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24件
錆のゆめ 右
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錆のゆめ 左 (Canna Comics)
2021/02/17 17:37
幸せすぎたり、切なすぎたり、ともかく泣いた。
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kaya - この投稿者のレビュー一覧を見る
『錆のゆめ』の後日談を描いた左右編。
左が本編の続編、右がしあわせ絵日記の日常編とのこと。
上下編では苦しいだらけだっただけに幸せいっぱいな続編でした!
はじまりは進藤をタオルを持って出迎える聡夫さん。
それからエプロンをしてお弁当の用意をしつつ、
今晩の献立の相談に、行ってきますのチューって!
どっからどうみても新婚さんじゃないですか~♪
相変わらず舌足らずではあるものの語彙も増え、くるくる変わる表情、
おうちでは家事全般を担当し、一人で買い物に行ったり、
近所にお友達がいたり、すっかり穏やかな日常に馴染んでいるようです。
けれど、複雑な社会のルールや難しい言葉はまだまだお勉強中の身。
たまに他人の話を鵜呑みにして突拍子もないことを言いだして、
進藤をびっくりさせたりと微笑ましい場面も♪
だけど、良いことがあれば悪いことだってあるのです。
見た目の割に幼げな聡夫に近所から向けられる偏見の目。
それは聡夫がありのままに生きていく上では避けられないこと。
年をとらない聡夫は一つ所に留まることは出来ないわけだし、
改めて彼がサイボーグであることを思い知らされ、
聡夫が自由に生きていくことの厳しさを感じました。
そして、後半からはさらに聡夫に追い打ちをかける事態が発生します。
正直、この後半は泣きました。
過去の自分や妹のこと、今はもう消されてしまった記憶が聡夫を苦しめます。
記憶はなくても心が覚えていて、思い悩み、
どんどん元気がなくなっていく聡夫が辛かったです…
そんな聡夫に進藤は誤魔化すことなく真実を打ち明け、
質問されればその一つ一つにやさしく答えてやります。
考え込んでいれば黙って傍で見守り、彼が答えを出すのを待ち続け、
どんな答えを出したとしても、自分だけは聡夫の居場所であろうとします。
進藤の聡夫を支えたいという温かい想いと誠実さがとても伝わってきました。
そして、聡夫が出した答えは「妹に会いたい」というものでした。
会いに行った聡夫が目にしたのは記憶とも、写真の中とも違う
今はもう大人で、母親になった妹でした。
また、今の自分ももう彼女の兄だった「聡夫」とは違うのです。
声をかけることもできず、黙って物陰から
成長した妹を見つめる聡夫に涙が止まりませんでした。
ああ、こんなに悲しいことってない。
聡夫には何の罪もないのに…
進藤の前でポロポロと涙を流す聡夫。
けれど、それは悲しみからではなく、妹の幸せを喜ぶ嬉し涙でした。
覚えていない筈なのに、自分は妹のために全てを失ったのに、
心の底から聡夫がいとおしくて、切なくて…ただ泣けてしまう。
その帰り道、進藤にたくさんの「あいがと」を伝える聡夫さんが
健気で可愛らしくて、抱きしめたい衝動に駆られました。
でも、それと同時にこの子は無垢で何もわかっていないようで
全部わかっていたんだな、と胸がぎゅっと苦しくなりました。
人の感情をくみ取れるようになり、周囲が自分に向ける悪感情も、
進藤がそれらから自分を守ってくれていることもわかっていたんですね。
でも、その上で自分が進藤を幸せにする!と言う聡夫さんに
成長を感じ、とても心強く思えました。
それに応じる「類いない存在だと思ってる」という
進藤なりの独特な愛の告白も素敵でした。
書き下ろしでは聡夫さんの呼び方が
「しんどお」から「たかのいさん」になっていました!
白いシーツをかぶった聡夫さんに進藤が口づける場面が
まるで結婚式のようで、尊さに打ち震えました。
どうか、どんな形でも二人がずっと一緒にいられますように…
錆のゆめ 右 (Canna Comics)
2021/02/17 17:42
毎日が特別でいとおしい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kaya - この投稿者のレビュー一覧を見る
左編後の読了です。
こちらは左のように一つ一つのお話は連続せず、聡夫さんの
絵日記から切り取った二人の日常を垣間見るというイメージです。
こちらで聡夫さんが贈ったマフラーを左編でも進藤が使っていたり、
こちらで始めた名前呼びを左編の描き下ろしでしていたり、内容は
リンクしています。
描かれるのはお誕生日やクリスマスにお正月、仕事帰りの
待ち合わせデートと、特別な1日だったり、何気ない平日だったり。
でも、二人にとってはその一日一日、全部が特別なんです♪
そんな日々を拙いながらも、丁寧に綴る聡夫さんの絵日記は
進藤にとっても宝物なんだろうな。
もちろん、聡夫さん自身も宝物。
だって、どのお話でも聡夫さんの可愛さは爆発的なんです。
内緒でクリスマスプレゼントを用意してくれたり、寝る間も惜しんで
誕生日パーティーの準備に勤しんだり、ただの待ち合わせデートでも
すごくはしゃいでくれたり、もう健気すぎて愛で回してしまいたい…!
