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12件
BLACK TIGER ブラックティガー
著者 秋本治(著者)
【雑誌掲載時の著者カラー原画を収録したリマスター版!】19世紀、南北戦争直後のアメリカ――。無法者を駆逐するために合衆国政府は賞金稼ぎ達に「殺しの許可証(ライセンス)」を与えた…。その一人が、女ガンマン「BLACK TIGER(ブラック・ティガー)」!! 謎の凶悪兵器を備えた闇の敵に立ち向かう、空前のガンアクションが開幕――!!
BLACK TIGER ブラックティガー 11
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BLACK TIGER 11 (ヤングジャンプコミックスGJ)
2023/04/29 10:17
ダンピングブラッド
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
百年の間、世界中で、何度も、戦争があった。
米国は英国から独立する。
薩摩藩は英国に敗れ、長州藩は四国艦隊に降伏した。
だが、最強国の米国は、内戦が終結しても、政情不安で、大統領が殺される。
ブラックティガーは、米国政府の指示に従い、世界各地で、人を殺す。
ブラックティガーの主要な敵は旧南軍の残党だが、幕末の日本でも、彼女は戦った。
戦乱は富を生む。
彼女の任務は一介の賞金稼ぎの仕事の範疇を超えており、その報酬の額は桁違いである。
弱体化した旧南軍の頼みの綱は、一人の科学者が主導して開発された、数々の新型兵器だ。
ガンマンの独壇場は陸上だが、投入される新型兵器の特性に応じて、空中や海上でも、ブラックティガーは死力を尽くし、反乱分子の一掃を目指す。
火薬が発明されて以来、人殺しに要する労力と時間は、格段に縮小した。
子供でも、銃を手にすれば、大人を殺せる。
大人を殺した子が成長すると、今度は、子供から、命を狙われる。
大人を殺そうとする子供を、一体、誰が救えるのか。
ブラックティガーはコードネームであり、彼女にも本名がある。
彼女がブラックティガーになってから、本名で呼ばれる機会が、めっきり減った。
名前の一部に黒が含まれる賞金稼ぎの仲間の中には、ブラックティガーと対決する者がいる。
ブラックティガーである限り、平穏な生活を、彼女は望めない。
それでも、死地へ赴くのが、ブラックティガーだ。
歴史的な事実として、南北戦争以後、米国で内戦は勃発しておらず、旧南軍の残党は壊滅したと考えられるものの、執拗に、国土と国民を疲弊させて、悪足掻きをした旧南軍の意図は不明である。
ブラックティガーの功績や生死についても、後世に伝わっておらず、確かな事は分らない。
BLACK TIGER 10
2022/09/28 17:31
人命の値踏み
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投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争は、町のみならず、人心をも、荒廃させる。
根っからの悪人は、平時でも道を踏み外し、非道な行いを繰り返すが、戦時下では、善良な市民が殺人行為を強いられ、用済みになれば、呆気無く、命を奪われる。
だが、旧南軍の残党と戦うブラックティガーは、自らの意志で、南北戦争に加担した。
けれども、南部の人々を十把一絡げに敵視しているわけではないらしく、彼女は、南部の出身者に、何度も、手を差し伸べる。
第十巻に収録された話の大半は、戦災の諸相を描くものであり、戦中のみならず、戦後も緩和されない、人民の精神的な苦痛を、北軍に身を寄せたブラックティガーの目線で、読者は知る事となる。
南北アメリカ大陸には、ヨーロッパの各地から移民が押し寄せた。
日本人も移住した。
残念ながら、大多数が勤勉な日本人の中にも、ブラックティガーの身柄を、旧南軍に引き渡そうとする打算的な男が含まれていた。
現在、その男は、ブラックティガーに扱き使われており、中々、甘い汁を吸えないのだが、ブラックティガーと行動を共にする事により、異郷の者には知り得ないアメリカ社会の暗部や裏面を学ぶ機会が、図らずも、与えられている。
米国も、他国から、学んでいる最中だ。
同時代の欧州各国の影響が、社会の至る所に散見される。
音楽も、文学も、舶来のものである。
しかし、銃だけは自前の品だ。
過去に、大統領が暗殺されても、自由の国では、未だに、銃は規制されない。
銃がなければ殺される。
銃があっても殺される。
盗みと殺しは新世界の華。
BLACK TIGER 9 (ヤングジャンプコミックスGJ)
2022/03/26 10:02
生類の理性
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投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
死刑になるのが怖くては、悪人は務まらない。
だが、捕縛され、裁判に掛けられて、極刑が下される寸前まで、悪足掻きするのが、悪人である。
一度、殺人罪を犯せば、病み付きになるらしく、仲間を裏切り、善良な市民に手を掛けるのは、悪人としては真っ当な生き方なのであろう。
畳の無い国の悪党は、ベッドの上で死のうが、獄中で死のうが、野垂れ死にしようが、大差ないと考えるのであろうか、ブラックティガーと対峙する咎人共は、罪を重ねる事を躊躇せず、全米各地で被害者が絶えない。
けれでも、その死に様は醜いものだ。
相手が女だからと言って、ブラックティガーを見下し、その実力を見誤って、返り討ちに遭う。
死なない程度に痛めつけられて、縛に就く者も、稀にはいるものの、懲りずに、反撃の機会を窺い、自由の身となるべくもがき続ける人非人の、何と数の多い事か。
もちろん、男を手玉に取る女の犯罪者もいる。
女性の社会進出が始まる要因には、腕力と財力に物を言わせて、理不尽な仕打ちをする男性への抵抗と、それに伴う自立心の萌芽が考えられるが、男性からの妨害行為を防ぐのには、男性的な行動原理に基づかなくてはならないのが、悩ましい。
銃を手放せないブラックティガーは、男に対して、容赦が無い。
それでも、ブラックティガーに対して、欲情する痴れ者がいる。
少年は紳士になれる。
少女は淑女になれる。
食物連鎖の頂点に立つ成人男性が、その地位から脱落する時に感じる恐怖は、死刑に処される時よりも、強く、耐え難いものである、と信じたい。