kayaさんのレビュー一覧
投稿者:kaya

ヒーリングパラドックス (BAMBOO COMICS)
2021/03/25 01:12
これはいい執着攻め
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
びっくりです!
何が驚きって本書が初コミックスなんですね!?
絵も綺麗、ストーリーも程よく深く作り込まれ、
エロもどろっと濃厚で、この完成度よ!!
さらにプラスするなら、攻めの岸辺のキャラがどストライクでした…!
いわゆる執着攻めというやつなのですが、
子供の頃に恋をした受けの黒岩を落とすために、
なんと“20年”という驚くべき歳月を費やしているのです!
その執念たるや…愛が重すぎて怖いっ(笑)
外堀をじわじわと埋めて黒岩が自分を求めるように仕向け、
攻め落としてゆく岸辺の目は獲物を狙う肉食獣の目そのもの!
いつもはキラキラ爽やか系なだけに、黒岩に向けられる雄みを
孕んだその表情にぞくっとしてしまいます。
粘着質でストーカー、変態、と一歩間違えれば、ただの気持ち悪い人に
なりそうですが、黒岩への想いとその一途さだけは純度100%でした。
幼い頃、孤独だった岸辺を救ってくれた黒岩との約束を守るため、
直向きに、人の何倍も重ねてきた努力は本物でそれを貫き通してきた
岸辺は純粋に格好いいと思えました。
外見は男前だし、何でも器用にこなすし、悪だくみする顔すら色っぽく、
受けのことも溺愛し、やっぱり変態込みでもイケメン攻めなんですよね。
そのせいか、心情も岸辺寄りになってしまい、
ついつい岸辺の心の声の「落ちろ!」に気持ちがリンクしていました。
対して、そんな執着男に愛されてしまった不憫な男・黒岩。
最初は同僚の紹介で岸辺の整骨院を訪れたものの、
岸辺から与えられる快楽(マッサージ的な意味で)に
身も心もとろかされ、岸辺の虜になってゆきます。
しかも、だんだん岸辺の手つきがいやらしさまで帯びてきて、
未知のエロの扉まで開かれてしまい…
パっと見、がっしり筋肉質で男らしい肉体の黒岩ですが、
岸辺の超絶テクにかかると、とろけてしまう表情と
その鍛え上げられた肉体美のギャップがかなりえっちでした。
基本、快楽に弱く流されがちで、岸辺の態度に違和感を抱きながらも
「頑張ってるね」と優しく頭撫でられたくらいでときめいてしまうチョロ属性の黒岩。
だけど、一線を越えてしまえば、きちんと自分の気持ちを認められる
潔さもあり、受けとしての可愛さもありつつ、メンタルは男前でした。
これからはその懐の深さで岸辺の20年分の愛を受け止めてくれますように♪

囀る鳥は羽ばたかない 7 (H&C Comics)
2021/03/18 23:36
やっと再会できたのに…!
11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
前巻の抗争終結から四年後。
矢代は組の解散後、ヤクザを辞めて闇カジノの金主となり、
百目鬼は三和会系桜一家の組長・綱川の下でヤクザになっています。
真誠会の解体後、矢代に捨てられ、それでも同じ世界で
生きていきたいと百目鬼が頼ったのは三角でした。
けれど、何度頼み込んでもその願いが聞き入れられることはありませんでした。
そんな愚直で諦めの悪い百目鬼を見かね、動いたのは意外にも天羽でした。
旧知の仲である綱川に百目鬼を預かるよう口利きをしてくれたのです。
そして、その後桜一家での四年間で立派な極道に成長を遂げた百目鬼。
寡黙さは変わらずですが、顔の傷の迫力もあって、凄みが増しています。
綱川からも働きぶりを認められる一方、小学生の娘も百目鬼に
特別に懐いていて、この二人の関係はちょっとした癒しでした♪
元警察官なのだから己の信義に反することもあったろうに、
自分を捻じ曲げて極道の道を歩んできたんだろうな…
少しでも矢代と繋がっていたいがために四年も耐えてきたのか
と思うと、その重すぎる愛に胸が締め付けられます。
けれど、ある事件で同一の男を追うことになり、
図らずも一度は違った矢代と百目鬼の道は再び交わり始めます。
そして、捜索の過程で遂に二人は四年越しの再会を果たします。
この時の二人の表情ったらもう…無表情なのに不思議とその内にある
驚きや喜び、失望と、複雑に混ざり合った感情が目に見えるようです。
嬉しくて堪らないはずなのに、二人の表情が痛々しくて辛い…。
わざとらしく距離を置く二人にもう昔とは違うんだと思い知らされます。
百目鬼を前にするとツンデレを発動して「忘れてた」と言い出す矢代。
冷静ぶっているけれど、内心の動揺がありありと伝わってきます。
そっけなく振舞ってはいても夢にも出てきたり、
矢代が百目鬼を忘れられるはずがないんですよね。
百目鬼が矢代のことを敢えて「頭」と呼ぶのも、知らないふりをされて、
二人の過去をなかったことにされるのが嫌だったのかなって。
一緒に過ごした時間や二人の間に一時でも通った想いを
思い出して欲しかったのかなと思えて切なかったです…。
再会後、百目鬼が一瞬昔の百目鬼の表情に戻っているのも泣けてしまった。
作中では矢代と井波の関係が続いていると思える描写もありますが、
個人的には百目鬼と結ばれて以降、誰とも身体の関係はないのでは
と淡い希望を抱いていました。
けれど、百目鬼に「今も変わらず誰とでもするんですね」と
言われたときの矢代の反応でそれは確信(願望込み)へと変わりました。
だって、このときの矢代、傷ついたような顔をしていませんか?
