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31件
群青にサイレン
著者 桃栗みかん(著者)
修二と空はイトコ同士。かつて空のせいで野球をやめた修二は、高校の入学式で空と再会。体の小さな空を見て、「今なら勝てる」と思った修二は野球部に入部することに…。
群青にサイレン 12
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2020/12/08 02:20
悔しい気持ち半分、感謝の気持ち半分の最終巻でした
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る
まだまだ続いてくれると疑ってみたことすらばかったこの作品、新刊の通知を見て即ポチリ、読了後、ショックのあまりレビューができませんでした…まさかの完結巻…。
漠然とですが、この物語は修二だけでなく、空の成長、そして後半辺りからは角ヶ谷くんも重要な人物となってきたので、読者は彼ら3人の成長を見届けて終わる=3年の甲子園でエンドマークがつくと思っていました。
勝手な憶測ですが…大人の事情、なのでしょうか…とても、とてもとても残念です。
とは言え、限られたページ数の中で、見事に彼らの成長を描いてくれていて、特に前半は例えでなく泣けてしまい、途中で読むのをやめざるを得なくなるくらいでした。
日を空けて、1巻から読み直しました。
角ヶ谷くんが修二に声を掛けた当初の話を読んだときに感じるものが、12巻の前半を読んだ後と当時とでは雲泥の差で重くのしかかってきて、また途中で読書を諦めざるを得なくなった、という体たらく。
井上くんと角ヶ谷くんの確執は、本当はここで終わる話ではなかったのでは、と読む側に思わせるほど尺が足りなかった…作者さんのあれやこれやが原因ではなく、多分「大人の事情」で…と思いたい自分がいるくらい、そこもこの物語のテーマの1つだろうと考えてしまうエピソードでした。
3年になった角ヶ谷くんと、マネージャーを経て、再び角ヶ谷くんと一緒にマウンドに立つ井上くんが見たかったです…。
なんとなく、なし崩しに和解した雰囲気だった修二と空の関係も、作者の桃栗みかんさんは、もっともっと描きたいことがあったのだろうと思わせる会話のやり取りが随所に見受けられて、(憶測でしかありませんが)「大人の事情」を恨めしく思ってしまいました…自分の憶測で勝手に悔しがっているのもどうかと思いますが、それくらい、読み手は空の心の動きや、修二がその決断に至るまでの葛藤や苦悩があったはずと思わせる性急さでラストまで持っていかれてしまい、本当はそんな簡単なことではなかったであろう修二と空のこれまでの語られていないけれど「こうじゃないか」とこちらに思わせてくれていたあれやこれやが報われていない気がして、悔しいことこの上なかったです。
でも、その分、短い言葉のひとつひとつに、エピソードとしては盛り込めなかった多くの想いを詰め込んでくれているように見え、作者さんのその手腕に感謝と尊敬しかありません。
任命当初は心許ない印象だったキャプテンがめちゃくちゃ光っている巻でもありました。
修二と空が、自分の事しか見えていないところから、ここまで来たのか…と、気分は母親感覚で読み終えました。
角ヶ谷くんを初めて年齢相応の男の子に見えたのも、感無量でした…最後にお母さんがやっと分かってくれて、本当によかった…。
そして角ヶ谷くんが少しでも野球そのものに楽しさを感じてくれているのが分かって、ほっとしました。
もっともっと、ずっとずっと、彼らが3年になり、丈陽と甲子園の出場権を奪い合うところまで見届けたかったです。
勝っても負けても、鈴木先輩や金子先輩、丈陽の守屋先輩に「おまえら全員、よくやった!」と、修二たちを褒めてもらいたかったです。
ここで完結してしまうのがこんなに惜しい作品はない、と悔しさ半分、でも、修二と空が野球を始めるきっかけになった「楽しい」を取り戻してプレイできる日が訪れたというカタルシスをくださったことに感謝の気持ちが半分、そんな素晴らしい作品でした。
やっとレビューが書ける程度に気持ちが落ち着いたので、また1巻から読み返します。
