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2件
ドリトライ
著者 雲母坂盾(著者) , 成田龍一(監修協力)
戦争によって身寄りをなくし戦災孤児となった大神青空は、病気の妹を救うためとにかく金が必要だった。ある時、青空は裏社会の格闘技大会で賞金を稼ぐ虎威組の組長からスカウトを受け、拳と拳がぶつかり合う拳闘の世界に殴り込む!!
ドリトライ 2
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ドリトライ 2 (ジャンプコミックス)
2023/12/21 17:29
覆水の流れ
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投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
父は出征して生死不明、母は空襲で死亡し、妹は結核を患い、余命、幾許もない中で、少年はヤクザから拳闘の才能を見出された。
浮浪児が医療費を負担するのは現実的な話ではなく、他に大金を手に入れられる方法が無いので、大神青空はヤクザの親分と盃を交わす事にし、その手下の選手として、デビュー戦に向けた準備を始めた。
しかし、ライセンスの取得は困難だ。
それは、試合の主催者が真っ当な人間ではないからである。
他人を蹴落とす事に良心の呵責を覚えず、金儲けの為であれば、子分の命も見殺しにする、義理も人情も持ち合わせていない親分が牛耳る世界に、青空は足を踏み入れたのだ。
しかし、敗戦直後の混沌とした世情では、誰しもが生き残るのに必死で、堅気と極道の区別など意味を成さず、青空がヤクザにならなければ、妹の命所か、自身の命も、早晩、費えていたに違いない。
戦争は狂気の揺籃だ。
百戦錬磨の拳闘家でも、戦地に赴けば、苦境に耐えかねて、我を忘れる。
復員しても、精神を病み、薬物に溺れて、犯罪に手を染める。
生きていたとしても、青空が憧れた父の姿は、二度と、見られないであろう。
戦時下と戦後の諸相を、日本の歴史に取材して描いた本作は、全二巻で完結する。必然的に、残酷な場面が散見されるものの、荒唐無稽な演出と脚色とにより、娯楽性が担保された少年漫画に仕上げられている。
青空はリングに立つ。
下手をすれば、容易く、殺される、過酷な条件の下、病床にある妹の為に、体を張って、金を稼ぐ。
彼には夢があった。
ドリトライ 1 (ジャンプコミックス)
2023/09/10 23:35
神国のチョコレート
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:求道半 - この投稿者のレビュー一覧を見る
両親が不在の十代の兄妹が、太平洋戦争末期から、終戦を経て、一年間、東京で、生き延びた。
二人の寝床は畳の上ではない。
腹を空かせても、悪事には手を染めずに、糊口を凌ぎ、なんとか食い繋いで来たものの、限界が差し迫っている。
生きて帰ると言い残して、出征した父親はボクシングの王者であった。
その血を継いだ妹の星は、兄の青空よりも、腕っ節が強く、母親から、将来を心配されたものだが、戦後は、立場が逆転して、兄の手を煩わせている。
星は生きる気力を失くしていた。
青空は、粘り強い戦い方で、最終的に勝利を得る父親の姿に憧れており、苦しくても、弱音を吐かずに、逆境に立ち向かう。
理不尽な暴力によって、生命と財産を脅かされる日々の中、二人に手を差し伸べたのは、ヤクザの頭であった。
金が無ければ生きられない。
ヤクザにならなければ生きられない。
青空は、星の為に、ヤクザ者になった。
だが、道を踏み外す積りは、毛頭、無い。
ボクサーとして、戦い、稼ぎを得て、家族を養うのだ。
打たれ強さだけが取柄の非力な少年が、父の口癖を真似て、リングに立つのは、無謀な事であるのかもしれない。
気合は十分であったとしても、負ける時もある。
大人が野垂れ死に、ヤクザでさえ、甘い汁を吸えない、苛烈な環境で、青空と星は、あと何年、生きられるのであろうか。
街中には、二人と境遇の似通った少年少女が溢れている。
大神青空は、何度、殴り飛ばされても、笑みを浮かべて立ち上がる。