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2件
インディゴ・ブルー
著者 やまじえびね
求めずにいられない 肌の指の舌の 新しい感触を――。小説家のルツは、カフェで知り合った美術雑誌の編集者・環に興味を持つ。再びふたりが出会ったとき、環はルツのくちびるを奪っていった。担当編集者で恋人の龍二との関係も続けるルツの決断は…? 異性の恋人、同性の想い人との恋模様を描いた大人のラヴストーリー。
インディゴ・ブルー
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インディゴ・ブルー (FEELコミックス)
2003/01/08 12:43
セクシュアリティに名前はつけられない
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:爪子姫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
やまじえびねの、女性の同性愛を題材にした長篇には、先に『LOVE MY LIFE』があるが、この『インディゴ・ブルー』はそれに続く作品である。
前作が、設定やストーリー進行、絵の傾向などの面で、ハッピーなメルヘンの形をとっているのに対し、『インディゴ・ブルー』はより現実に近いドラマ仕立ての作品となっている。絵も、この作者特有の、少ない線で画面の空白を生かしながら美しく構成するタッチはそのままに、より劇画に近い味わいがある。
ストーリーをみてみよう。
主人公の中川留都は、女性に恋をした経験を心に秘めている新進小説家。編集者の恋人、乾龍二がいて、仕事の上でも性生活の上でもうまくいっているように見える。友人の紹介で矢野環に出会い、心を動かされる。「行動を起こすときがきたのかもしれない」。環も留津に一目惚れだった。留都は長篇の連載を始める。主人公は、男性の恋人と女性の思い人の間で揺れ動く女性。現実の留都と龍二と環の関係に似ている。執筆と並行して留都は、龍二との関係を続けながら、環とつきあいはじめる。それぞれの存在を隠して。ある日偶然がもとで龍二の存在が環に知られ、環は離れていく。悩み苦しんだ末、留都は決断する……。
全編を通して流れるのは、人と人とが互いに心を開いたときに生まれる機微、といえよう。人が出会い、互いの生き方や考え方、ひいては存在そのものと深くかかわり合う、短く言えば恋愛の楽しみと苦しみのエッセンス、である。男と女の仲かそうでないかは、社会がもしくは道徳が押し付けるマイナス要因として外からやってくる。本人達にとっては誰を愛し誰を選ぶかが大切なのだ。現に龍二は魅力的な男性として描かれており、さらに留都の本心を知った龍二の苦悩も読むものに痛いほどよく伝わってくる。そして、留都は、龍二とのセックスを自分の中で否定しないのである。この状況だけ見れば、留都はバイセクシュアルと名づけることができるようにも思えるが、そういう呼び方はなじまない。
環は「私はレズビアンという生き方を選んだ」と明言している。その、レズビアンという生き方については、特に享楽的な面は、描かれることはない。この文章を書いている私は、同性愛の人たちの恋愛ってどういうものだろうという興味本位で読み始めた部分がないでもなかったのだが、人間について、愛について深く考えさせられて、少々手痛いしっぺ返しをくらった。
これは、留都が「ありのままでいられる自分を取り戻すため」の経験を描いた、恋愛の物語である。恋愛に同性愛も異性愛もない、全ての人がそれを受け入れる時代はまだ来ていないが、この物語のような出来事は、ごく近い将来身近に起こるかもしれないと思った。いや、私が知らないだけで、既にこういう生き方や出来事は身近にあるのかもしれない。
2023/04/20 05:10
ジェンダーテーマをめぐる冒険
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たこい - この投稿者のレビュー一覧を見る
同じレズビアンテーマでありながら、多幸感が基本トーンだった『LOVE MY LIFE』の裏返しのような重い物語。
このテーマ、物語をさらっと読めてしまう画風、作風で形にできるのが作家(マンガ家)としての力だろう。
あとがきでは、先に描いた作品の手応えから、次に進んでいこうとする決意が感じられてその点にも好感。『女の子がいる場所は』でやまじえびねを知った方には、『LOVE MY LIFE』から発表順に読んでみることをオススメしてもいいかもしれない。
【期間限定 試し読み増量版 閲覧期限2021年11月8日】インディゴ・ブルー
2021/11/28 14:14
絵がきれい
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やさし - この投稿者のレビュー一覧を見る
読んでみてまず線がきれいな絵だなと思いました。恋人がいても気になる人がいる、本当に好きな人はその人なのに、本当に思う人とは恋愛できない…その苦い感じは絵柄とも相まってとてもいいと思うのですが、どうしても言葉遣いに違和感がありました。洋画の字幕みたいな喋り方。雰囲気があっていいのかもしれないけど。