感動をありがとうございました。
2020/03/08 00:58
修二の成長を感じる巻
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者さんの巻末コメントなどから「ほかのレーベルなどで継続してくれるだろうか」と、別の意味でもハラハラしている作品です。
無事に続刊が出てくれたので嬉しかったです。
今回は、最新巻をざっくり読んだあとで1巻から読み返したのですが、改めて修二の成長の静かさに驚いてしまいました。
1巻では、あんなにも劣等感まみれで周りが見えてなくて逃げてばかりいたのに、この1冊では、総じて自分を俯瞰で分析できる修二の成長が描かれています。
対照的に、1巻では昏い面など知らなそうに見えた空が、修二と同じ普通の子だと感じたり、「クールだなあ」と思っていた角ケ谷くんと、彼にまつわるあれやこれやで、複雑な心模様に痛々しい気持ちになったり。
もっとシンプルに考えてもいいんだよ、と大人目線で思ってしまう一方で、そこを真摯に向き合って悩み苦しむからこそ若人なのだよなあ、と純粋さにまばゆさを覚えたりする内容でもありました。
10巻から今回の巻にかけて、監督も実は普通の葛藤する人なんだな、と好感度が上がりました。
監督が修二のお父さんとどういう関係だったのかも、今後が気になる点の1つです。
リアル書店が次々と閉店していることから、出版業界の厳しさをなんとなく感じているこのごろですが、よい作品の継続を改めてお願いしたいところです。
完結まで読ませてほしい作品です。
2017/11/26 15:38
割り切れない思いに揺れる修二と空にひたすらエールを送りたくなる最新刊
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Nagi - この投稿者のレビュー一覧を見る
空から真実を告げられた修二の相反する2つの想いや、なかなか空に対する気持ちを変えられない葛藤など、相変わらずこの作品では大人でも難しいことを修二に課しているので、読んでいて胸が痛くなります。
でも、空を含めて修二を見守る監督や家族たち、少し修二寄りに見守る角ケ谷くんなど、2人がいつかきっと最高のバッテリーを組めるという読者の期待を消さないまま物語を進めてくれ、やはり6巻もハラハラと手に汗握る展開を楽しませてくれました。
何よりも6巻で嬉しかったのは、修二が初めて空の立場に思いを馳せてくれたこと。
「認められたい」「才能がなかったわけじゃないと誰かに背中を押して欲しい」
大好きだった野球がアイデンティティだった修二は、だからこそ難なく自分を追い抜いていった空に様々な黒い感情を抱き続けてきたのですが、初めて「自分の立ち位置」から下りて考え新たな苦悩に翻弄される姿は、切ないのと同時に彼の成長を感じさせてくれました。
成長しているのは修二だけでなく、空も。
角ケ谷くんは恐らく空にとって、「修二と仲が良い」羨望の対象だと思ってこれまで読んできました。
修二の気持ちを知って壁を作ってしまった空が、初めて角ケ谷くんに「ありがとう」と言って逃げるように走り去っていくシーンでは、「がんばったね」と、おばあちゃん気分で(笑)空の頭を撫でてあげたくなりました。
少しずつ歩み寄りを見せる修二と空ですが、そう簡単に巧くいくはずがない、という物語の流れがやけにリアルで、とどめのように彼らの前に立ちはだかる駒野監督、丈陽高校ナイン…息つく間もなく「ああっ!」というところで続刊を待て、という状態になり、早くも7巻が待ち遠しい気分で読み終わりました。
丈陽の守屋くん、こんなに好戦的な表情も見せるんだな、と、修二は「こんなに大きかったか?」と戦慄してましたが、そんなものではないでしょう、と思うくらいオーラを放っています。
そしてこれはきっと読者にしか見えない部分ですが、修二&空のバッテリーをよく観察しています、試合中にも関わらず…。
個人的には守屋くんが一番好きなキャラなので、彼の何気ない(修二と空の修復に関する)黒子っぷりにも惚れ惚れとさせていただきました。笑
今後の展開も楽しみではあるのですが、丈陽・玄高、どっちが負けても悔しい思いをしてしまいそうで、7巻を読むのが怖いような楽しみなような、そんな6巻でした。