記念日には過去に二人で出かけた場所や初めて二人で挑戦したことを
振り返ったり、二人の思い出を大事にするところもとても素敵です。
それにね、聡夫さんはいつも「好き」や「しあわせ」という気持ちを
素直に口に出してくれて、そういうのって相手からすると、ちゃんと
自分の愛が伝わってるなって実感できて嬉しいと思うんです。
進藤は特に無愛想だし。
んで、そんな聡夫さんだからこそ、進藤も絆され&デレちゃうわけですが、
流石にうさぎのカチューシャつけてくれたり、あーんまでしたときは
びっくりしました(笑)
聡夫さんのためなら本当に何でもしてくれるんだね…!
ウサ耳進藤…聡夫さんの見た“夢”が遂に叶った瞬間でした!
イチャイチャ度は左編よりもこちらの方が高めです。
特に左編での妹の件以降はさらにイチャ甘な二人。
ナチュラルに進藤のお膝の上に乗っちゃう聡夫さんも危険な可愛さでした♪
もうおねだりなしでも、見つめ合えば自然とキスをするようになっている
二人にもキュンキュンしっぱなしでした。
それだけの時と愛を二人で積み重ねてきたってことなんだなぁ…
カバー下には聡夫さんの絵日記&しんどおプロフィールが!
そして、その横には進藤が描いたと思わしきイラストが…
前から薄々気づいていたけれど、進藤って結構画伯ですよね(笑)
錆のゆめ 下 (Canna Comics)
2021/02/17 17:12
幸せがこわい
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kaya - この投稿者のレビュー一覧を見る
上巻からー
どうか聡夫が救われて欲しいと願いつつ、
救われる道なんてあるのかと怖れながら読んでいたので
この下巻で迎えた結末が嬉しくて仕方なかったです。
進藤との出会いを経て、少しずつ“心”を取り戻してゆくサイボーグの聡夫。
たどたどしくも言葉や表情も豊かになり、名前を呼ばれて照れたり、
恥じらいながら「いっしょにいたい」と告げる姿は恋する少年そのもの。
人の体をもちながら人の心を持たない残酷な人々と
身体は人でなくても、その中にある心は人と変わらない聡夫。
人と物を分かつものは何なのだろうと考えてしまいました。
だって、聡夫はこんなにも人間なのに…
そして、聡夫と同じ時を過ごし、その成長を見守っていた進藤も
絆されることで変わり始め、自然な笑顔や聡夫に触れる手、
どこか無機質だった男に体温が宿ってゆきます。
そんな進藤の中に聡夫への“独占欲“を見た同僚は
進藤のことを「気持ち悪い」と切り捨てます。
確かに聡夫を人ではなく“物”として認識する彼らからすればそうなのかも。
聡夫の中に残る人の心を見つけ、彼を救いたいと願う進藤とは
互いにわかりあえる筈がありません。
少なくとも聡夫はそんな進藤によって救われていたのです。
今後の話が出たときにも進藤は聡夫の意思を尊重しようとします。
けれど、「どうしたい?」と問われても、聡夫には決めることができません。
ただ、進藤と「ずっといっしょにいたい」という願望だけは明確で、
それだけは最初からずっと聡夫の中でも揺らぐことのない願いなのでした。
そして、研究所の中では聡夫の未来はないと知った進藤は
葛藤の末に自分が聡夫を引き取ることを決意します。
誰が何を言おうと、聡夫と生きていくことを決めた進藤が男前でした。
進藤に連れ出された初めての外の世界は見るもの、触れるもの
全てが珍しく、目を爛々と輝かせた聡夫がただただ嬉しそうで、
良かったねという思いでいっぱいでした。
そこからの進藤と聡夫、二人だけの生活は幸せの極致でした。
まだまだ外の世界に不慣れながらも、進藤に一生懸命尽くす聡夫の新妻感!
お見送りから、お料理にお風呂の準備、就寝前のイチャイチャタイムに
休みの日にはデート…その新婚さんっぷりに以前聡夫が見た夢の世界を
思い出してしまいました。
ただ、体を寄せ合って、手を繋ぎ、キスをするようになった二人は
恋人同士のようでありながら、どこかぎこちなさを残していました。
それ以上を受け容れられない進藤と、それ以上も求めたい聡夫。
人間らしさが育っても尚、セクサロイドとして植え付けられた
性欲が消えることのない聡夫に複雑な思いに駆られました。
進藤も研究所での記憶がまだ鮮明なだけに心の整理がつかないのだろうな…
でも、その分、進藤が言葉できちんと伝えてくれるところが良かったです。
相変わらず言葉少なで愛想の欠片もないけれど、
聡夫への想いだけはいつでもまっすぐ口にしてくれる進藤。
そんな進藤の言葉に触れる度、びっくりしながら、
とろけるくらい嬉しそうに、はにかむ聡夫が可愛らしかったです。
最後は進藤に寄り添う聡夫の口から出た「しあわせ」に涙ぐんでしまいました。
読みながら常に感じていたのは幸せで嬉しいのに、
それがこわくもあるという矛盾する感覚でした。
聡夫を愛したことで失われた進藤の未来、二人の生きる時間の長さの違いなど、
人間とサイボーグという恋には儚げな感情が付き纏います。
でも、それでも、二人がこの先も共に生きていけますように、と
祈るような思いで読み終えました。