けれど、その言葉を否定もせず
「たかが四年でどうして変わってると思ったんだ?」と返す矢代。
対する百目鬼の「そうですね、そう簡単に変われるわけがない」というのは
何があろうと変わらない自分の矢代への想いのこと、だと思うんですよね。
でも、そんな一途な想いも矢代にはうまく伝わらず。
言葉が足りないのか、すれ違ってしまう二人。
伝えたい想いは溢れる程あるのだろうに、相手から
顔を背けるように意地を張り合う二人が焦れったい…
最後は百目鬼の衝撃発言で次巻へ続きます!

オールドファッションカップケーキwithカプチーノ (H&C Comics)
2021/05/31 23:19
恋に溺れて、その後
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
前作で晴れて恋人同士になり、
可愛い恋人のために朝からせっせと手作り弁当に勤しむ野末と
念願の想い人との両想いに嬉しくて朝からベタベタしちゃう外川。
初っ端から新婚感漂う甘さで、幸せ絶頂の二人にニヤニヤが止まりません。
けれど、ある日、同僚から外川が野末のネクタイをしていることを
指摘されると、野末は必要以上に周囲の目を気にするようになり…
それまでの浮かれ気分も一気に吹き飛び、夢から醒めたかのように
自分たちの関係を現実的に直視しだします。
「恋に溺れる気持ちの悪いおじさんだ」と自分を戒めつつも、
外川を目の前にするとやっぱり溺れてしまい、溢れる恋心を
セーブするため、遂には外川と距離を取り始めてしまいます。
嫌いになったわけでもないし、別れたいわけでもない。
だけど、いい年をした大人だからこそ、失うものも多く、
外川との関係が知れれば…と怖がらずにはいられない。
一方の外川は何があっても野末への想いは揺らぐことなく、
そのまっすぐさゆえに離れたいと言う野末の考えが受け入れられません。
大切だから離れた方がいいと考える野末と大切だから近くにいたい外川。
互いを想う気持ちは同じはずなのに、「これから」の考え方の違いから
二人はすれ違ってしまいます。
そこから救い上げてくれたのは野末の同期の柿谷と桐嶋でした。
野末と外川の関係を拒絶するでもなく、
だからといって安易な言葉で慰めることもせず、
ただ、野末の告白に真摯に向き合い、
幸せを願ってくれるところに彼らの厚い友情が感じられました。
その後、桐島のフォローでやっと仲直りの糸口を掴み、
溜め込んだ心の内を吐き出す野末と外川でしたが、
会えない間に外川はある決意をしていました。
今回は野末がうだうだ悩みっぱなしなだけに、外川の包容力が
一段と頼もしく見えます。
そして、野末のメンタルが復活すると途端に甘えたになるところも
いい意味であざとくて、たまりません。
仲直り後には温泉旅行へ。
そこで初めて他人から外川の恋人扱いをされ、
動揺してしまう野末が可愛らしかったです。
旅先で弱みも不安もまっさらな愛情も曝け出し、
外川の揺るぎない想い気持ちを知った野末は
これから先、誰に何を言われようと外川を信じ、
共に生きていくことを心に決めます。
そして、ようやく心の繋がった二人が初めて
誰の目も気にせず抱き合う場面にじんときました。
後日、二人は一緒に暮らし始めていました。
「外川」から「実くん」呼びになっていて、
ぷりぷり怒りながらも甲斐甲斐しく恋人の世話を焼く野末。
そして、朝のドタバタに紛れながらのさり気ないプロポーズ。
ラストは手の描写だけだけど、脳裏には指輪を嵌めた外川の
下がり眉の笑顔と野末のいつものふふっという表情が浮かびました。

探偵事務所の飼い主さま (Canna Comics)
2021/10/31 23:50
1話ごとにペットが増えてゆく探偵事務所
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
陳腐な感想になってしまいますが、面白かったです!
noji先生というと温かくて優しい作風のイメージでしたが、
今作はこれまでの作品よりもいくぶんコミカル色が強めで
新たな一面が垣間見えた1冊でした。
今作の舞台は探偵事務所で、登場人物は所長の佐孤と助手の狼。
決して繁盛はしておらず、舞い込む依頼も探偵!といういかにも感はなく、
ペット探しから失踪者の捜索、浮気調査に対象者の尾行、とショボめ。
だけど、それでも毎度何かしらの事件は起きてしまうわけで、
ストーカー、拉致誘拐と物騒な事件に巻き込まれることも。
うんうん、これぞ探偵ものの定番♪
そんな賑やかでときにスリル満点?な日々がユーモアたっぷりに描かれています。
ちょっぴりええ話だったり、ホラーだったり、サスペンスだったり、
毎話テイストの違うストーリーも楽しいのですが、本作の一番の魅力は
何といっても佐孤と狼のキャラクターと関係性なんです。
まずは探偵事務所の「飼い主さま」こと、佐孤。
黒髪ツンデレ美人だけど、フリーダムすぎてちょっと変わり者臭漂い、
依頼人の事情にはあまり深入りしないドライなタイプ。
だけど、落ちているものを拾ってしまう悪癖もちで
助手である狼もそんな佐孤に拾われた一人だったのです。
そして、そんな佐孤に拾われた飼い犬もとい助手の狼は
一言でまとめると、ピンク頭の強面大型ワンコ。
物騒な見た目とは裏腹に情に厚いタイプで、飼い主である佐孤が大好き。
日々ぐいぐいとアプローチはしているものの相手にされず。
ちょっぴり強引だけど、ダメと言われれば
ちゃんと待ての出来るお利口ワンコです。
あと、狼には異様に動物に好かれる体質という設定があり、
依頼を受ける度に猫、オウム、金魚と事務所のペットが増えてゆき、
次は何の動物がくるんだろうと毎度楽しみでした。
仕事中は頼もしい相棒だけど、プライベートでは恋人未満な二人。
そのくせ佐孤は狼を甘やかすし、狼も佐孤以外眼中にないし、
なんだかんだ甘々がだだ漏れな二人の関係性が好きすぎました。
描き下ろしでは晴れて恋人同士になった二人のお話が描かれています。
いつもは所かまわず迫ってくる狼にツレなくされ、寂しさのあまり
「愛してる」と求愛までしてしまう佐孤がチョロすぎて可愛かったです。
直接的なエロはありませんが、バカップルと化した二人に
表情筋を緩めずにはいられない最高のアフターストーリーでした。
途中、狼の不憫な生い立ちなどシリアスな要素もありましたが、
深刻すぎず、あくまでベースはコミカルで読み心地が良かったです。
決して派手な展開はないけれど、読めば読むほどに愛着がわき、
じわじわとくる面白さがありました。
先行レビューにもありましたが、ぜひ続編が読みたいです!

