。
ええ…なんかもうそうしてやってくださいと言いたくなりますね。けど…「ヨルクのボケっぷりかわいいじゃん美形になったら嫌」と思うのですが?
重苦しいストーリーの中の唯一の微笑ましい光景ということで。
自サイトより加筆修正