いびつなボクらのカタチ 上 (Chara COMICS)
2021/06/30 22:12
葛藤にまみれたボクらは
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
7年連れ添った恋人から別れの言葉もないままに
家を去られ、自暴自棄に陥っていたピアノ講師の佑真。
そんなとき、一人暮らしの母が怪我をしたと連絡が入り、実家に帰ると
そこには見知らぬ男となぜかピアノ教室の教え子の舞花がいました。
佑真の勘違いからあわや大騒ぎになりかけはしたものの、
不審者に間違われた男・伊吹は実は舞花の父親であることが判明します。
そして、偶然にも親子は佑真の母・香澄とも付き合いがあるらしく、
その騒動をきっかけに佑真と伊吹・舞花親子との交流が始まります。
メインカップルである佑真と伊吹については
第一印象はなんだか陰のある二人だなぁ…でした。
初っ端からの大失恋に打ちのめされ、ゲイという
自分の性癖に少なからず後ろめたさを抱えている佑真。
表面上は明るいもののその内には娘との関係に悩みを抱え、
おそらくこちらもゲイで、過去に秘密を抱えていそうな伊吹。
そんな重苦しいものを抱えて生きる二人を
さりげなく支えてくれるのが香澄と舞花の存在です。
息子として、同性愛者であるがゆえに母に孫を抱かせてあげられない罪悪感、
父親として、同性愛者であることをいつか娘に知られてしまうことへの怯え、
それぞれが母と娘に対する葛藤を抱え、彼らに枷を掛ける存在ではあるものの、
女性陣たちの方はあっけらかんとしたものです。
男性陣がどうあろうと、目の前の出来事をありのまま受け容れ、
頼りない息子を見守る逞しい母として、寂しがりの父を心配する
おませな娘として、ただまっすぐに愛情を注いでくれる存在です。
彼女たちがいなければ男二人の未来はひたすら暗い方向へ
進んでいたのでは…とその存在が一服の清涼剤のようにも
感じられます。
そんな香澄と舞花と、そして、伊吹と一緒に過ごす時間に
いつの間にか、家族のような、心地よい温もりを感じてしまっていた佑真。
人懐こい笑顔やその内側に隠されている危うげな脆さ、
顔を合わせる度に違う顔を見せる伊吹に、彼が舞花の父親であり、
自分に特別な感情を抱くはずがないと思いながらも惹かれてしまい、
恋心は止められず…
世間体と本当の気持ちの間で揺れ、
ままならなぬ伊吹と佑真の関係に切なさが募ります。
佑真から拒まれ倒れてしまった伊吹、舞花の口から明かされる真実、
先が気になる展開を迎え、下巻へ!

安全でない僕たちは (EYES COMICS)
2021/05/30 02:14
王道に見せかけて、ただの王道にあらず!
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
王道だけど、王道じゃなかった!
オメガバースで、Ωとαの幼馴染で、片思いでって、
よくありがちな設定ですが、想像の範疇外をいくんです。
なので、二人の恋もすんなりとはいかないし、
間違ったり、痛かったりするけれど、それでも逃げず、
二人の形を作ってゆく彼らが眩しくて、力強く見えました。
Ωの梶野基己は成績優秀で生徒会長を務める男子高校生。
子どもの頃の出来事が原因でα嫌いになり、
「Ωはαに劣る」という価値観が蔓延る世界で
自らの第二性に抗いながら生き続けていました。
幼馴染の辻田豪はαでしたが、基己にとって彼だけは“特別”な存在でした。
というのも、基己は豪のことを“発情しないα”と思い込んでいたから。
幼い頃に自分を救い、自分をΩとして見ることなく、
ずっと一緒にいてくれた豪を基己は唯一の親友と信じていました。
けれど、基己の“特別”を失うことを焦った豪の行動によって
基己は裏切られたと誤解し、二人の信頼関係にひびが入ります。
蓋を開けてみれば、豪も思春期に第二性が発現すると
他のαと変わらず、基己のフェロモンに反応していました。
ただ、基己の傍にいられなくなることを恐れ、
必死に本能を抑えていただけで、二人の関係は
豪の懸命な忍耐によって成り立っていたものでした。
そんな親友の思いを知らないまま、本当の豪を見ようとせず、
自分にとっての理想の親友像を押し付けてきた基己。
豪のしたことはそれがたとえ愛情からの行為だとしても
裏切りに違いなく、許されることではありません。
だけどそれと同じくらい基己の鈍感さも残酷に思えました。
ましてや豪の孤独な過去を知ってしまうと…
彼だけが責められるのも違う気がしました。
自らの本能を厭うΩと自らの本能から目を背けるα。
第二性を受け入れられない苦しみを抱えた似た者同士なのに、
ずっと隣にいながらすれ違ってしまう二人が切なかったです。
でも、仲直りの場面はすごく好きでした。
ようやく正面から向き合い、互いに本当の気持ちを知り、
また繋がる二人にこれまでの時間で紡いできた強い絆を感じました。
大きな図体でごめん、と謝り合う姿も幼げで微笑ましかったです。
その後、遅ればせながら豪を意識しまくってしまう基己が不器用で可愛い…!
普段は強気なのに恋愛になるとヘタれ、真っ赤になりながら、
唇を押し付けるだけみたいなキスも慣れない感じがいじらしく、
キュンキュンが止まりませんでした///
最後、大学生になった二人は同棲しています。
基己の横で「一緒にいようよ」と微笑む豪の表情がとても柔らかくなっていて、
なんかもうほんと…よかった、良すぎて泣けてきそうでした。
あの無表情だった豪とは思えません。
基己のことになると泣いたり、赤くなったり、笑ったり、
ぐるぐる表情が変わって、好きがダダ漏れな豪がいとおしすぎました…

神様なんか信じない僕らのエデン 下 (ビーボーイコミックスデラックス)
2021/03/19 00:37
新たな世界の、始まりの二人
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
αもΩも、まだ誰もその存在を知らない世界で
人類初のαとΩ、いわばアダムとイヴとして覚醒した少年たち。
オメガバース設定のある作品の最初の数ページで説明されてきた
人類の第二の性への進化の過程がまさにこれなんですね。
オメガバースの世界はこうして始まったんですねぇ…
ある日、突発的に始まった西央の発情とフェロモンに引き寄せられた喬。
その現象の意味もわからないまま、二人は
体育倉庫でこっそり身体を重ね続けていました。
3日が経過し、ようやく西央のヒートが落ち着き始めた頃、
身体の変調に遅れ、今度は喬の心に変化が起き始めます。
それはヒートが終われば、また以前の日常に戻り、
西央が自分から遠のいてしまうことへの焦りでした。
周囲への支配欲求や西央への独占欲が高まり、
自分の中で“α”が目覚めていく感覚に戸惑う喬。
そして、西央に彼女がいることを知ると、
嫉妬から西央を乱暴に抱いてしまいます。
守りたいのに、笑っていて欲しいのに…
雄の部分が表出し、己の過激さや傲慢さ、暴走するαの本能と
芽生え始めた恋心の狭間での葛藤が息苦しいです。
それでも、自分の気持ちを冷静に見つめ、これから西央と
どう向き合っていきたいか、ちゃんと結論を導き出せた喬は
ある意味では全然高校生らしくなく、大人びていて、
一人前に愛を知る男の表情をしていました。
ちょっと格好良かったな…
一方の西央は喬から向けられた激情を嬉しく感じていました。
頭で難しく考えがちな喬とは違い、こちらは心で感じるタイプ。
心に従って純粋に喬を求め、喬からの言葉にも行動にも歓びを感じ、
その全てを受け容れた上で彼の“メス”となることを望んでいました。
喬のいない空間で、寂しそうに残された喬の“気配”に寄り添う
愛おしいような、切ないような表情はまるで恋しているかのようでした。
最初は明るいイケメンくんだったのに、この7日間ですっかり
健気で可愛らしく、色気溢れる男の子に変貌を遂げておりました。
そして、未知の変化を経て、恋と本能に揺れ、迎えた7日目の朝。
二人だけのエデンを出た喬と西央が選んだ答えは―。
ラストが素晴らしすぎて、もうなんか胸がぶわぁっとなってしまった…
「世界でたった1人の俺の異性」てすっごい台詞。本当に高校生?
ともかく新感覚で、ロマンチックで、ものすごい読後感でした。
大体“進化”の一言で済まされがちなオメガバースの世界観を
遺伝子レベルの変異として捉え、人間の身体機能の向上や
オカルティックな能力の発現など、喬の科学的視点を通して
未知の部分が解き明かされていくのが目からウロコで面白かったです。
その“進化”に子孫を残すため以外にも環境への適応力や種の強化などの
意味付けがなされていて、オメガバースの世界がより一層深まりました。
神から“進化”という名の祝福を受けた反面、
そこには世界に二人だけという孤立感も背中合わせなわけで。
最後は世界の各地で彼らと同じように、進化の始まりが垣間見えます。
二人が“普通”に堂々と笑って生きていける世界が早くやってきますように。

錆のゆめ 左 (Canna Comics)
2021/02/17 17:37
幸せすぎたり、切なすぎたり、ともかく泣いた。
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『錆のゆめ』の後日談を描いた左右編。
左が本編の続編、右がしあわせ絵日記の日常編とのこと。
上下編では苦しいだらけだっただけに幸せいっぱいな続編でした!
はじまりは進藤をタオルを持って出迎える聡夫さん。
それからエプロンをしてお弁当の用意をしつつ、
今晩の献立の相談に、行ってきますのチューって!
どっからどうみても新婚さんじゃないですか~♪
相変わらず舌足らずではあるものの語彙も増え、くるくる変わる表情、
おうちでは家事全般を担当し、一人で買い物に行ったり、
近所にお友達がいたり、すっかり穏やかな日常に馴染んでいるようです。
けれど、複雑な社会のルールや難しい言葉はまだまだお勉強中の身。
たまに他人の話を鵜呑みにして突拍子もないことを言いだして、
進藤をびっくりさせたりと微笑ましい場面も♪
だけど、良いことがあれば悪いことだってあるのです。
見た目の割に幼げな聡夫に近所から向けられる偏見の目。
それは聡夫がありのままに生きていく上では避けられないこと。
年をとらない聡夫は一つ所に留まることは出来ないわけだし、
改めて彼がサイボーグであることを思い知らされ、
聡夫が自由に生きていくことの厳しさを感じました。
そして、後半からはさらに聡夫に追い打ちをかける事態が発生します。
正直、この後半は泣きました。
過去の自分や妹のこと、今はもう消されてしまった記憶が聡夫を苦しめます。
記憶はなくても心が覚えていて、思い悩み、
どんどん元気がなくなっていく聡夫が辛かったです…
そんな聡夫に進藤は誤魔化すことなく真実を打ち明け、
質問されればその一つ一つにやさしく答えてやります。
考え込んでいれば黙って傍で見守り、彼が答えを出すのを待ち続け、
どんな答えを出したとしても、自分だけは聡夫の居場所であろうとします。
進藤の聡夫を支えたいという温かい想いと誠実さがとても伝わってきました。
そして、聡夫が出した答えは「妹に会いたい」というものでした。
会いに行った聡夫が目にしたのは記憶とも、写真の中とも違う
今はもう大人で、母親になった妹でした。
また、今の自分ももう彼女の兄だった「聡夫」とは違うのです。
声をかけることもできず、黙って物陰から
成長した妹を見つめる聡夫に涙が止まりませんでした。
ああ、こんなに悲しいことってない。
聡夫には何の罪もないのに…
進藤の前でポロポロと涙を流す聡夫。
けれど、それは悲しみからではなく、妹の幸せを喜ぶ嬉し涙でした。
覚えていない筈なのに、自分は妹のために全てを失ったのに、
心の底から聡夫がいとおしくて、切なくて…ただ泣けてしまう。
その帰り道、進藤にたくさんの「あいがと」を伝える聡夫さんが
健気で可愛らしくて、抱きしめたい衝動に駆られました。
でも、それと同時にこの子は無垢で何もわかっていないようで
全部わかっていたんだな、と胸がぎゅっと苦しくなりました。
人の感情をくみ取れるようになり、周囲が自分に向ける悪感情も、
進藤がそれらから自分を守ってくれていることもわかっていたんですね。
でも、その上で自分が進藤を幸せにする!と言う聡夫さんに
成長を感じ、とても心強く思えました。
それに応じる「類いない存在だと思ってる」という
進藤なりの独特な愛の告白も素敵でした。
書き下ろしでは聡夫さんの呼び方が
「しんどお」から「たかのいさん」になっていました!
白いシーツをかぶった聡夫さんに進藤が口づける場面が
まるで結婚式のようで、尊さに打ち震えました。
どうか、どんな形でも二人がずっと一緒にいられますように…
俺が好きなど嗤わせる 下 【コミックス版】【電子限定おまけマンガ付】
2021/01/16 23:32
この結末を待っていました…!
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
家で一緒に過ごして、ベッドを共にして、二人で食事に出かけ、
なんとなく距離が縮んだような、というか、もはや恋人同士?と
期待を込めてしまいそうな甘く穏やかな雰囲気の梶と神谷。
まっすぐな梶の愛情や優しさに神谷も心地よさを感じていて、
妹の話をしたり、プライベートな領域まで踏み込むことを許し、
やっと梶の一途な想いに心を開き始めたかと思えば、やはりそう甘くなく、
神谷の理性の部分が梶を拒んでしまいます。
梶の気持ちはとうに決まっているので、あとは神谷の気持ち次第ですが…
神谷ってすごく臆病なんです。
ゲイの自分を受け容れ、性に奔放に振舞ってはいるけれど、
それでもやっぱりコンプレックスはあって、梶が女性といると
そちらに視線が向いて、無自覚に意識してしまっている。
それは嫉妬からなのか、劣等感からなのか。
ノンケの梶と本気で向き合ったとしても、いつの日か、
自分よりも女を選ぶことがあることがあるかもしれない。
女の人と家庭をもてば子供をもつこともできるのに、
自分といればその未来を奪ってしまうことになる。
梶を見つめる眼差しからそんな葛藤が読み取れてしまい、切なかったです。
本当は誰よりも純粋で、とっくに梶が好きになっていて、
ただそれを受け容れるのが怖くて素直になれないだけなのに。
自制して突き放して、それなのに忘れられなくて、悶々としているところに
直球な愛という最強の武器を装備して攻め込んでくる梶。
神谷が短い方が好きだから髪を切ったとか、そんな可愛いこと
言われたらグッときちゃうに決まってるじゃないですか~!
もう忘れようとしていたのに、突然キスされちゃったら
赤面しちゃうに決まってるじゃないですか~!!
このときの繕ってない素の神谷の赤面も可愛いんですが、
神谷に「ありがとう」と微笑まれてうっかりキスしちゃった風な
梶の驚いた表情もすごくよかった…
可愛くて自然と手出ちゃうってどんだけ好きなんだか!
散々悩んだ割に最後の神谷の決断は意外にも力技的でした。
でも、それって頭でわかっていても、梶への気持ちだけは
抑えきれなかったってことですよね?
梶の将来のことやいつかやってくるかもしれない別れとか
神谷がずっと怖れてきた障壁全部ふっ飛ばしてしまうほどに
梶のことが好きで、一緒にいたいって願ってしまったってことですよね!
普段は理性的に見えるけど、実はその内面はとても情熱的で、
きっとこれが神谷の本来の顔なんだろうなって思えました。
一方、念願の恋が叶ったにもかかわらず、告白されたときも
その後の愛の営みのときも相変わらず仏頂面な梶でしたが、
その瞬間の彼の心がどれだけ踊り狂っていたのか心中を覗いてみたかった(笑)
でも、その後の描き下ろしでは自分のために慣れない
ケーキ作りをする神谷の健気さに悶絶し、抱きしめてしまっています。
表情は変わらないけど、
「お前がこんなにかわいいやつだとは知らなかったよ」なんて
既にメロメロな様子にごちそうさまです!
本気で好きになったら尽くしちゃう神谷も最高の恋人でした♪

辻英司は恋をしない (caramelコミックス)
2021/08/31 23:59
朝野智也は諦めない
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
スピンオフだと侮っていたけれど、
よかった…めちゃくちゃよかったです!
なんなら、こちらも続編が欲しいくらい。
本編では当て馬だった辻の素敵な恋を実らせる姿が見られて私も幸せです。
辻も朝野もそれぞれ途中までは切なく不毛な片思いが続きますが、
いっぱい傷ついた分だけその後に待ち構える蜜月が最高すぎました。
それもこれも、半分以上は朝野智也のお陰。
気まぐれから始まったセフレ関係を経て辻に恋をし、
彼が三森に片思いしていると知っても諦めることなく想い続け、
必死の告白をあっさり断られようとめげることなく想い続け、
失恋の傷を引き摺る辻にキツく当られようと、突き放されようと、
最後まで決して諦めるとは言わなかった朝野がいたからこそ。
もう『朝野智也は諦めない』がタイトルでもいいくらいの粘り強さでした。
もう恋をしたくないという辻に対して諦めるではなく、
「恋したくなるまで待ってる」と言うのだからもうすごい根気強さ!
近年稀にみるメンタル強な受けでちょっと感心しちゃいました。
普段はその可愛い見た目からはちょっと意外な生意気さで、
辻に対しても基本強気なんだけど、その反面めちゃくちゃ
健気なところもあって、そのギャップにやられてしまいます。
いつもはお構いなしにぐいぐい猛アプローチかけてくるくせに、
震えながら「遊びでいいからこの関係をやめないでよ」と訴えてきたり、
「三森の代わりでもいい」と涙を流したり、こんなの絆されない方が
どうかしてるって。
一方、そんな強気な年下ワンコにロックオンされてしまった辻は
と言えば、「遊びならいいけど、好きならだめ」とすげない態度で。
だけど、すぐにダメとか言わず試してみろ!と食い下がられ、
ズルズルと関係を続けていくうちに絆されていくことに。
大人の余裕を漂わせ遊び人風な辻ですが、本当は失恋すれば
酔い潰れる程度に一途だし、朝野のことも拒みはするけれど
請われれば抱いてしまうし、泣かれてしまうと心も痛む。
そして、朝野の想いを知ると、実は自分を意識していたり、
自分の言動一つで一喜一憂する健気な一面があったり、
そんな朝野のことを可愛く感じてしまうのでした。
でも、過去の恋や三森とのことで恋愛に臆病になっていて、
朝野に惹かれる気持ちを受け容れることもできず。
年下の男の子に散々かき乱され、でも一歩踏み出す勇気もなくて、
最終的には朝野に全部を委ねてまんまと完敗してしまうのですが、
その年上男の情けなさに不覚にも母性くすぐられちゃいました。
負けてちょっと嬉しそうな表情がね、ざまあみやがれって感じで。
そして、辻は本気の恋に落ちてみれば溺愛の男でした。
今まで振り回してきた分は献身でお返し、とばかりに尽くし、慈しみまくり。
「智に喜んでもらえるなら何だってするよ」とその言葉通りに朝野が望めば
何でもしてくれちゃうデレ甘スパダリおじさんに進化を遂げたのでした。
溺愛攻めが大好きなので、両想い以降が幸せすぎてたまりません///
しかも、これが1冊の半分もあるんだから超贅沢感!
ページをめくる度、辻が朝野を大事にしているのが伝わってきて、
本当に身も心も朝野のものになったんだな~という実感で後半は
終始ニヤけっぱなしでした。

ララの結婚 3 (ビーボーイコミックスデラックス)
2021/06/30 22:07
そして、恋が始まる
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
前巻でウルジの策略を知り、家を飛び出したラムダン。
絶望に打ちひしがれた彼が辿り着いた先は
都・ミンシンの寂れたスラム街にある娼館でした。
そして、そこで偶然にもウルジの兄・バドマと再会します。
その頃、ウルジはラムダンの家出を知るも、第二夫人の
アリアナとの婚儀が目前に迫り、身動きがとれずにいました。
そんなとき、ウルジの元にやってきたのは…ララでした!
ここにきてやっと正真正銘の本人\ララの登場/です。
窓から家の中へ飛び込み、対面するなりウルジを
引っぱたくという先制攻撃を仕掛けるララ(強い)
ラムダンの気の強さといい、血筋でしょうか。
いや、その眼差しが示す意思の強さはラムダン以上かも?
流石のウルジも突然の出来事に唖然としています。
全ての真相を知り、兄を心配して駆けつけたララ。
彼女がものすごい勢いでウルジをまくし立てていると、
そこへ駆け落ち相手のロサンがララを追いかけやってきます。
すると、今度はララとロサンの痴話喧嘩が始まり、
無事夫婦の愛の再確認を経て仲直りするも、続いて
婚儀を控えたウルジを迎えにアリアナがやって来て…
次から次へと、なんだこの地獄絵図(笑)
しかし、そこでウルジはアリアナへはっきりと
婚姻の意志がないことを伝え、婚儀は中止へ。
ララとの対話を通して、自分の愛情がいかに一方的なもので
ラムダンの気持ちを無視していたかを突き付けられたウルジは
ララに心からの謝罪を述べ、ラムダンを必ず連れ帰ることを約束し、
ミンシンへ向かいます。
今回のララの強襲で感じたのは双子の互いへの思いの強さでした。
互いに伴侶に欺かれ、自身も傷ついているはずなのに、二人とも
まずは片割れの元へ駆けつけたという事実に絆の強さを感じました。
二人が無事再会を果たす日が早くやってきますように…
一方、ラムダンは娼館での生活にも慣れ始めていました。
女たちに囲まれる生活の中、ラムダンがふとした瞬間に
思い浮かべてしまうのはウルジのこと。
憎いはずなのに、頭をよぎるのは楽しかった思い出で、
憎しみと愛情が渦巻き、葛藤に苛まれているところへ
現れたのは迎えにやってきたウルジでした。
ウルジから聞かされるララの安全を喜ぶラムダンでしたが、
その後に続く「戻った後はお前の好きにしていい」という言葉に
動揺してしまいます。
解放されて嬉しいはずなのに、ウルジのことは嫌いなはずなのに、
彼の目を見ると、ラムダンの心はどうしようもなく揺れてしまうのでした。
それはウルジへの愛の自覚でした。
1、2巻を経てようやくスタート地点につき、
ラムダンの恋が始まったという感じです。
ここまで長かったなぁ…
まだまだ家や跡継ぎのこと、問題は山積みですが、
次巻では甘く恋に浸るウルジとラムダンを見れたらいいなぁ。

冬知らずの恋 (on BLUE comics)
2021/05/31 23:25
ただの王道だと思うことなかれ
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
幼馴染み同士の男子高校生の恋。
王道といえば王道のストーリーなのかもしれません。
主人公は従弟でお隣に住む幼馴染みの男の子に片思いをしています。
ある日、幼馴染みが寝ているときに気持ちを抑えきれずキスをしてしまい、
その瞬間に幼馴染みが目を覚まし、主人公の気持ちがバレて、
お互いに意識しつつ恋が始まる的な展開です。
多少の障害はあれど、順調に恋を育ててゆく二人の恋愛模様は
王道的ともいえるかもしれませんが、決してお花畑的ハッピーなエンド
というわけでもありません。
例えば、主人公の母はひょんなことから息子の性癖を知ってしまいます。
母はその事実を受け止めきれず、だからといって息子を頭ごなしに
責めるわけでもありません。
また息子は息子で母を悲しませたくないという理由から
好きでもない女の子と付き合ってみたり、と同性愛ならではの
リアルな葛藤なども描かれます。
また、幼馴染みもノンケなので彼女もいるわけで、
そんな二人を見つめる主人公の切なさだとか、
いざ想いが通じたところで男であるが故の引け目を感じていたり、
もうとにかく繊細で…
そんな登場人物たちの心情の揺れが生々しくもあり、
魅力的にも感じた1冊でした。
続編が描かれることがあれば、ぜひ手にとりたいなと思いました。

ひよこと夜と遊園地 (Honey Milk Comics)
2021/06/30 21:23
大好き!俺様!キヨシ様!!
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
『ヒゲと鈴としゃぼん玉』のスピンオフ作品。
今回の主役はあの俺様キヨシ様 デス!!
前作に引き続き、読めば読むほどもっとキヨシ愛が深まってゆきました。
イケメンで、いつだってポジティブで一緒にいれば楽しく、
仕事も、料理だってできてしまう、ミスター・パーフェクト。
欠点と言えば、ナルシストで、うざくて、愛が重すぎるところ。
あと、たまにポジティブが限界突破してしまうところ。
そう、彼は愛すべき残念なスパダリなのでした。
そして、キヨシにちょっと引きつつも温かい目で見守り、
包み込むように愛してくれる常識人な恋人・トウヤ。
今回はそんな二人の甘かったり、時折切なさを挟んだりな日常が
丸ごと堪能できてしまう1冊です。
前作では三太のうざいスパダリ元カレとして登場し、
当て馬風を吹かせ、脇役以上の存在感を放っていたキヨシですが、
今作では彼の意外なギャップを見ることができました。
ギャップその1
【実は恋愛下手】
過去の恋愛がトラウマで、恋愛のこととなるとヘタレで超依存体質なのです。
トウヤに対しても異様な執着を見せ、少し連絡がつかないだけで不安から
家や職場に押し掛けたり、果てはGPSで追跡、とその行動はもはやストーカー!
両想いでなければ、彼はきっと犯罪者になっていたでありましょう…
ただ、違う見方をすれば、恋人に対してはどこまでも一途で優しく、
愛することにも一切手を抜かず、全身全霊で愛情を捧げてくれます。
それをやりすぎた結果が過去の失恋のようですが、個人的には
いつも真摯に向き合ってくれる、そんな誠実さが格好よく感じました。
トウヤ以外でも悩んでいる人がいれば話を聞いて励ましてやり、
相手が誰だろうと優しく、誠実で、裏表なく、そんなキヨシだから
演技がかった物言いも、うざったいリアクションすらも不思議と
いとおしくなってしまうのです。
ギャップその2
【はじまりはトウヤからの告白だった】
これはキヨシのギャップではないんですが、予想外でした。
両想いには違いないけれど、愛の重みは
キヨシ→→→→←←トウヤくらいの比重だと思っていたし、
トウヤのドライデレっぷり的にキヨシからだと思って疑わなかった。
だから、何だかんだトウヤもキヨシのことが大好きと思い知れて、
ニマニマしてしまいました。
途中、キヨシの臆病癖のせいですれ違ったりもしますが、
「死ぬまでふたりで生きたい」とトウヤが男前告白を見せ、
あのキヨシをも赤面させてくれるのでした。
一見なよっとして見えるトウヤですが、彼もまた一途で実直な男でした。
ていうか、これ求婚?プロポーズですよね多分、いや絶対!
2021/04/30 23:52
筋肉女装メイドさんが…かわいい…だと?
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
ん?なんだこれは…
え、可愛い。かわいい…カワイイ…?
え、この感覚あってる?
え、待って待って、私、別に筋肉女装フェチとかじゃないんですよ。
初対面(表紙)ではこれっぽっちも可愛さとか感じなかったはずなのに…
試し読みで読んでみたら、筋肉メイドさんが可愛く見えてきちゃって即買いで…
え、何この不思議現象!!怖い!!
この戸惑い、読んだ人ならきっとわかってくれると思うんです。
お願いだから読んでほしい!
イケメンなフリーター・チヒロはある日、
罰ゲームで女装メイドカフェに行くことに。
覚悟を決めて入店すると、現れたのは案の定、
高身長で筋骨逞しい女装メイドの「まこ」でした。
「かわいくない!」と即チェンジを希望するも、
無垢で健気なまこに不覚にもときめいてしまい…
理想のタイプは清純無垢な黒髪美少女だったはずなのに
気がつくと、あんなに嫌だったまこが可愛く見えて仕方なくなっていて、
一転してアンチからまこ最推しへ変貌を遂げたチヒロでした(笑)
いや、そんな都合のいい展開!と思われるかもしれませんが、
攻めと同じ現象が読み進めるうちに私自身にも起きていました。
胸筋ムキムキだし、顔の作りも特別美人or可愛い系でもなく、
どこからどう見ても男の子が猫耳&メイド服着ているだけなんですが…
あれ?おかしいな…
まこのはにかみ笑顔が可憐に見えるぞ…(つд⊂)ゴシゴシ
しかも、中身も穏やかで貞淑で優しくて…もはや天使では!?
こんなにいい子過ぎるって実は腹黒とか裏があるのでは?と
疑ったりもしたけど、ごめんなさい、本当に根っからのエンジェルでした!
もうほんとなんなの、この可愛らしい生き物は…萌えが止らんわ!!
読み終えた今となっては、自分の好みや意思に反して、
まこ沼にずぶずぶとハマっていったチヒロの気持ちと痛いほどわかる…
どちらかというとリア充寄りだったチヒロがまことの出会いによって
ガチオタに進化していく過程も親近感がわいて面白かったです(笑)
その後、推しからのガチ恋展開も順調に進み…
ともかくお互いのことが好きすぎて、
ピュアなまこと溺愛攻めのチヒロの
甘々バカっプルっぷりに幸せいっぱいでした。
見た目は美少女だけど、中身が男前な店長や
その他常連客たちなど濃いめなキャラたちも魅力的でした。
二人の恋愛に関しても周囲からの偏見もなく、恐ろしい程
嫌な人間が出てこないハッピーな世界観に癒されまくりました。
疲れ切った夜、眠りにつく前に読めば、
絶対にいい夢みれること間違いなしの1冊でした。

STAYGOLD 4 At that time,in that place,it was GOLD (on BLUE comics)
2021/03/29 02:20
号泣するなんて聞いてない。
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
丸ごと1、冊コウと日高編でした。
まさに「俺のすべて」ともいえる10年分の日高の恋心に泣かされました。
この4巻ではこれまで描かれてこなかったコウの視点が加わります。
兄と甥がキスをしようと、家出した姉が3年ぶりに帰還しようと、
飄々としていて、彼女は取っ替え引っ替えで、薄情そうにも見えますが、
日高と過ごす時間には女の子たちにはない心地よさを感じていました。
コウにとっても日高との10年は確かに重みのあるものでした。
日高は女の子たちには敵わないと劣等感を感じていましたが、
次々と去ってゆく女の子たちとずっと隣に居続けた親友とじゃ、
日高の方が大事に決まってるのにね。
一緒にいられるなら友人のままでいい、と思ってきた日高でしたが、
ある日、酒の勢いからコウとキスをしてしまいます。
そのキスで長年抑え込んでいた恋心のタガは外れ、
何度も触れ合ううち、身体まで繋げるようになってゆく二人。
ずっと夢見ていた光景、感触に泣きたくなる程に幸せを噛み締める日高。
無表情な割に心の中は喧しく、コウの言葉一つで花が咲き乱れたり、
爆発したり、心象風景がめちゃくちゃ豊かな日高が面白可愛いかったです。
その後、遠方への就職が決まり、遂に気持ちを伝えた日高。
対するコウの答えは意外なものでした。
それはいつものような軽さではなく、考えに考え抜いた真剣な答えで、
だからこそ、なんで?という思いが頭の中をぐるぐる回っていました。
ただただ、日高の涙が切なかった。
だって、10年。
それだけの恋を喪って、ただ時が過ぎ傷が癒えるのを待つことしかできず、
それまでの間、何度泣いて、何度悲しみをぶり返せばいいんだろう…
それでも「何も知らずに100年生きるより これでよかった」 と
コウと出会い、恋をしたこと、抱き合えたことを良かったと思える
日高が素敵でした。
もうこの言葉で号泣だよ…
ほんと、どこまで純粋で、愛情深いのか。
はじめはモブキャラ程度にしか思ってなかったのに、日高が大好きです。
どうか、幸せになってほしい…
コウが寂しいと感じているうちはまだ可能性はあると思いたい!